話 2
小鳥遊 慧 POV:
眠れなかった。
暁がディアナを抱きしめる姿、彼の秘密の部屋に漂う彼女の香水の匂い、電話越しに聞こえた彼女のため息――そのすべてが、私の頭の中で容赦なく繰り返された。
朝になる頃には、目の奥でズキズキと激しい頭痛がし、胃は吐き気と悲しみで固く結ばれていた。
しかし、涙はもう枯れていた。
その代わりに、脆く、氷のような冷静さが私を支配していた。
私が最初にしたことは、APEXイノベーションズへ車を走らせることだった。
仕事のためではない、辞めるためだ。
彼の成功の記念碑であり、私の人生を巻き込んだ嘘の上に築かれたビルに、もう一秒たりともいられなかった。
人事部に向かって歩いていると、彼らを見かけた。
暁とディアナが、彼のペントハウスオフィスに直結するプライベートエレベーターから出てきた。
彼は新しいスーツを着ていたが、前腕には白い包帯が見えた。
ディアナは彼の腕にしがみついていた。
私が暁のものだと分かる、オーバーサイズのカシミアセーターを着て。
彼女は青白く、弱々しく見え、目は赤く腫れていたが、彼を見上げるその瞳には、独占欲に満ちた勝ち誇った光が輝いていた。
彼らは何かを話しながら笑い合っていた。
頭を寄せ合い、まるで恋人同士のように、親密で、完全に息が合っていた。
その時、暁が顔を上げ、私に気づいた。
彼の笑顔は消えた。
彼は優しくディアナから身を離し、その表情は用心深く、読み取れないものになった。
彼は私を、まるで見知らぬ他人、処理しなければならない些細な厄介事のように見た。
「慧」
彼の声は平坦だった。
「ここで何をしている?」
私が答える前に、ディアナの目が私を捉えた。
ゆっくりと、残酷な笑みが彼女の顔に広がった。
「あらあら。これはこれは。代わりの子じゃない」
彼女は前に進み出て、捕食者のように私の周りをぐるりと回った。
「ねえ」
彼女の声は、見せかけの同情に満ちていた。
「彼があなたを選んだ理由、分かる気がするわ。同じ髪。同じ目」
彼女は身を乗り出し、私の唇のすぐ上にある小さなホクロに視線を落とした。
「同じ小さなホクロまで。可愛らしいじゃない?」
私は身をすくめた。
あのホクロ…
記憶が蘇った。
数ヶ月前、暁が私の顔を指でなぞっていた。
「これが好きだ」
彼は私の唇の上を軽く叩きながら囁いた。
「完璧だ。絶対に取らないでくれ」
その時は、甘く、親密な瞬間だと思っていた。
今、その記憶は汚され、グロテスクに感じられた。
ディアナは私の顔に浮かんだ恐怖のきらめきを見逃さなかったようだ。
彼女は勝ち誇ったように笑った。
「あら、知らなかったの?」
彼女は甘ったるい声で言った。
「暁は昔から私のホクロに夢中なのよ。彼のお気に入りの部分だって言ってたわ」
私は暁を見つめた。
心臓が胸郭に対して病的なリズムを刻んでいた。
「本当なの?」
私はかろうじて聞き取れるほどの声で囁いた。
彼は答えなかった。
ただ目をそらし、顎を固くした。
彼の沈黙は告白だった。
彼は私の顔立ちを愛していたのではなかった。
彼は彼女との類似点を愛していたのだ。
彼は私を、一つ一つのパーツを吟味し、彼が本当に望む女性の淡い模倣品に仕立て上げたのだ。
その考えはあまりにも侵害的で、あまりにも深く屈辱的で、喉の奥に胆汁がこみ上げてくるのを感じた。
「彼女を放っておけ、ディアナ」
暁はついに、張り詰めた声で言った。
彼は私に向かって一歩踏み出した。
「慧、俺のオフィスで話そう」
「話す?」
私は声を取り戻した。
その声は怒りで震えていた。
「話したいって?彼女と夜を過ごした後で?私の結婚生活のすべてが、私が彼女の安っぽいコピーであることに基づいていると知った後で?」
「そんなんじゃない」
彼は、自動的で、意味のない言葉を言った。
「嘘をつかないで!」
私は叫んだ。
ロビーを通り過ぎる社員たちの注目を集めた。
「もう二度と私に嘘をつかないで、暁!」
ディアナが私たちの間に割って入り、その目がきらりと光った。
「彼に大声を出すんじゃないわよ」
彼女はシューッと音を立てた。
彼女は私を強く突き飛ばし、私はよろめけて後ずさった。
本能が働いた。
私は彼女を、もっと強く突き返した。
「私に触らないで」
その一突きが、彼女の中の何かを断ち切ったようだった。
彼女の顔は怒りで歪んだ。
「このクソ女」
彼女は金切り声を上げた。
「私に触っていいと思ってるの?」
彼女は指を鳴らした。
「捕まえて」
スーツを着た二人の屈強な男たち、彼女の私設ボディガードが即座に動いた。
彼らは私の腕を掴んだ。
その握力は鉄の万力のようだった。
私はもがいたが、無駄だった。
「ディアナ、やめろ」
暁は鋭い声で言ったが、介入する動きは見せなかった。
「どうして?」
彼女は目を燃やしながら言い返した。
「この子にはレッスンが必要よ。自分の立場を理解させる必要がある」
彼女はサディスティックな表情で私に向かって歩いてきた。
「動かないように押さえてて」
ガードたちの握力が強まった。
ディアナは、ぞっとするような、捕食者の笑みを浮かべた。
「彼女には、誰の代用品なのか、永久に思い出させる必要があると思うわ」
彼女はハンドバッグに手を伸ばし、小さく、凶悪な見た目のポケットナイフを取り出した。
彼女はそれをパチンと開き、刃がロビーの照明の下でキラリと光った。
血の気が引いた。
「暁、彼女を止めて!」
私は彼に懇願するように叫んだ。
「お願い!」
彼は一歩前に出た。
その表情は葛藤に満ちていた。
一瞬、心臓が止まるかと思うほど、彼が助けてくれると思った。
「暁、やめて」
ディアナは低く、危険な声で警告した。
「もし彼女にもう一歩でも近づいたら、私は出て行く。そして今度は、二度と戻ってこない」
彼は凍りついた。
彼は彼女の狂気じみた顔と、私の怯えた顔を見比べた。
私は彼の目の中に計算を見た。
選択肢を天秤にかけているのを。
そして、私の心の残骸を粉々にするほどの決定的な態度で、彼は一歩後ずさった。
「これはお前たち二人の間のことだ」
彼は、すべての感情を欠いた声で言った。
「俺は干渉しない」
世界が傾いた。
彼は見ていることを選んだ。
彼はこれを認可した。
彼は、彼女との毒々しく、執着的な関係を守るために、彼の妻である私に、彼女が望むことを何でもさせることを許したのだ。
「いや」
私は、絞り出すような息遣いで囁いた。
「暁、いや…」
ディアナの笑みが広がった。
「いい子ね」
彼女は私に振り返り、ナイフを手にしっかりと握った。
「さて、どこまで話したかしら?ああ、そうそう。ホクロね」
彼女は刃の先端を私の顔に持っていき、唇のすぐ上の皮膚に押し付けた。
私は目をぎゅっと閉じ、恐怖の嗚咽が喉に詰まった。
「心配しないで」
彼女は、古くなったウイスキーの匂いがする熱い息を吹きかけながら囁いた。
「一瞬痛いだけよ。そうすればあなたは完璧になる。完璧な、真っ白なキャンバスにね」
ガードたちは私を動けないように押さえつけ、その手は私の腕に食い込んだ。
一人が私の口を手で覆い、私の悲鳴を押し殺した。
私は無力で、完全に彼のなすがままだった――そして彼は私に何の慈悲も与えなかった。
涙で滲む目を通して、私は夫を最後にもう一度見た。
彼はそこに立って、見ていた。
その顔は冷たく、無表情な仮面だった。
彼の視線が一瞬私と交錯し、その中に後悔のかけらも、同情の気配もなかった。
ただ、ぞっとするような、無感情な空虚さだけがあった。
ナイフが深く押し込まれた。
鋭く、焼けるような痛みが私の顔に爆発した。
そして、すべてが真っ暗になった。
---
話 3
小鳥遊 慧 POV:
消毒液の無機質な匂いと、顔の鈍い痛みで目が覚めた。
私は個室の病室にいた。
莫大な費用がかかり、絶対的なプライバシーが保証されるタイプの部屋だ。
指が上唇に触れた。
厚い包帯で覆われていた。
その周りは柔らかく腫れていた。
携帯がベッドサイドのテーブルにあった。
震える手でそれを拾った。
知らない番号からのメッセージがあった。
それはビデオファイルだった。
胃がひっくり返りそうになったが、知らなければならなかった。
再生ボタンを押した。
ビデオは揺れていて、明らかに携帯で撮影されたものだった。
それは何年も前の暁とディアナで、プライベートジェットのように見える場所で撮影されていた。
彼らは若く、活気に満ち、互いに絡み合っていた。
彼は彼女の耳元で囁き、彼女は笑っていた。
昨日聞いた甲高い笑い声とは全く違う、本物の、幸せそうな声だった。
彼は彼女の唇の上のホクロを親指でなぞった。
「これが好きだ」
彼の声、若いが紛れもなく彼の声が、携帯のスピーカーから聞こえた。
「俺の北極星だ。これが見える限り、俺は家にいると分かる」
ビデオは終わった。
すぐに新しいメッセージがポップアップした。
『縫合が必要だったって聞いたわ。残念ね。彼は昔、その場所が好きだったのに。私のね』
別のメッセージ。
『分かるかしら、慧。あなたは彼にとって人間じゃなかったのよ。プロジェクトだったの。彼は素材――黒髪、茶色の目――を見つけて、あなたを私に似せて形作ろうとしたの。私が昔インターンしていたのと同じ部署に、あなたを就職させたりもして。あなたが行ったすべてのデート、彼がくれたすべての贈り物…それはすべて再現だったの。私との栄光の日々を追体験しようとする、哀れな試みよ』
そして最後のメッセージ。
『心配しないで、ゲームはまだ終わってないわ。始まったばかりよ。彼のお気に入りのおもちゃを壊すのが、すごく楽しみだわ』
冷たい怒りの波が私を襲った。
この女性はただ残酷なだけではない。
病的なほど狂っている。
そして暁は、彼女の意のままの共犯者だ。
病室のドアが開き、彼が入ってきた。
彼は非の打ちどころのない服装で、心配そうな夫を完璧に演じていた。
彼は私の好きな白いユリの花束を抱えていた。
その偽善はあまりにも濃厚で、息をするのもやっとだった。
「慧」
彼は柔らかい声で言った。
「気分はどうだ?」
彼は花を置き、私のベッドサイドに来た。
「人事にはもう話してある」
彼は、まるでビジネスの話をするかのように続けた。
「退職届と、素晴らしい推薦状を用意させる。もうオフィスに行く必要はない」
彼は私をクビにした。
一日も経たないインターンシップから。
彼は私を彼の世界から消し去り、この醜い事件全体を隠蔽しようとしていた。
私は今朝、弁護士に作成してもらった辞表を手に取り、彼に差し出した。
彼はそれを受け取り、ページに目を通した。
彼は微動だにしなかった。
彼はただテーブルからペンを取り、決然とした筆致で一番下に自分の名前をサインした。
彼の世界との最後の繋がりが、何の躊躇もなく断ち切られた。
彼はペンを置き、手を伸ばし、包帯を注意深く避けながら私の顎のラインをなぞった。
「君はとても美しい」
彼は呟いた。
私はまるで火傷をしたかのように、彼の手から身を引いた。
彼のシャツの襟が少しずれていた。
糊のきいた白い生地の下から、かすかだが紛れもない、赤い口紅のシミが覗いていた。
ディアナの色合いだ。
それを見た瞬間、私の自制心の最後の糸が切れた。
「私に触らないで」
私はかすれた声で囁いた。
「あなたはそこに立っていた。彼女が私を切るのを見ていた。あなたは私を守ると約束した、暁。結婚式の日に約束したじゃない」
彼の顔に、罪悪感か、それとも苛立ちか、何かがよぎった。
「慧、君はディアナを理解していない。彼女は…脆いんだ。君が彼女を挑発すべきじゃなかった」
彼の声に含まれる非難は、物理的な打撃だった。
彼は起こったことを後悔していなかった。
彼は私が邪魔になったことを後悔していた。
私が彼の歪んだ彼女との関係を複雑にしたことを後悔していた。
「私が彼女を挑発した?」
私は信じられないという思いで声が上ずった。
「彼女が私を襲ったのよ!」
「そして俺は、彼女から離れていろと言っているんだ」
彼の口調は、命令口調に硬化した。
「君自身のために」
私は彼を見つめた。
私が心から愛したこの男を。
そして、冷たく、空虚な虚無感しか感じなかった。
彼はただの嘘つきではなかった。
彼は臆病者だった。
彼はディアナに自分の人生を、私たちの結婚生活を蹂躙させ、その結果を私のせいにしていた。
結構だ。
彼がこれを終わらせないなら、私が終わらせる。
「そんなに彼女を愛しているなら」
私は、魂の震えにもかかわらず、落ち着いた声で言った。
「私を解放して。離婚しましょう」
彼の顔が青ざめた。
「だめだ」
彼は、鋭く、暴力的な言葉で言った。
「二度とそんなことを言うな。俺は彼女を愛していない。俺が愛しているのは君だ、慧」
彼の携帯がナイトスタンドで震えた。
彼は画面をちらりと見た。
「ディアナ」という名前が点滅した。
彼の表情は即座に和らぎ、眉が心配そうに寄せられた。
彼は電話に出た。
その声は低く、なだめるような囁きだった。
「どうした?…レオは大丈夫か?…夕食は食べたか?」
レオ。
彼女の猫だ。
「心配するな」
彼は電話口で、私には否定した優しさに満ちた声で言った。
「今向かっている。20分で着く」
彼は電話を切り、私に振り返った。
その顔は再び、冷たい無関心の仮面だった。
「行かなければならない」
彼は、言い訳さえせずに言った。
彼は後ろを振り返ることなくドアに向かって歩いた。
彼は私が何か必要か尋ねなかった。
さよならも言わなかった。
ただ去っていった。
彼は、恋人のせいで顔に縫合が必要なほどの身体的暴行を受けたばかりの妻を置き去りにして、その恋人の猫が食事を逃したかもしれないという理由で、その恋人の元へ駆けつけたのだ。
その瞬間、私は確信した。
彼の心の中では、私は城之内ディアナの猫ほどの価値もないのだと。
乾いた、笑いのない笑いが私の唇から漏れた。
私は携帯を取り、弁護士に電話をかけた。
「離婚届を作成してください」
私は冷たく、はっきりとした声で言った。
「私が権利を持つすべてのものを要求します。そして、彼から自由になりたい」
私はその病室で二日間過ごした。
暁は一度も訪ねてこなかった。
電話もかけてこなかった。
ヴィラにさえ帰ってこなかった。
退院した時、私は心と同じくらい静かで空っぽの家に戻った。
最初に目に入ったのは、彼のプライベートな書斎のドアだった。
それはまだ壊れていて、少し開いていた。
私はそれを押し開けた。
部屋は私が去った時と全く同じだった――砕かれた絵画、引き裂かれた写真、床に散らばった手紙。
彼は自分の執着の証拠を片付けることさえしなかった。
あるいは、私が見ても気にしなかったのかもしれない。
私は便利屋を呼んでドアを修理してもらった。
それから、離婚届が入った厚い茶封筒を、彼とディアナの写真が飾られた額縁のすぐ隣、彼の机の真ん中に置いた。
彼にそこで見つけさせればいい。
彼の過去と未来が衝突するのを見させればいい。
私はその日の残りを、彼を私の人生から体系的に排除することに費やした。
彼が私に買ったすべての宝石、すべてのデザイナーズドレス、すべての高価な贈り物を集めた。
それらを箱に詰め、彼が引き起こした精神的苦痛に対する請求書と共に、彼のオフィスに宅配便で送る手配をした。
私はもはや彼のおもちゃではない。
そして、彼のゲームをするのはもう終わりだ。
---