話 2
転生してから3日経って分かったことは、この街は魔女に対してとても優遇されていて、いろんなものが半額や無料になる事が多く、しかもこの街には私以外の魔女を見たことが無い。もしかしたらいないのかも。
空を飛んでいる魔女もいないし。
そういえば、私って飛べないのかな? 飛び方も知らないし、ほうきも無いし。
そもそもほうきで飛ぶのかどうかもわからないし。
でも、魔女と言ったらほうきで空を飛ぶと言うのが定番だよな。
夜に魔法の本を少しずつ読んでいるけど、飛び方すら見つけていないし。
朝、いつものように朝日で起きて魔女服に着替えて、朝ごはんを作りに行く。
この家は転生して一日目にすべての部屋を見て回ったから、ある程度把握している。
見て回って分かったことは、この家は一人で暮らすには、もったいないくらい広い家。
転生してから思ったけど、この家って家具やいろんな道具がそろっていて「誰か住んでいたのかな?」って思っていたけど、家具と道具が新しいから多分違う。
でも、冷蔵庫が無いのは不便だけど、異世界だから仕方がないことだとわかっているし、そんなに困っていないから問題ない。
あ、魔法は毎日少しずつ練習していて、黙々と成長している。
杖だって魔法の力で刹那の時間で出すことが出来るようになった。
でも、杖を刹那の時間で出せられるようになっても、ほうきで飛んでみたいな。
せっかく魔女になったし。
魔女って言ったら「ほうきで空を飛ぶ!」って言うイメージがある。私だけかな? そんなことないよね。
さて、今日は何をしよう? 魔法の練習は毎日夕方にやっているし、今日はお昼から始めようかな?
とりあえず朝ご飯を食べてから考えよう。
ゆっくり朝ごはんを食べて、魔女服に着替えて外に出る。
今日もいい天気だ。まるで5月の上旬のような風と気温。とても過ごしやすい。
「今日もいい天気だな」
私はいつも一日目にパンを食べた河川敷で魔法の練習をしている。
意外と広くて、いい風がたまに吹いてきてとっても気持ちいから。
それにあんまり人はいないから。
河川敷に行く前にパン屋さんに行って、お昼ご飯を買ってから行こう。
最近いつもお世話になっているパン屋さんに足を運ぶ。
今日は何のパンがあるかな。
このパン屋さんにあるクロワッサンがとっても美味しい。
「こんにちは。今日はどんなパンがありますか?」
「魔女さん。今日も来てくれたのかい。ちょうどバゲットが焼きたてだよ」
パン屋さんのおばあさんが、バゲットの乗ったプレートを持ちながら言った。
確かにおばあさんの持っているプレートから「焼きたてだよ!」と言っているかのような匂いがしてきた。
「おいしそうですね。そのバゲットといつもクロワッサンを一つずつください」
「はいよ」
おばあさんが紙袋にバゲットとクロワッサンを一つずつ入れて、渡してくれた。
「ありがとうございます」
パンを受け取ってお金を払う。
「まいど」
お金を払って、2種類のパンの入った紙袋を持っていつもの河川敷に向かう。
そういえば、このお金って無くなる前に稼ぐ方法を考えなくてはいけないな。
思ったより小袋のお金は沢山あるし、この街は魔女に対して優遇されているから、すぐには無くならないけど、いずれはなくなる代物だからどこかで稼がないといけない。
転生する前は、近くの喫茶店でバイトをいて生活していたし、大学は両親が亡くなってからは奨学金でないと通えないから、奨学金で通っていた。
河川敷に到着して、ちょっとだけこの焼きたてのバゲットを食べてみることにする。
せっかく焼きたてだと言うし、紙袋の上からでも焼きたてだと言うことがわかるくらい温かい。
紙袋からバゲットの半分より少し少ないくらいの量を千切り取って、ちょっと大きく口を開けて頬張る。
美味しい。小麦粉の香りがするし、やっぱり焼きたてのパンだから美味しいな。
朝ご飯を食べたて2時間ちょいくらいして、バゲットを約半分食べてしまった。これは太るかな。
まぁ、夕飯を減らせばいいだけなんだけど。
でも、そんなこと言ったら転生してから、転生する前に比べて食べる量が増えたんだよな。
転生してからも自炊はいているけど、つい作りすぎてしまう。
転生する前は作りすぎても、冷蔵庫に入れておけばよかったけど、ここには冷蔵庫が無いから作りすぎたら食べちゃわないといけないから、転生前に比べて食べ過ぎてしまう。
冷蔵庫の有難さがよくわかるな。
バゲットを食べ終えてやっと魔法の練習を始める。
最初に昨日練習した魔法を一通りやって、ちゃんと出来るか確認する。
出来なくなっていたらいざと言う時に困るから。
昨日出来るようになった魔法を一通りやって、ちゃんと出来ることを確認して、新しい魔法の練習に取り掛かる。
「えっと、昨日はこのページまでやったから、今日は次のページっと」
本を1ページめくって題名を読むとそこには「ほうきでの飛び方」と書いてある。
おう、これでようやく魔女らしいことが出来るようになる。
「ほうきでの飛び方」を読む。
「なになに。【ほうきで空を飛ぶにはほうきが必要です。】・・・・要するにほうきが無いと飛べないということか」
あれ? 買わないといけない?
読み進めていくと「ほうきは魔法協会に売っています」と書いてある。
魔法協会? そんなものがこの世界にあるとは思わなかった。
まぁ、魔女がいるくらいだから、魔法協会の一つや二つはあるのか。
魔法協会ってどこにあるんだ?
バックから魔女専用の地図を出して魔法協会の位置を調べる。
魔法協会はこの国「リエルジー」ではなく、隣の国の「魔法国マーキスクロック」という所にあるらしくて、ここから歩くと2日はかかりそうな所にある。
これは旅の準備をしないと買いに行けないな。
何かネット通販的なものはないかな。
あったら使いたいけど、流石に無いだろうな。
もしかしたら、魔法で出来るのかもしれないけど、その方法を探さないといけないな。
まぁ、一回家に帰って準備をしないと、魔法協会に行けないから家に帰ろ。
河川敷で魔法の練習をやめて、パンが入った紙袋を持って家に帰る。
家に着くと、玄関の前に木箱が置いてある。
そっか、この世界には段ボールなんてないから、箱と言ったら木箱なのか。
なんの箱だろう?
木箱を家の中に待ち運んで中を開けてみる。
すると中には手紙と何やらいつも付けているのと別のバッチが入っている。
何かよくわからないけど、中に入っている手紙を読んでみよ。
手紙には、
【魔女アリーシャ様。
この世界の魔女は魔法協会の名簿に名前を刻むようになっております。
ですが魔法協会の名簿にアリーシャ様の名前がありませんので通知させて頂きました。
魔法協会にお越し頂いて、魔法協会の名簿に名前と魔女名を登録して下さい。
なお、同封してあるバッチは、魔法協会に入るときに必要になりますのでお付けになってから入ってください。
よろしくお願いします。】
と、書かれてある。
魔法協会に名前が刻まれてない? 転生したから?
転生したときに、そういうこともやっておいて欲しかった。
てか、私が転生して3日くらいしか経ってないのに、私がいるってよくわかったな。
魔法の力って言われてしまったら、それまでなんだけど。
ん? 魔女名? 私にはそんなはないと思うけど?
ブローチには名前しか書いてないし、魔女名なんて初めて聞いた。
なんて説明したらいいんだろう。
勝手に付けていいものなのかな。でも、勝手に付けたらどうせすぐわかるだろうし、でも「転生しました」なんて、誰の信じてくれないだろうし。
ま、そんなことは行ってから何とかなるかな。
ほうきを買いに行って、名簿に名前を刻んで帰ってくるか。
今日は魔法協会に行く準備をして、明日の朝から歩くか、なんか公共交通機関的なのがあったらそれを使って行こう。
手紙を読んで、お昼を食べて魔法協会に行く準備をしていると、外が徐々に暗くなってきた。
よし、夕飯を食べて今日はもう寝ようかな。
魔法国マーキスクロックって一体どういう所なんだろう。楽しみだな。
話 3
魔法国マーキスクロック。
ここは魔法使いのみが住める街で、特に魔女・魔女見習いが多くいる国らしい。
なにせ、この世界の事は何もわからないから、その国に行ってみないとなにも分からない。私は転生者だから。
魔法国マーキスクロックにリエルジーから馬車や徒歩で、約1日かけてのんびり周りの風景を見ながら来た。
ところで、なんで私が魔法国マーキスクロックに来ているのかと言うと、昨日家に帰ったら魔法協会から木箱が届いて、中に入っている手紙に魔法協会に来るようにと言われたから。
なんで呼ばれたかって言うと、どうやらこの世界には魔女の名簿があるらしくて、そこに私の名前が入っていないから呼ばれたらしい。でも、名前が入っていないのは私がつい4日ぐらい前にこの世界に転生したからだ。てっきりそれに対しての手続きも済んでいるものだと思った。
まぁ、この世界に名簿というシステムがあることを転生して3日経った時に知ったんだけど。
あれ? そういえば、日本語でもない文字がなんで読めるんだ?
英語はそれなりに読めるけど、筆記体は読めないし。
転生した影響かな?
でも、そうとしか考えられない。
魔法国マーキスクロックに到着して魔法協会を探さないと。
この国意外と大きくて、いくら魔女用の地図があっても迷っちゃいそう。
魔法国マーキスクロックを少し歩いて分かったことがある。
この国の魔法使いは全然空を飛んでいない。禁止しているのかも。
そういえば魔法協会の位置が分からないな。
地図には「魔法協会」とも書かれた所がどこ見てもないから。
そう困っていると、
「アリーシャさんですか?」
「はい。そうですが」
だれ?
ぱっと見魔女だけど。いや、魔女しかいないのか。この国は。
「私は魔法協会の魔女サラです。アリーシャさんを案内するために来ました」
私に声をかけてきた人は魔女のサラさんらしい。
見た目は魔女・・・だけど、ローブの色が赤紫色に近い色のローブを着ている。
ローブの色ってなんでもいいの?
私はこの色のローブしかなかったからこれだけど。
てか、ローブの色はどうだっていいや。
「ありがとうございます。魔法協会の場所がわからなくて困っていたので助かります」
「そうだったんですか。良かったです。ご案内します」
魔女のサラさんに案内されて、魔法国マーキスクロックの街並みを見ながら魔法協会を目指して歩く。
ゴミが一つも落ちていない綺麗な街だし、今日は快晴で日の光でマーキスクロックの街並みが綺麗に見える。それに、ときどきいろんなところからいい匂いがしてきて、だんだんお腹が空いてきた。そういえば、朝に少し朝食を食べたっきり何も食べてないし、今ちょうど太陽が空の真ん中に来ているからお昼の時間だ。用事が済んだら、お昼食べて帰ろうかな。
サラさんに連れられて15分程度で魔法協会の門の前に着いた。魔法協会はとっても大きくて、ドイツのケルン大聖堂みたいでいかにも魔法国の象徴に相応しい建物だ。それにしても大きいな。どのくらいの高さあるんだろう。
「アリーシャさん。ご自宅に届いたバッジはありますか?」
「今付けています」
「ありがとうございます。これから魔法協会に入るのに必要となるので、無くさないようにしてください」
「分かりました」
門の前に立つと、門を開ける人がいないのに自動で門が開いた。この世界に自動ドアは無いだろうから、おそらく魔法の力だろう。
魔法にこんな使い方があるんだ。
門をくぐって、魔法協会の庭に出た。
魔法協会の庭はとっても広くて、いろんな形をした花壇がたくさんあって、いろんな花が植えてある。
その中には私が見たことのない花が植えてあったり、私がよく知っている花もある。
ここでお昼を食べたいな。楽しそう。
「とってもきれいですね」
「この庭はここの魔法協会の会長さんの趣味なんです。すべて魔法で管理しているのではなく、会長を含めた10人程度の魔女が手作業で管理しています」
「なんで魔法で管理しないんですか?」
「この規模を魔法で管理すると、膨大な魔法陣と魔力が必要になってしまうのです。だから魔女の手で管理をしているのです」
確か魔法の本に「魔法を使いすぎると自身の魔力が無くなって、自身の一部分・記憶・命を代償にして魔力を補うことが出来る」って書いてあったな。
てことは、魔法で管理するには一人分の魔力では足りないってことか。
でも、一人だと魔力が足りないってことは、他人の魔力を使うっていうのは出来ないのかな?
「あの、サラさん。他の魔女の魔力を使って魔法を使うっていうのは出来ないんですか?」
「それをすることは出来ません。いえ、出来ますが魔法協会に定めてある法律によって禁止されているのです。もし、その行為を行った場合、させた側は死刑。した側は10年以上の懲役刑が課せられます」
「そうなんですか。それで手作業で管理しているんですか」
「そういうことです」
魔女サラさんと魔法協会の庭を抜けて、建物の大きな扉の前に来て、一回立ち止まる。
すると、魔法協会から送られてきたバッジと、サラさんの胸に付いているバッジが光って、大きな扉が「ゴゴゴゴ」と音を立てながらゆっくり開いた。
これも魔法の力か。
ここで私は一つ疑問が出た。
もしこれが魔法で開け閉めしているのなら、この膨大な魔力はどうやって発生させているんだろうかと。
他人の魔力を使うことが法律上出来ないのなら、この建物自体に膨大な魔力が存在していることになる。
そしてそう考えると「さっき通った門は一体どうやって開閉しているのか」という疑問も出てくる。
「サラさん。さっきの扉は魔法ですか?」
「魔法です」
「てことは、この協会自体に魔力が存在しているのですか?」
「いえ、この協会はただの建物です。この協会自体に魔力は存在しません」
「じゅぁ、どうやって」
「協会には魔力はありませんが、あの扉と私たちが付けているバッジには魔法陣が組み込まれてて、このバッジが扉に近づくと私たちの魔力が使われて開くようになっています。外にあった門も同じ仕組みです」
つまり、このバッチは現代でいうICカード的なものという解釈でいいのかも。
扉の説明を聞きながら、階段で次の階に上がって行って、一つの扉の前に立ち止まった。
会長室? 扉に付けてあるプレートにはそう書いてある。名簿に名前を入れるのに魔法協会の会長に合わないといけないのかな?
それとも、魔法協会の名簿に名前が無い事が、会長に合わないといけないぐらいの一大事なのか。
「名簿に名前を入れに来ただけ」と思っていた思いが徐々に不安になってきた。
「アリーシャさんをお連れしました」
サラさんがそう言って会長室の扉を開けて、手を差し伸ばした。
「どうぞ」
「し、失礼します」
私が会長室に入ると「では」と言って扉の外に消えていった。
う、会長と一対一。気まずい。
てっきりサラさんもいるものだと思った。
「お座りください」
会長室にあるソファーに手を差す。
「私はこの魔法協会会長のミールです」
「アリーシャです」
「アリーシャさんはなんて言われて魔法協会に来ました?」
なんて言われて来たか? 魔法協会の名簿に名前が無いってあの手紙に書いてあったから来たんだけど。
だから会長のミールさんのところに連れてこられたと思っていたけど。
「えっと、魔法協会の名簿に名前が無いと手紙に書いてあって来ました」
「あ~、サラさんはそう手紙に書いたんですね。あなたをこの魔法協会に呼んだのは、あなたが突如現れたからです」
え? どういうこと? じゃぁ、協会の名簿に名前が無いっていうのは嘘ってこと?
「えっと、じゅぁ、名簿に名前が無いっていうのは」
「嘘ですね。サラさんにはあなたが必ず魔法協会に来るように手紙と、あなたが胸にしているバッジを送るように言ったんです。あなたの名前はちゃんと名簿に書いてあります」
「そうなんですか」
協会の名簿に名前があることについては安心したけど、さっきミールさんが言い放った「あなたが突如現れたからです」については安心していない。
「それでは本題に入ります。あなたは転生者ではないですか?」