話 1
『おぉ、知恵の神よ。どうか我らのもとに現れ、お助けください。』
八意天《やごころそら》は、いつもどうり学校から帰ろうとしていた。
髪は紺色のショートで、容姿、体型ともに普通。自宅から歩きで30分ほどの高校に通っている二年生男子。自分から他人に話すことはなく、学力は高い。夢はないし特にこれといった才能もなく、打たれ弱い。しいて言うなら周りには隠してるけどかなりのオタク。よく言えば多趣味、そんな感じだ。
今日は、日直だったため教室に鍵をかけ、その鍵を職員室に届けに行く。
コンコン
「失礼します」
「あぁ、八意。......鍵預かっとくぞ」
担任の西山先生だ。生徒思いで優しいんだけど面構えが怖い。
「ありがとうございます」
「そうだ、お前卒業したら何するんだ?」
「普通ですけど」
「普通でもやりたい仕事とかあるだろ?......ほれ」
机の引き出しから進路のプリントを渡される。
「書き直してこい」
「はい。......失礼しました。」
プリントをしまい職員室を出て昇降口に向かう。
運動部の声や楽器の音が聞こえてくる。部活に入っている人たちはみんなもう進路は決まっているのだろうか。
そんなことを考えつつ、昇降口のドアを開け外に出ると、
「あれ?」
見たこともない景色に変わっていた。
中世風の街に奥に見えるは大きな城。そこはとても賑わっていて今いるのは広場のように見える。
......いや見たことはあるんだ、同じような景色を。でもそれはアニメやラノベの世界であって現実じゃあない。
何かの間違いだろうと後ろを振り向くが学校なんてものはなく、大きな噴水が建っていた。
「まてまてまて、何かの間違いだ。そんな......うそだろ?」
いやいやと首を振ってみたり、目を擦ってみたりするが何も変わらない。
「マジの異世界召喚ってやつですか?だったら召喚者はどこにいんだよ。......いや全部夢か?」
答えの帰ってこない質問を出し続け、
「よし、落ち着こう。落ち着くんだ。......すぅー、はぁー」
大きく深呼吸をすると、
「......よし、状況の整理だ」
1つ、昇降口を開けたら変なとこに飛ばされた。
2つ、周りを見ると耳の長い人しかいない。
空にはたくさんの惑星?がある。近かったり、遠かったり。
3つ、バッグの中には、筆箱、ノート、ファイル、学生帳、スマホ、財布、
あと空の弁当だ。
4つ、もちろんスマホはつながらない。
「最悪だ。でも、もっと情報が欲しい。周りを探索しよう。」
「なるほど、建物のつくりは中世風だな。買い物をしている人を見る限り、俺の持っているお金じゃ何も買えないだろうな」
探索を初めて、数分店が多く並んでいるところを歩いてる。たくさん看板があるがそれもなんて書いてあるのかわからない。
ぐぅ~
「......」
腹減った。
元の世界だともう晩御飯になっているんだろうか。
「あ」
八百屋だろうか、野菜や果物をたくさん売っている。中でも大きく真っ赤なリンゴが目に入った。
「うまそぉー」
ほしいけどお金ないし、お店の人怖そうだし......
「はぁ、あきらめよう」
その後それらしい成果は得られず、日も落ちて気づいたら最初の場所に戻ってきていた。
「疲れたし、座ろう」
噴水に付いてるベンチに座る。
さっきより人通りも減っていて......というよりは目の前をさっきはかなりの数だったが、今は2,3人くらいといったろころだ。
「これからどうしよう」
目元には涙が溜まっている。
「こんなところで死にたくない......」
そのまま静かに泣いた。
しばらくして気分がだいぶ落ち着いてくると、辺りはすっかり暗くなっていた。
もう寝よう。
ぺたんとベンチに寝転がる。
起きたら夢であったことを信じて、そうでなかったら住み込みで働かせてもらえる場所を探そう。
「......うぅ、寒い」
そう言って別に暖かくもないバッグを抱き枕のように抱きしめる。
「帰りたい、家に帰りたい」
また涙があふれ出てくる。
腹は減っているし、泊まる場所もない。他人と話せないから助けてもらえないし、なにもわからない。噴水の水も掛かってくる。最悪すぎる異世界召喚だ。
「なんで、俺がこんな目に......」
疲れているので眠りたいのに、涙が止まらなくて訳が分からなくなってくる。
「ねぇ、キミ」
「へ?」
涙で前が見えなくなっているが人が立って居るのがわかる。声を聴くからに女性だろう。
幻覚が出るところまで来ちゃったか。
「ここで何しているの?」
ほかにも、どこに住んでいるの?年は?など色々聞かれたが幻覚に何言ってもしょうがないし答えるほどの元気もない。なのに、どうしてか
「お腹すいた」
そう言って意識が暗闇の中に沈んでいった。
話 2
トントントン、ジュージュー
窓から差し込むまぶしい朝日と食べ物のにおいで目が覚める。
「ここは......」
そうだ確か昨日異世界に飛ばされて、それから眠くなって、気づいたらここにいて......もしかして誘拐?!
驚いて、状況を確認する。
「服は、変わってる」
なんか病院の患者さんが着るような服だ。
「荷物は?!」
右の棚に置いてあった。
「あ、あれ?」
誘拐だったら荷物はないだろうし、ベッドで寝かされてない?
スンスン
それにこの匂い
ぐぅ~
「......」
腹に手を当てて、
「そういえば、昨日の夜から何も食べてないな」
もしかしたら食べ物を分けてくれるかもしれないとわずかな希望を持ち、ベッドから出てドアを開けると、廊下に繋がっており下に階段が伸びていた。
警戒しながら恐る恐る降りると、エプロン姿で料理をしていた耳の長いきれいな女性がいた。
向こうがこちらに振り向く途中で目が合ってしまった。......すると、
「あら、起きたのね。おはよう」
と優しく微笑み挨拶をしてくれた。
「あ......」
「ん?どうかしたの?」
「いや、別に」
なんだあの人?!めちゃめちゃタイプなんだが!
髪は金色で長いわけでも短いわけでもないくらいの長さで、身長は俺よりも少し高い。目の中は赤くてスタイルがかなりいい。
って初めて見る人をそんな目で見ちゃいけないよな。
「ほら、もうすぐご飯できるから座ってて」
「え?あ、はい」
そう言って料理に戻ってしまったので、言われた通りに席に着く。
しばらくすると、
「はい、おまたせ」
と、料理が出てきた。
パン2枚、ベーコンエッグ、レタスとトマトという普通の料理だったが、それが今の俺にっとってはとてつもなくうれしかった。
「いただきます」
「めしあがれ」
一口ベーコンを食べると、うますぎて涙が出てきた。
昨日めちゃめちゃ泣いてたじゃん。
そのあとも食べれば食べるほど涙が出てきて気づいたら全部食べ終わってた。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」
「あの、ありがとうございます」
「いいの、いいの。昨日あんな場所で倒れてていきなりお腹すいたって言ったと思ったら急に寝ちゃうんだもん。びっくりしたけど、大丈夫そうでよかった」
「え?」
「え?」
「実はなんも覚えてないんですけど」
「そっか、まあさっき言ったとおりだよ」
「そうなんですね」
「ねぇ、キミのこといろいろ教えてよ」
「えーと俺の名前は、八意天です。えーっと何話そう」
「ヤゴコロソラか......じゃあソラでいいね」
「あ、はい」
いきなり下の名前で呼ばれると照れる。
「私の名前はアリス、この妖人種《エルフ》の星の薬師《くすし》よ」
アリスと名乗った女性はにこりと微笑んだ。
話 3
エルフ?星?
いやエルフはわかるぞ。そうゆうのをいっぱい見てきたからな。
星ってなんだよ。え?星ぃ?!惑星とか恒星とかそうゆうの?
「あの、言ってることがちょっと分からないんですけど」
「え?」
とすっとんきょんな声と顔をされた。
「いやその信じてもらえないと思うんですけど、実は俺別の世界から来たんです」
「ん?」
「だから、ここの事全然知らなくてその、いろいろ教えてほしいんですけど......」
「あぁ、そうゆうこと」
「信じてくれんるですか?!」
「もちろん!そうゆう魔法もあるからね」
「そうなんですか?」
「そうそう、でもその魔法覚える人も少なければ成功確率なんてすごーく低いから使う人なんて滅多にいないけど」
そうゆう魔法もあるんだ!じゃあ帰れるかも!
「じゃあ......」
「はい、ストップ」
口を人差し指で抑えられてしまった。
「その前に私がどうしても気になること一つ聞いてもいい?」
真剣な眼差しで聞かれたので思わずこちらも、神妙な感じで頷く。
「単刀直入に聞くとソラはさ、どこの種族?」
「え?」
「いやぁ、ほら外見ればわかると思うんだけどここって妖人種《エルフ》しかいないからさ、ソラって妖人種じゃ無いよね?」
「あー、なるほど。はい、俺はエルフではなくただの人です」
「ん?ヒトってもしかして、人類種《サピエンティア》ってこと?」
「サピエンティア?」
何か変なこと言ったのだろうか?それにサピエンティアってなんだよ。ヒューマンとかそんな感じじゃないのか。
「多分それです。人類種みたいな感じですよね?」
「ああああ!!!そうだったんだぁ!!」
突然大声出したぞ大丈夫か?
「そうなんだぁ。100年前に滅んだんだけど、よかったぁ」
良くないよ!少なくとも俺は!!
「......って滅んだ?」
「うん、正確には居なくなっただけど」
「居なくなったって......」
「そのままの意味だよ。ある日突然ポンッていなくなっちゃったの」
ええええええ?!
「お、驚いたりしなかったんですか?」
「そりゃあしたよぉ。私達にとっては神様同然だったんだから」
まーた訳のわからないこと言われたよ。なんで人間がそんな神様扱いされんの?
「すみません、1つずつ聞いていってもいいですか?」
話を整理したいと言って1回話を中断してもらう。
「わかった」
「どうしてそのぉー、サピエンティア?が神様扱いされてるんですか?」
「人類種は魔力は私達より劣る、とゆうか無いね。けれど私達に知恵を与えてくれたの」
「知恵ですか?」
「そう、建物だったり料理だったり言葉だったり、ホントにもういろいろと」
頭がよかったのか。はじめっからそんな知識あるわけないから、発想力ってのがすごかったのかな?
「へぇー、じゃあその魔力ってなんです?」
「魔力ってのは体の中に含まれる特別なエネルギーで、これが無くなると魔法が使えないの」
「じゃあ、サピエンティアは魔法が使えないと。もう一つ、エルフの星ってなんです?」
これがホントによく分からない。え、何。いろんな種族の星があるの?
「星ってのは、それぞれの種族が住む惑星のこと。空を見ればすぐ分かる」
と窓の方を指さしたのでそちらを見る。
「ほら、いっぱい見えるでしょ?あれが全部種族の星」
予想通りだったーー!!!
こう色々と説明されると俺ってホントに異世界に来ちゃったんだなぁ。
こちらが唖然と空を見ていると、
「ねぇ、よかったらうちに住まない?」
「へ?」
「アテ無いんでしょ。それに人類種ってバレたら、悪い人たちにイロイロされちゃうかもね。大丈夫周りにはヒミツにしとくから」
願っても無いお誘いキター!
......でも、あぁくそ!ビビって素直にハイッて言えねぇ!
そうやって口をパクパクさせていると、
「代わりに、家事と私のちょっとしたお手伝いをしてくれればいいんだけど?」
「家事と、手伝いですか?」
こんな事言ってもらえるんだから行くしかない!行け、俺!
「お、おおお、お、俺で良ければ、そのよろしくお願いします!」
テーブルにガンッと頭をぶつけ、あまり合って無い返しをした。
「ふふ、じゃあこれ着て食器洗い終わったら向こうに来て」
アリスさんが指した方向はベッドがあった扉のほぼ真反対の扉を指していた。
「はい!」
元気よく返事をし、食器を洗ってから急いで着替えアリスさんのあとを追った。