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松島茜 視点: 響き渡る声

譲康は携帯電話をちらりと見て, 私から少し離れた場所へ移動した. まるで, 私に聞かれたくない会話でもあるかのように. 彼の背中越しに, 電話の向こうから, 甲高い女性の声が漏れ聞こえた. 前島瑞希の声だった. 私は心臓が凍りつくのを感じた.

「どうして, 茜なんかと一緒にいるのよ! 」

瑞希の怒った声が, 静かなリビングに響き渡った.

譲康は声をひそめ, 落ち着いた声で瑞希をなだめている.

「瑞希, 今はちょっと…」

「ちょっとって何よ!  私がどれだけ寂しい思いをしているか, あなたにはわからないの?  今すぐ, ここに来てよ! 」

瑞希の声は, まるで私の神経を逆撫でするようだった.

譲康は, 私たちの関係を「義務」と表現した. 彼の口から出たその言葉は, 私の心を深く切り裂いた.

「瑞希, 君も分かってるだろう?  彼女は僕の妻だ. 君といる時は, 彼女に連絡しないように言ったはずだ」

譲康は, そう言った. まるで, 私への配慮でもあるかのように.

瑞希は, 一瞬静かになったかと思うと, 今度は誘惑的な声色になった.

「ふふ, わかったわ. じゃあ, 今夜は, あなたを一人占めできるってことね?  新しい下着を買ったの. きっと, あなた好みよ」

瑞希の声は, 私の耳の奥で, 粘着質な蜜のように響いた.

私の胃の奥からこみ上げてくる吐き気に, 私は思わず口元を押さえた. 頭の中がぐるぐると回り, 目の前が真っ白になる. 身体が, まるで氷漬けにされたかのように冷たくなっていくのを感じた.

譲康が電話を切り, まるで何もなかったかのように私に近づいてきた.

「茜, どうしたんだ?  顔色が悪いぞ. 花粉症か? 」

彼の優しい言葉と, その裏にある冷酷な真実.

私は, その二つの感情の間に挟まれ, 息が詰まりそうだった.

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国民的俳優の甘い裏切り

第3話
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