話 1
父は七人の優秀な孤児を、私の夫候補として育て上げた。
何年もの間、私の目にはその中の一人、冷たくて孤高の黒崎蓮しか映っていなかった。
彼のその態度は、私が打ち破るべき壁なのだと、そう信じていた。
その信念が砕け散ったのは、昨夜のこと。
庭で、彼が義理の妹であるエヴァ――父が彼の頼みで引き取った、私が実の妹のように可愛がってきた、あの儚げな少女――にキスしているのを見つけてしまったのだ。
だが、本当の恐怖は、書斎で他の六人のスカラーたちの会話を盗み聞きしてしまった時に訪れた。
彼らは私を巡って争ってなどいなかった。
彼らは結託し、「事故」を演出し、私の「愚かで盲目な」献身を嘲笑い、私を蓮から遠ざけようとしていたのだ。
彼らの忠誠心は、彼らの未来をその手に握る私、神宮寺家の令嬢に向けられたものではなかった。
エヴァに向けられていたのだ。
私は勝ち取られるべき女ではなかった。
ただ管理されるべき、愚かなお荷物だった。
共に育ち、我が家に全てを負っているはずの七人の男たちは、カルト教団であり、彼女はその女王だったのだ。
今朝、私は彼らの世界を焼き尽くす決断を下すため、父の書斎へと向かった。
父は微笑み、ようやく蓮を射止めたのかと尋ねてきた。
「いいえ、お父様」
私は毅然とした声で言った。
「私が結婚するのは、狩野湊さんです」
第1章
私の名前は神宮寺怜奈。世界的な物流帝国、神宮寺グループの唯一の後継者だ。
物心ついた頃から、私の世界は父が引き取った七人の青年たちを中心に回っていた。
彼らは「神宮寺スカラー」と呼ばれ、父が後継者候補として育てている、恵まれない環境に生まれた天才たち。
そのうちの一人が、私の夫となる運命だった。
何年もの間、私の心臓はただ一人、黒崎蓮のためだけに鼓動していた。
彼は最も聡明で、最も才能に溢れ、そして最も心を閉ざしていた。
私は青春のすべてを、彼の光にすがる影のように、彼を追いかけることに費やした。
彼のためにクッキーを焼いても、一口も食べてもらえなかった。
授業の後に彼を待っていても、いつも一言も交わさずに通り過ぎていった。
私は自分に言い聞かせた。彼の冷たさは、暗い過去のせいで築かれた壁なのだと。
ただ、ひたすらに努力すれば、いつかその壁を打ち破れると信じていた。
昨夜、その信念は粉々に砕け散った。
眠れずに、月明かりの庭を散歩していた。
その時、古い樫の木の影に隠れる二人を見つけた。
蓮が、彼の義理の妹である小野寺エヴァを木の幹に押し付けていた。
彼は、私が夢にまで見た情熱で、まるで命がけのように、彼女にキスをしていた。
エヴァ。蓮の頼みで我が家が引き取った少女。
誰もが可憐で儚いと見ていた少女。
私が実の妹のように可愛がってきた少女。
その一瞬が、すべてを破壊した。
今朝、私は父の書斎へ向かい、私の人生を大きく変える決断を下した。
「お父様、結婚する相手を決めました」
父、神宮寺会長は書類から顔を上げ、温かい笑みを浮かべた。
「ついに蓮を射止めたか。お前ならやれると信じていたよ、愛しい娘」
私は首を横に振った。声は、固い決意に満ちていた。
「いいえ。私が結婚したいのは、狩野湊さんです」
父の笑みが消えた。
彼はペンを置き、私を見た。その眉間には困惑の皺が刻まれている。
「湊君?シリコンバレーのIT長者のか?怜奈、彼はスカラーではない。一体どういうことだ?」
「彼は私を愛してくれています、お父様。心から」
「スカラーたちは優秀だ。お前と共に育ってきた。一条君は卓越した戦略家だし、赤城君は山をも動かす情熱を持っている。誰を選んでも、お前にとって不足はないパートナーになるはずだ」
苦い味が口の中に広がった。
「不足がない?お父様は、何もご存じないのですね」
一週間前の記憶が蘇る。
書斎の隣の図書室で、お気に入りの本を探していた時だった。
声が聞こえてきた。スカラーたちの声だ。蓮以外の全員がいた。
狡猾な一条拓海が、低い声で話していた。
「新しい戦略が必要だ。怜奈様の蓮への執着は、ますます強くなっている。もう子供じゃないんだ」
短気な赤城健斗が鼻で笑った。
「だから何だ?今まで通り無視し続ければいい。いつか気づくだろ」
「そう単純じゃない」
拓海の声は冷静で、鋭かった。
「会長は結婚を望んでおられる。蓮がダメなら、俺たちの誰かになる。だが、誰もそんなことは望んでいない。俺たちの忠誠は、エヴァに捧げられているんだ」
本棚の陰に隠れながら、私は冷たい恐怖に包まれた。
彼らは、私が蓮の前で愚かで執着心の強い女に見えるよう、小さな「事故」や「誤解」を画策していたと語っていた。
二年前、庭で私が倒れかかってきた彫刻から拓海に「救われた」一件も、彼らの仕業だった。
あの出来事で、私は彼を英雄だとさえ思ったのに。
「あれは上手くいったな、拓海」
健斗が笑いながら言った。
「一ヶ月は、神を見るような目でアンタを見てたぜ」
拓海の声は得意げだった。
「簡単なことさ。少し押してやっただけだ。要は、彼女に蓮以外の誰かへの負い目を感じさせ、事態を複雑にすること。彼女を混乱させることだった」
彼らは笑った。
私を笑っていた。
私の信頼を、愛情を、「愚かで盲目な」献身を。
彼らは私を巡って争ってなどいなかった。
私を避けるために、協力していたのだ。
彼らの小さなグループを、そのまま維持するために。
彼らが唯一、優しさをもって口にしたのは、部外者である狩野湊のことだった。
彼らは、自分たちがお荷物と見なす娘に時間を浪費する湊を、哀れんでいた。
「少なくとも、彼は俺たちの仲間じゃない」
拓海はそう結論づけた。
「彼は、この『家族』の一員じゃないからな」
彼らの最終目標、すべての欺瞞の理由は、エヴァだった。
彼らは彼女を、自分たちが逃れてきた過酷な世界からの生存者仲間だと見なしていた。
彼らは彼女を守ることで団結し、私ではなく彼女こそが、彼らの世界の中心であり続けることを確実にするために動いていたのだ。
記憶が血管を焼き尽くすように駆け巡り、私は拳を握りしめた。爪が手のひらに食い込む。
あまりに純粋な怒りで、全身が氷に包まれたように震えた。
父は、孤児院や崩壊した家庭から、行き場のない七人の優秀な少年たちを見つけ出した。
最高の教育と、贅沢な暮らしと、そして未来を与えた。
父が蓮を選んだ時、少年は一つの条件を出した。
「義理の妹のエヴァも、一緒に引き取ってください」
私は彼のその忠誠心に、ひどく感動したのを覚えている。
まだ十六歳だった私は、世間知らずにも父に懇願した。
「お願い、お父様!彼は妹さんをとても愛しているのよ!二人を一緒にいさせてあげなくちゃ」
こうして、エヴァは神宮寺の屋敷にやってきた。
彼女はお姫様のように扱われた。
スカラーたちは彼女を溺愛し、贈り物を買い、どんな些細なことからでも彼女を守り、常に彼女の味方をした。
私が少しでも嫉妬を見せると、彼らは失望したような目で私を見た。
「怜奈様、彼女は辛い人生を送ってきたんです。もう少し思いやりを持てませんか?」
私は罪悪感に苛まれ、自分が意地悪なのだと信じ込み、身を縮こませた。
今ならわかる。すべてが嘘だった。
彼らはか弱い妹を守る兄たちではなかった。
彼らはカルトで、彼女はその女王だったのだ。
昨夜見た光景が、鋭く痛みを伴って蘇る。
書斎で彼らの会話を聞いた後、私は混乱した頭で庭によろめき出た。
その時、樫の木から囁き声が聞こえた。
そして、あのキスを見た。
細部まで、はっきりと見えた。
蓮の手が彼女の髪に絡みつき、エヴァの腕が彼の首に固く回されていた。
そして、彼女の声が聞こえた。涙に濡れた囁き声だった。
「蓮、もしあの子があなたと結婚しろって言ったらどうするの?あなたを失いたくない」
蓮の返事は冷たかった。さっきまで見ていた情熱は、そこにはなかった。
「あいつが俺の心を手に入れることはない。あいつとの結婚は、父親への恩返しに過ぎない。お前だけが、俺にとって大切な存在だ、エヴァ。昔も、今も、これからも」
話 2
一晩中、天井を見つめながら、蓮の言葉を頭の中で繰り返した。
あいつとの結婚は、恩返しに過ぎない。
彼は私を、支払われるべき請求書のような、ただの取引だと見ていた。
彼の慈善事業の対象になんて、なってたまるものか。
私の家柄と財産があれば、どんな男だって手に入る。
私を軽蔑する男からの、哀れみのような愛情の欠片を乞う必要なんてない。
私は再び父の前に立った。決意は、鋼のように固まっていた。
「本気です、お父様。私は湊さんと結婚します。彼を信頼しています。彼は、今までで唯一、私に正直でいてくれた人です」
「だが、スカラーたちは…」
「スカラーたちは、お父様が彼らの未来を握っているから忠実なのです」
私は鋭く言った。
「私への敬意なんて、ただの演技ですわ」
私は目の奥にちらつく痛みを隠した。
私が無駄にした年月、注ぎ込んできた愛情――すべてが、茶番に思えた。
私は背筋を伸ばした。
「いくつか、お願いがあります」
「何でも言いなさい、愛しい娘」
「彼らの口座を、すべて凍結してください。全員です。そして、小野寺エヴァの小遣いは完全に断ち切ってください。彼女は神宮寺の人間ではありません。私たちのお金を受け取る権利などありません」
父は驚いた様子だったが、ゆっくりと頷いた。
「お前がそう望むなら、そうしよう。お前の結婚式の後、全員屋敷から追い出す」
胸のつかえが取れた。
私は背筋を伸ばし、書斎を出た。
大階段でエヴァと会った。
彼女は繊細な白いドレスを着て、まるで無垢の象徴のようだった。
彼女は駆け寄り、私の腕に自分の腕を絡ませた。
「怜奈さん!ちょうど探してたの!今日、チャリティーのポロの試合があるんだけど、連れて行ってくれない?お願い!」
私は彼女を見た。彼女が浮かべる甘い微笑みを見て、吐き気がした。
これが、私の愛を盗み、私の痛みを笑った少女の顔。
私は彼女の手を、荒々しく振り払った。
彼女の目は驚きに見開かれた。
そして、完璧な芝居で、彼女は小さな悲鳴を上げ、階段の最後の数段を大げさに転げ落ちた。
「エヴァ!」
階段の下から、必死の叫び声が響いた。蓮だった。
見下ろすと、彼らがいた。
七人のスカラーたちが、そこに立って、私を見上げていた。
赤城健斗が私を指さし、顔を怒りで真っ赤にした。
「怜奈様、この性悪女!よくも彼女を突き飛ばせたな!」
一方、エヴァはすでに立ち上がり、目に涙を浮かべて私の弁護に駆け寄った。
「違うの、違うの、怜奈さんのせいじゃない!私が足を滑らせただけ。彼女が私を傷つけるわけないじゃない」
彼女の言葉は、私をさらに罪深く見せるだけだった。
彼女の目は赤く縁取られ、唇は震えていた。
完璧な被害者だった。
スカラーたちは皆、純粋な嫌悪を込めて私を睨みつけた。
蓮は一言も発しなかった。
ただ、冷たく、見下すような一瞥を私に投げかけた後、エヴァをガラス細工のように腕に抱きかかえ、運び去っていった。
私はそこに、一人取り残された。
弁解する機会もなかった。
弁解したいとさえ、思わなかった。
その日の午後、私は気分転換になればと、予定通り馬小屋での乗馬レッスンに向かった。
もちろん、彼女はそこにいた。
エヴァは馬場のそばに立っていた。青白く、儚げな様子で。
蓮が付き添っていた。
「怜奈さん」
エヴァが、柔らかく甘い声で言った。
「今朝はごめんなさい。それと、私と蓮のことは心配しないで。私は自分の立場をわきまえているから。あなたの幸せの邪魔なんて、絶対にしないわ」
蓮は彼女のそばに付きっきりで、まるで彼女が世界で最も貴重なものであるかのように、片時も目を離さなかった。
彼は自ら、彼女のために穏やかな牝馬に鞍をつけ、細心の注意を払って彼女を馬の背に乗せた。
そして、その後一時間、彼は馬を引いて馬場を回り、彼女の手綱を持つ手を辛抱強く導き、彼女にしか聞こえない低い、なだめるような声で囁き続けた。
彼女が疲れたと言うと、彼は馬を馬装台へと導いた。
だが、彼女にそれを使わせる代わりに、彼は片膝をつき、彼女が踏み台にできるよう自分の肩を差し出した。
私は凍りついた。
十三歳の誕生日の記憶が蘇る。
私は馬小屋で最も気性の荒い、誰も乗りこなせない種馬に乗りたがった。
すでに馬術の達人だった蓮だけが、その馬を扱えた。
父は彼に、男は妻にしか膝をつくものではないと教えていた。
だがその日、父は渋る十六歳の蓮を見て言った。
「跪け。彼女に肩を踏ませるんだ。彼女は、お前の未来そのものだ、蓮。彼女が、お前のすべてなのだ」
蓮は跪いた。その顔は、静かな屈辱の仮面で覆われていた。
話 3
父の言葉は、蓮に彼の立場、私への義務を教え込むためのものだった。
私が彼の世界であり、何よりも敬うべき女性であると、そう告げていたのだ。
彼の広い肩に、私の小さなブーツが乗った時の感覚を覚えている。
胸の鼓動が激しくなった。
彼に恋をしていると、初めて気づいた瞬間だった。
私は若すぎて、恋に夢中で、彼の目に燃える屈辱の色に気づかなかった。
あの日以来、私は二度と彼にそれを頼まなかった。
彼のプライドを、尊重しすぎたのだ。
今、私は彼が、別の女性のために、エヴァのために、喜んで、進んで跪くのを見ていた。
彼は、私の目さえも痛むほどの優しさで、彼女を見上げていた。
その光景は、鋭く、耐え難い、物理的な痛みだった。
私は無理やり目をそらした。
私は愛馬、ミッドナイトという名の力強い黒い去勢馬を、ギャロップで蹴り出した。
もっと速く、もっと速くと馬を駆り立てた。
風が顔を鞭打ち、一時的に心の中の嵐を追い払ってくれた。
自由を感じたかった。
私の人生の、息が詰まるような現実から逃げ出したかった。
馬小屋には、高い障害物や急カーブのある、挑戦的なコースがあった。
私はミッドナイトをそこへ導き、彼の限界まで追い込んだ。
高いオクサー障害に近づく。
ミッドナイトは身構え、宙へと跳躍した。
その一瞬、鋭い音が聞こえた。
鞍の腹帯が、切れたのだ。
私は馬から投げ出され、容赦ない地面に激しく叩きつけられた。
焼けるような痛みが脚を貫いた。
乗り手を失い、驚いたミッドナイトは荒々しく暴れ、その力強い蹄が私の頭のすぐそばで危険に踊った。
痛みの霞の中で、私は蓮を探した。
彼はまだエヴァと一緒にいて、私に背を向けて、私の窮状に全く気づいていなかった。
彼はこのレッスンの間、私の専属の保護者であるはずだった。
彼の唯一の公的な義務だった。
彼は失敗した。
彼女を溺愛するのに夢中だったのだ。
「蓮!」
私は、絶望と苦痛に満ちた、かすれた声で叫んだ。
彼はようやく振り返り、その目を驚きに見開いた。
ほとんど人間離れした速さで、彼は私のそばにいた。
彼はミッドナイトの手綱を掴み、低い命令の声で、狂乱した動物を即座に落ち着かせた。
彼は獣の支配者だった。
ストリートで学んだ技術だ。
彼の仕事は、私を安全に保つことだった。
彼はエヴァに集中しすぎて、私を殺しかけたのだ。
次に気づいた時、私は病院のベッドの上で、脚を骨折していた。
蓮は、罪悪感に苛まれているらしく、私の看病を申し出た。
彼は完璧な看護人だった。
注意深く、優しかった。
食事を運び、本を読み聞かせ、私が決して痛みを感じないようにしてくれた。
数日間、私の愚かな部分が、一筋の希望を育むのを許してしまった。
もしかしたら、彼は気にかけてくれているのかもしれない。
もしかしたら、この事故が彼に何かを気づかせたのかもしれない。
だが、エヴァが見舞いに来るたびに彼の目が輝く様子や、私が気づいていないと思って彼らが交わす秘密の微笑みを見ると、その希望は萎んで死んでいった。
脚は回復に向かっていた。
ある夜、トイレに行きたくて目が覚めた。
ギプスが邪魔で、私は私立病院の静かで無菌の廊下を、ゆっくりと足を引きずって歩いた。
その時、ナースステーション近くの小さな窪みから声が聞こえた。
拓海と蓮だった。
「今回はやりすぎだ、蓮」
拓海の声は低い шипение だった。
「彼女の鞍の腹帯を切るなんて。首の骨を折っていたかもしれないんだぞ」
血の気が引いた。
私は壁に身を押し付けた。心臓が耳元で激しく脈打っていた。
蓮の返事は、ぞっとするほど冷静だった。
「馬があんなに驚くとは思わなかった。俺の計算では、軽い転倒で、せいぜい捻挫程度のはずだった。彼女を怖がらせ、もっと依存させるには十分だと。この骨折は…異常値だ」
彼は私の転倒を計算していた。
事故ではなかった。
計画だったのだ。
「それで、これが君の贖罪か?」
拓海が尋ねた。
「献身的な看病人を演じているわけだ」
「最後までやり遂げるさ」
蓮は言った。
「そうすれば、すべて終わる。彼女は元気になるし、俺たちも前に進める」
吐き気がこみ上げてきた。
病院の空調とは無関係の、体の芯から凍てつくような寒気が全身に広がった。
彼は私にこれをしたのだ。
わざと。
私を「怖がらせる」ために。
私を「管理する」ために。
私は唇を強く噛みしめ、血の味を感じたが、痛みはなかった。
心の中の苦痛が、あまりにも大きく、他のすべてを覆い隠してしまった。
これは単なる裏切りではない。
これは、 monstrous だ。