話 1
「!!、女が一回りも年上のカップルだって!39と51?ありえないわぁ、ここまでいくとなんかもう世も末って感じだな」
ワイドショーを見ていた夫が、大げさな声を出す。
_____世も末? いっとき流行った終末ってこと? 年の差があっても、恋愛は成り立つと思うんだけどな
聞こえないふりをしながら、コーヒーを淹れる。
「それくらいの年の差があってもいいんじゃない? 好きになるのに年は関係ないと思うし、実際、女がもっと年上のカップルで結婚した芸能人もいるじゃない?」
「否定はしないけど、俺には無理って話。それってさ、女の財産とかが目的の男じゃないの?」
_____そうね、あなたは古風な考えの人だから、そんな年の差カップルのことは、理解できないよね
ソファに腰掛けた夫にコーヒーを出す。 私はスマホを持ってダイニングでコーヒーを飲む。 夫から離れてスマホを開く。 ロックを外してLINEを確認した。
『おっはよー!えりたん!今日も俺のこと愛してる?』
朝からノー天気なコメントで、クスッと笑えた。 LINEの主は、涼平、24歳。
「おはよ。今日も、大好きだよ」
『あーー、愛してないの?俺のこと』
「愛してるよ」
『わーーーい!これで安心した』
「私と涼平のこんな関係って、世も末らしいよ」『ん?終末?ノストラダムス?なんか、かっこいいね』
_____意味わかってるのかな?
涼平は私の恋人。 17歳年下の、恋人。
_____私は結婚してるから愛人かな? どっちでもいいけど
夫はまさか、自分の妻がそれ以上の年の差のある男と恋愛しているとは、想像もできないだろう。
私はスマホのロックを確認して、普通の顔で家事の続きに取りかかった。
話 2
噂は聞いたことがあった。
それはまだ息子が小学1年生の頃。
すぐ隣にある中学校で、痛ましい事件があったと。 若い男たち数人に強姦され、妊娠してしまいそれを苦に手首を切った女子生徒がいるらしいと。
あくまで噂で、誰が?とかどこで?とかそんな詳しいことはわからなかった。
そのせいかどこか遠くの話のようで、現実感のない噂だと思って聞いていた。
そのあとの話は何も聞けず、息子もその中学校を卒業した。
「昔、そんな噂あったよね?」
「本当のことはわからなかったけど。親御さんにしたら、堪らない話だね」
当時のママ友同士では、そんな会話だった。
まさか、その噂の真相を、私が知ることになるとは、全く考えてなかった。
話 3
涼平とは、小説を書くサイトで知り合った。
「ずっと一位ってすごいね!」
涼平は都道府県ごとのランキングで、何度も一位をとっていた。 独特の世界観の小説に、私もファン登録していた。
『ね、会ってみない?こんなに近所だなんて、これは何かの運命かも?』
涼平は軽いノリで誘ってきた。
『いいけど...がっかりするよ、あなたの周りは若い子ばかりだから』
涼平は、サイトで写真もアップしてた。 金髪で、耳には大きなピアス。 唇にもピアス。 サイトでやりとりしてる分には、なんとでも言える。 でもね、実際会ってしまうと17歳年下だという現実に、落胆してしまうのは私の方だ。
『いいじゃん!俺は絵里ちゃんに興味津々だし、直接会って話がしたいな』
なぜこんなに年上の私に会いたがるのか不思議だったけど 17も年が違うし、おかしなことにはならないだろうなと思った。
そんな感じで、会うことになった。 待ち合わせは、車で15分ほどの喫茶店。 私は涼平の顔を知っているけど、涼平は私の顔をしらない。
『先に行ってるから、絵里ちゃんが俺を見つけてね』
車をとめて中に入る。
カランコロン♬
「いらっしゃいませ、おタバコ吸われますか?」 「あ、えっと、待ち合わせなので...」
くるりと中を見渡す。 窓辺の奥の席に、それらしい人を見つけた。 ゆっくり近づいていく。
「あの...」
「あ、もしかして、絵里ちゃん?」
サラサラと、金髪の前髪が揺れた。
まるで雑誌から 抜け出したモデルのように、綺麗な顔をしていた。
「はじめまして、絵里子です」
「はじめまして、涼平です」
緊張した、少しだけ。 そりゃ、初対面だから。
「写真のまんま、だね」
「そう?絵里ちゃんは、思ってたより...」 「思ってたより、何?おばさん?がっかりした?」 「ちがう、反対だよ、若くてびっくりした。本当に年齢、ごまかしてない?」
「ごまかしてません!涼平くんに会うのにそんな必要ないでしょ?」
「じゃあホントに41歳?」
目を丸くして私を見る。 クルクルの目を見た。
「そうだよ、年は誤魔化す必要ないよ。ね、てか、カラコン?目が青い!」
「ということは、俺の母親とそんなに変わらないじゃん!マジで?あ、これカラコンだよ」 「あー、改めて年の話をされると、ちょっと凹むわ」
テーブルに置かれたアイスオレをゴクリと飲む。
「なんで凹むの?めちゃくちゃ若く見えるんだけど」
「もういいって!年の話は。あ、そうだ、新作読んだよ。あれも評判いいね」
照れ臭くて、涼平の新作の話を出した。
「新作ねー、あれちょっと行き詰まってて...」
ごくありふれた喫茶店で、こんな若い子と話してる。
_____周りから見たら、どう見える? 保護者?
涼平は、24歳だとプロフィールに書いてあったけど、20歳未満にも見える。 これは、親子に見えるかも?そんな気がした。