Logo
兄の悔恨、炎に消えた妹
兄の悔恨、炎に消えた妹

兄の悔恨、炎に消えた妹

64 エピソード
完結
実の兄、橘蒼甫に放火魔の濡れ衣を着せられ見捨てられた美桜。炎の中で絶命した彼女は、無念を抱えた魂となり兄の行く末を見届け始める。本作は『兄の悔恨、炎に消えた妹』というタイトルのもと、家族の裏切りと凄惨な死の真相に迫る復讐と絶望のmysteryです。冷酷な言葉を最後に遺した兄への憎悪と、過去の火傷に隠された真実が交錯するhorror要素の強いfiction books。孤独な死を遂げた妹の視点で描かれる、現代を舞台にした重厚なmystery storyを今すぐお楽しみください。
『兄の悔恨、炎に消えた妹』第1話

助けて、お兄ちゃん。

炎が身を焦がす熱さの中で、私は最後の力を振り絞った。両手は後ろで縛られ、口には粘着テープがびったりと貼られていた。声は、意味のある言葉にはならない。しかし、まだ動く指先が、ズボンのポケットの中で、冷たい液晶画面に触れた。

…よし、ロックは解除済みだ。さっき、あいつらが油を撒いている隙に、触れておいて正解だった。

呼吸が苦しい。煙が目に染みる。でも、諦められない。お兄ちゃんに、真実を…!

私は、鼻と顎でポケットの中のスマホをこする。画面が光った。「ヘイ、Siri、兄に電話」 できるだけはっきりと、それでも詰まったような声で命じる。

呼び出し音が鳴り響く。 鼓動が早くなる。どうか、どうか出て…!

『…もしもし?』

聞き慣れた、しかし今は冷たいその声が、耳に飛び込んできた。

「ん…! お、おに…ぐっ…!」 テープの下から漏れる呻き声。焦りで足をバタつかせる音。倒れこむ私の体と、近づく炎の爆ぜる音。すべてが雑音として電話口に伝わる。

『…また、美桜をいじめるための狂言か?』

違う!違うのに!

「っ…! た、すけ…」

『嘘つきの放火魔が。』

その一言が、私の心の炎を消した。全身の力が抜ける。抵抗する意味が、なくなった。

『お前なんか、死ねばいい』

プツッ。

世界が、静かになった。熱で溶けた携帯が手から滑り落ちる音さえ、遠く感じる。

ああ、これが、世界で唯一、私を愛してくれなかった人からの、最後の言葉。

もう、疲れた。

そう思った瞬間、背中の古い火傷の痕が疼いた。幼い頃、お兄ちゃんを庇った時の、あの傷。すべての始まりだった。

英雄と呼ばれた橘蒼甫はその日、実の妹である私を、その「無関心」という名の手で殺した。

そして私は、その一部始終を見届ける、ただの魂になった。

第1章

「助けて、お兄ちゃん」

炎と煙が充満する廃ビルの中で、私は必死に考えた。美桜とその男・周防大輔は、ガソリンを撒き終え、私から少し離れた場所で何やら話している。今しかない。

両手は後ろ手に縛られていたが、指先はかすかに動く。さっき、男が私を縛りながらスマホをポケットに押し込んだ時、画面に触れ、緊急SOSのショートカット(サイドボタンの連打)を起動させておいた。画面はロックが解除された状態だ。

私はうつ伏せに倒れ込み、顔を地面に擦りつけるようにして、ポケットの中のスマホの画面に向かって叫んだ。

「ヘイ、Siri…兄、電話…!」

声はテープで曇り、かすれる。しかし、AIは私の登録済みの連絡先「兄」を認識した。

呼び出し音。 一つ、二つ…。肺が煙で灼ける。早く、早く…!

『…もしもし?』

つながった!

「ん…! おに…! ぐあっ…!」 私は助けを求めるが、それはただのうめき声にしかならない。その時、背後で足音が近づく。

「あら? まだ諦めていないの、お姉さん?」 美桜の甘ったるい声。そして、私のポケットからスマホを引き抜く男の手。

『…また、美桜をいじめるための狂言か?』

電話の向こうで、お兄ちゃんの声が低く響く。彼には、私の必死のうめき声と、背景のガサガサという音(男がスマホを取り上げる音)が、美桜を脅かすための悪戯の雑音に聞こえたのだ。

「違…! うぅ…!」 テープを破ろうとする私の顎の動きが、さらに新しいテープで封じられる。

『嘘つきの放火魔が。』

ザッ! 粘着テープが新たに貼られ、私の口は完全に封じられた。スマホは男の手に握られ、そのまま炎の中へ放り投げられるのが見えた。最後に聞こえたのは、炎の轟音と、彼の絶望的な断罪だった。

『お前なんか、死ねばいい』

プツッ。

私の世界は、炎の色と、絶望の音だけになった。

…こうして、私のSOSは、「迷惑な妹の悪戯」として処理され、私の命は灰へと帰っていった。

数時間後、サイレンの音が響き渡り、消防車と救急車が廃ビルを取り囲んだ。ハイパーレスキュー隊員たちが手際よく現場に入っていく。彼らの動きは迅速で、迷いがない。

彼らが、あの、お兄ちゃんの精鋭部隊。

私は無意識に、お兄ちゃんの姿を探した。あの制服を着て、指示を出す彼の姿を。

そして、見つけた。

遠くからでもわかる、彼の凛とした立ち姿。市民の英雄、橘蒼甫。

彼は、私の遺体を見つけるために、ここにいる。

皮肉なことだ。

隊員たちが私を運び出す。焦げ付いた毛布に包まれた、身元不明の焼死体。

「隊長! 焼死体を発見しました! 女性です!」

隊員の一人が、お兄ちゃんに報告した。お兄ちゃんは一瞬、その遺体に視線を向けたが、すぐに別の場所に指示を出した。彼の目は、まるで感情のない機械のようだった。

彼は、それが妹である私だとは、夢にも思っていない。

私の魂は、軋むような痛みに襲われた。助けてほしかった。ただ、一度でいいから、信じてほしかった。

しかし、もう、何もかもが手遅れだ。

翌日、ニュース速報が流れた。廃ビル火災で身元不明の女性が焼死体で発見されたと。社会は騒然とし、警察と消防庁は合同捜査本部を設置した。

「橘隊長、今回の事件はハイパーレスキュー隊と合同で捜査を進めることになった。特に、遺体の身元特定と火災原因の究明が急務だ」

上司の森永警部が、お兄ちゃんに命令を下した。彼の顔は疲労でやつれていた。

「身元不明の遺体は、まだ特定されていませんか?」

お兄ちゃんは冷静に尋ねた。感情の揺らぎは一切ない。

「ああ。焼損がひどく、身元を特定できる手がかりが少ない。だが、遺体は君の部隊が運び出したものだ。君も捜査に加わってくれれば、何か見つかるかもしれない」

森永警部は、お兄ちゃんに深く頭を下げた。

お兄ちゃんは無言で頷いた。彼の表情は依然として冷酷だった。

私は、お兄ちゃんの隣に浮遊していた。彼が、私の事件を捜査する。私の、死を。私の魂は、彼に対する深い悲しみと、理解しがたい安堵感に包まれた。

お兄ちゃん…ごめんなさい。私が、あなたにこんな苦しい役目を負わせてしまうなんて。

私の体は、彼の指示で警察署の遺体安置室へと運ばれた。白く冷たいシートに覆われた私を、お兄ちゃんはこれから、調べることになる。

この冷たい空間で、私は少し震えた。魂に、寒さを感じるなんて、初めてだった。

お兄ちゃんが遺体安置室のドアを開けて入ってきた。彼の顔には、疲労の色が濃く出ていたが、その目は鋭く、プロの鑑識官としての表情をしていた。

「遺体の状況を詳しく聞かせろ」

彼は、担当の鑑識員に指示した。その声は低く、感情を感じさせない。

「はい、隊長。遺体は女性で、焼損が激しいですが、いくつかの特徴が見られます」

鑑識員は、手元の資料を読み上げた。

「まず、全身の約80%に重度の火傷が確認されます。特に背中と右腕の焼損がひどく、皮膚組織の炭化が進んでいます」

お兄ちゃんの眉間に、わずかに皺が寄った。

「火傷以外に、何か痕跡は?」

「はい。遺体の手首と足首には、索状痕 (さくじょうこん) が残っていました。縛られた跡と見て間違いないでしょう」

鑑識員の言葉に、お兄ちゃんの表情がわずかに引き締まった。私の魂は、恐怖で震えた。

私を縛ったあの縄の跡が、まだ残っているなんて。

「索状痕…つまり、生前に拘束されていた可能性が高いと?」

お兄ちゃんの声が, わずかに低くなった。

「その可能性が非常に高いです。さらに、遺体の口には粘着テープが貼られていた痕跡があり、おそらく叫び声を上げさせないためのものでしょう」

鑑識員は続けた。

「口を塞がれていた…」

お兄ちゃんの表情が、初めて怒りに染まった。

そう、美桜は私に、私の声がお兄ちゃんに届かないように、テープを貼った。

「また、体内からは、大量の睡眠導入剤が検出されました。抵抗できないように、強制的に飲まされたものと思われます」

「くそっ!」

お兄ちゃんは拳を握りしめ、壁を叩いた。彼が、見知らぬ被害者のために、ここまで感情を露わにするなんて。

「生きたまま、拘束され、薬を飲まされ、口を塞がれ、そして焼かれたと?」

お兄ちゃんの声は、怒りで震えていた。

「はい。その可能性が極めて高いです。これは、非常に残忍な事件です」

鑑識員は、言葉を選びながら言った。

「こんなひどいことをする犯人がいるとは…」

鑑識員の補助をしている若い女性が、顔を青くして呟いた。

「必ず捕まえてやる。どんな手を使ってでも、犯人を地獄に叩き落としてやる」

お兄ちゃんの目が、憎悪に燃えていた。その言葉は、私に向けられたものではない。しかし、私の魂には、彼が私を信じてくれなかったことが、深く深く刻み込まれていた。

「隊長。一つ、奇妙な点が…」

鑑識員が、声を潜めて言った。

「何だ?」

「遺体の気道から、煤と共に、小さな金属片が発見されました。高級ライターの一部かと…」

お兄ちゃんの顔色が、一瞬にして変わった。

ライター? まさか…

私の魂は、嫌な予感に襲われた。

「ライターだと? それは…」

お兄ちゃんの声が、震えていた。

「はい。特徴的な模様があり、もしかしたら…」

「それ以上言うな!」

お兄ちゃんは、鑑識員の言葉を遮った。そして、深く息を吐き出した。

「とにかく、徹底的に調べろ。どんな微細な手がかりも見逃すな」

彼の目は、何かを必死に否定しようとしているようだった。

「はい」

鑑識員は、すぐに作業に戻った。

「隊長、何か気になることが?」

隣にいた森永警部が尋ねた。

「いや、何でもない。だが、この遺体には…何かが隠されている気がする」

お兄ちゃんは、私の遺体から目を離さなかった。その視線は、まるで魂を抜き取られたかのような虚ろさだった。

お兄ちゃん、お願い。気づいて。私だよ。

私の魂は、彼のすぐ隣で、必死に叫んだ。しかし、その声は、彼には届かない。

「それよりも、隊長。君の妹さん、陽葵さんのことなんだが…」

森永警部が、お兄ちゃんに話しかけた。

「陽葵? あいつがどうした?」

お兄ちゃんの声には、明確な不快感が混じっていた。私の魂は、またしても冷たい水でも浴びせられたような気持ちになった。

「いや、陽葵さんも救急救命士になったと聞いたが…最近、連絡は取れているのか?」

森永警部は、心配そうに尋ねた。

「あの嘘つきなら、どうでもいい」

お兄ちゃんの言葉は、私を深く深く突き刺した。

続きを読む
話数を選択
CH. 1CH. 2CH. 3
CH. 4
CH. 5
CH. 6
CH. 7
全て
小说の全編を読むならこちら
moboreader
今なら無料で読める!

こちらもおすすめ

美味に溺れて、血に染まる
美味に溺れて、血に染まる
禁断の茶葉を売る茶室の主。その葉を混ぜた料理は食べた者を虜にするが、原料は中毒者の鮮血。高級店の主たちが欲望に溺れる中、血に染まる真実が静かに忍び寄る。人気が高い「fantasy」と「horror」を融合させた本作は、狂気と食を巡る「mystery」としても楽しめる注目の「vampire」ストーリー。最新の「light novel」や「web novels free」を探している読者に贈る、美しくも残酷な復讐と生存の物語。
絡繰人形
絡繰人形
長年悪夢に苛まれてきた青年は、原因を突き止めるため幼少期を過ごした団地へと戻る。しかし、そこには部屋に縛られた霊と、彼を執拗に狙う小柄なピエロが待ち受けていた。『絡繰人形』は、過去の因縁と対峙する戦いを描いたhorror作品。このmystery要素の強い物語をwebnovelで読み進めると、団地に隠された真実が徐々に明かされる。命を懸けた探索の末に、彼は悪夢を断ち切ることができるのか。没入感溢れるfantasy世界と恐怖が交錯する、注目の新作。
愛妻の命を抜く男〜本命のための生贄結婚〜
愛妻の命を抜く男〜本命のための生贄結婚〜
雪山で命を救われたはずの私は、夫の恐ろしい本性を知る。『愛妻の命を抜く男〜本命のための生贄結婚〜』は、愛する女性のために妻を「生きた血液バンク」として利用する夫の狂気を描く現代サスペンス。このmodernかつmysteryな愛憎劇は、単なるromance novelの枠を超え、裏切りと復讐が交錯するhorrorの深淵へと誘います。救出の真の目的は慈悲ではなく、愛人のための臓器と血液の収穫だった。全てを失った妻が選ぶ、命を賭した最後の代償とは。Web Novelで話題の衝撃作、裏切りの物語が今始まる。
俺本当に邪神の猟犬じゃないから!
俺本当に邪神の猟犬じゃないから!
異世界で本屋を営む林介は、親切心から客に本を勧める穏やかな日々を送っていた。しかし、感謝する客たちが広めた噂により、彼はいつの間にか「邪神の猟犬」と畏怖される存在に。勘違いが加速する中で、林介の日常は怪奇と謎が交差するfantasyへと変貌していく。自身の意志とは裏腹に、クトゥルフ神話的な称号を冠せられた男の運命を描くmystery要素満載のadventure。この人気light novelで、奇妙な誤解が織りなす物語を体験しよう。
夫が殺した弟の記憶
夫が殺した弟の記憶
結婚7年目、優歌穂は夫の書斎で弟を死に追いやった冷酷な記録を見つける。本作『夫が殺した弟の記憶』は、最愛の家族を奪った加害者が今の夫だったという衝撃の事実から始まるミステリー要素の強いromance novelです。夫の歪んだ愛情と裏切り、そして昏睡から目覚めた父が明かす一族の醜悪な秘密。孤立無援の絶望の中、復讐と再生を懸けた衝撃の展開が待ち受ける。人気のmystery storyとして、嘘に塗り固められた日常を壊し、真実を追い求める女性の壮絶な物語をぜひお楽しみください。
夜を狩るもの 終末のディストピア[seven deadly sins]
夜を狩るもの 終末のディストピア[seven deadly sins]
雪の街の美術館に飾られた一枚の絵画から誕生した男は、大学生として過ごす傍ら、夜は死神として生きる二重生活を送っていた。過酷な運命の中で大切な恋人と出会い、盲目的な日常は終わりを告げる。本作は「夜を狩るもの 終末のディストピア[seven deadly sins]」という重厚なfantasyの世界観で描かれるadventure。死神としての使命と愛の間で揺れ動く男の選択が、凄惨なhorror的展開と共に加速する。ダークな魅力が詰まったfiction fantasy novelsとして、抗えない運命との戦いを描く。

新作ウェブ小説

MiniShortで大人気

決別の日、婚約者は泣き崩れた
決別の日、婚約者は泣き崩れた
紀黛寧は婚約者を99回も愛を求めたが、彼はやはり自分の義理の妹を思い続けた。苦痛と絶望に暮れた紀黛寧を救ったのは婚約者の兄である傅謹懐だった。結婚生活の三年年間、彼は無限の愛と甘やかしを紀黛寧に与えたが、ある海難事故で亡くなった。悲しみに暮れる紀黛寧は、予期せず妊娠が判明するとともに、海難事故で亡くなったのは傅謹懐ではなく、彼の弟すなわち紀黛寧の元婚約者だったという真実も知った。紀黛寧の義理の妹である紀昭昭と一緒にいるために、彼が嘘をついていた。この裏切りと苦しみにより、紀黛寧は流産してしまった。全てに絶望した彼女は傅家を離れる際、傅謹懐に、流産した子供の死亡通知書を送りつけた。
運命のいたずら?厲社長の甘すぎる愛
運命のいたずら?厲社長の甘すぎる愛
together?5年前、私達は運命的な出会いを果たし、恋に落ちた。しかし、彼の母親の反対により、私達は引き裂かれた。別れて間もなく、妊娠している事を知る。一人で育てる事を決心したものの、子供愛が白血病と診断され、骨髄移植が必要に。途方に暮れる中、子供を救えるのは彼しかいないと景丹に助けを求める。ところが彼の婚約者が次々と邪魔をして苦しめる。果たして子供の命は救えるのか?二人の愛を再び育むことは出来るのか?
死んだふりをしている私に お許しをいただく夫
死んだふりをしている私に お許しをいただく夫
一場の誤解で 主人公伊月琉は姉の死が妻の川名玲と関係あることに気づき, 無理矢理に中絶させた。玲は絶望に陥って、自殺した 三年後に 玲は新しい身分に変わって 戻ってきたが 伊月琉は彼女とよりを戻そうとしていた 彼女は自殺して生き返った、お金持ちの大富豪が再び彼女に惚れてしまった。
誤解の結婚、運命の逆転
誤解の結婚、運命の逆転
薬を盛られ、思わぬ結婚を迎えた男性と女性。翌日、彼の元婚約者は女性に誤解を抱き、激しい辱めを加えようとする。だが、女性の祖母が真実を暴露し、運命は予想外の方向へ。絶対的な劣勢から一転、思わぬ展開が待っていた。
離婚成立:覚醒妻の選択(吹き替え)
離婚成立:覚醒妻の選択(吹き替え)
結婚して七年、夫は裕実に対していつも冷たいままだった。裕実は、いつかは夫の心を溶かせると信じていた。しかし誕生日当日、彼女は遥々と国外にいる夫と娘に会いに行ったその日、夫が自分の誕生日を覚えていなかったばかりか、娘を連れて他の女性の誕生日を祝っている姿を目にする。裕実は、一人で空っぽの部屋に取り残された。誰に対しても冷たく距離を置く夫が、その女性にだけは笑顔を見せていた。そして娘までもが、その女性を“ママ”と呼ぼうとしていた。裕実はついに、この結婚を諦めることを決意した。
声を持たぬ花嫁 ~愛と執着の檻~
声を持たぬ花嫁 ~愛と執着の檻~
生まれつき言葉を持たないエヴァと、彼女を守る少年だったデクラン。祖父の遺言で結ばれた二人の結婚は冷たいものだった。夫の冷酷さと愛人の嫌がらせに耐えながら、エヴァは子供の頃の純粋な愛を忘れられない。言葉なき彼女の選択—彼の心か、それとも自由か。