話 2
突然だけど僕は宇美矢 晴兎(うみや はると)。
見た目は真っ黒な少し長めの髪に、『よく眠そうな中性的な顔をしている』とよく言われる。
そんななんてことないどこにでもいるようなごく普通の中学1年生だ。
「……はぁ、今日は月曜日だし頑張らないと」
そんなことを呟きながら僕は学校の階段を登って『1ー2』と書かれた教室に気怠い気持ちで入った。
教室の時計をチラリと見て遅刻してないことを確認して席に着いた。
「あっ、晴兎おはよう!」
「ん? あぁ、おはよう輝羅」
僕に挨拶をしてくれた彼女は広乃 輝羅(こうの きら)。
モデルのようなスラリとした体格に腰まである黒く長い髪の毛、学校では三大女神と呼ばれる程の美麗で有名な生徒……なのだが僕と彼女は小学校の頃からとある趣味で意気投合してから親友という関係になっている。
まぁそれを思春期真っ盛りの中学男子たちが良く思ってる筈もない訳で…………。
「よぉ宇美矢。今日も機嫌が良さそうだなぁ?」
と、言った感じに絡んでくる奴もいる。
ちなみに彼コイツは岡田 猛(おかだ たけし)。
いわゆるこの中学のガキ大将で目の上のたん瘤な気に入らない僕を心底嫌っている。
輝羅と話してるとこうやって近寄って来て嫌味を言ってくるのだから、きっと輝羅のことが好きなんだろうなぁ。
今どきガキ大将なんて流行らないよ?
なんてことを考えているといつのまにかクラスメートが揃っていた。
「そろそろ先生が来る時間だ」と岡田の奴に伝えると「チッ、後で覚えとけよ!」と言い残して岡田は席に着いた。
その後、だいたい一分くらい経つと担任の啓成 維池郎(ひろしげ いちろう)先生が教室に入って来て出席を確認し始めた。
そして朝のホームルームが何事もなく進む。
はぁ……月曜日のホームルームは怠いなぁ。
話は長いし、連絡事項も他の曜日に比べて多い。
なんとかならないかなぁ……。
なんてことを考えていると朝のホームルームが終わりを迎えていた。
「……と、言うことだ。今週も頑張りましょう」
啓成先生がホームルームを締めるのとほぼ同時に異変が起きた。
あたかもタイミングを狙っていたかのように僕を含めたクラスメート全員と啓成先生の足元に青色に輝く魔法陣が現れ、どんどん光が強くなっていく。
教室のみんなはパニックになったが、足を動かしてみるとどうやら動くことはできた。
何が起こっているか分からない以上この場を離れるのが一番だ。
そんなことを考えながら僕は頭に浮かぶ不安を振り払って教室のドアへ向かった。
既に啓成先生と中学剣道男子で全国優勝するほどの実力者、霧乃 星也(きりの せいや)くんが力を合わせてドアを開けようとするがドアが動かない。
霧乃くんが部活のカバンから竹刀を出して窓を割ろうとするがどう足掻いても窓はびくともしなかった。
そして魔法陣の光は激しく輝き、思わず僕たちは目を瞑ったのだった。
話 3
「おぉ……!」
と、喜びと唖然さが籠った声で僕はふと目を覚ました。
……目を覚ました?
いつのまに僕は寝ていたんだろうか?
もしかしてあの魔法陣に睡眠ガスが含まれていて僕たちが眠っている間に誘拐されたのだろうか?
そんな現実逃避をして自分の頬をつねるが痛みはちゃんとあった。
……そろそろ現実に目を向けようかな。
電気では無く謎の石で照らされいるシャンデリア。
床一面には赤を基調とした金の装飾が付いた絨毯が敷かれていることから高級感を感じさせられる。
正面には数段床から高く作られている金の装飾が付いた紫を基調とした玉座。玉座の正面からは紫を基調とした金の絨毯が敷かれていた。
そして玉座から少し高い所に神聖的な雰囲気を感じられる背景に描かれている女性の壁画。
玉座には僕らを値踏みする様な視線で数を数えている豪華な服装の太った男。
豪華な服装の太った男を守る様に立っている二人の騎士らしき格好をした者。
僕らを包囲している十数人の兵士らしき者たち。
……流石に趣味で異世界モノの小説を読んでいる僕は『異世界に召喚された』って察してなんとか落ち着いてきたところでもう一つおかしなところに気づいた。
何故か僕たちと同じ中学の制服を着ているアメジスト色の瞳の黒髪で左耳の方がサイドテールのロングヘアーの少女だ。こんな少女は教室にいなかったし、時間的考えても朝のホームルームの途中だったから生徒は教室にいる筈だ。
どう考えても怪しい少女にも気づかない程にクラスメートはパニック状態だった。
このままじゃ駄目だ。
……とは言え僕一人ではどうしようも無いので僕と同じく趣味で異世界モノの小説を読んでいる輝羅に視線を向ける。
ーーそこには悲しげな表情で動揺している輝羅がいた。 僕はこんな輝羅の表情は見たことなかった。何か迷っている様にも見える。
一人の親友として何とかしてやれないだろうか? さ そう思いながら輝羅に近づこうとするとちょうど玉座で踏ん反り返っている豪華な服装の太った男が喋り出した。
「よくぞ召喚に応えてくれた。感謝するぞ勇者たちよ」
その一言で段々とクラスメートたちは冷静さを取り戻し、怪しい少女にも気づいている人たちが増えてきた。
そんな中、冷静さを失っている者が一人……。
「召喚だと! ふざけているのか? ここは何処だ! 警察を呼ぶぞ!」
啓成先生だ。
中学生の僕らが殆ど冷静なのに大人である啓成先生が冷静じゃないのはどうなのだろうか?
そう僕が思っていると啓成先生は怒り気味にスマホを出して警察(110番)に電話をかけた。
………………。
………………。
………………。
「…………クソっ! 圏外か。おいそこで踏ん反り返っているお前、ここは何処だ!」
啓成先生は明らかに偉そうにしている玉座に座る豪華な男……恐らく王様であろう人物を指差して怒鳴った。
流石に明らかな偉そうな人にそんなことしたら不味いんじゃないか?
「無礼者が! この者を牢へと入れよ!」
そんな僕の予感は的中し、非常に不味い事態になった。
生徒を導く立場の先生が捕まるってことはクラスは荒れ放題だ。
それがここで許されるかはともかくとしてだけど。
「王よ! 勇者は貴重な存在では無かったのですか?」
純白の鎧を着た騎士らしき青年の一人は不満そうにそう言った。
どうやら僕たちは勇者と呼ばれる貴重な存在らしい。
「この儂に口答えするのかライトよ?」
そしてこの騎士はライトと言うらしい。
この様子を見るにこの国(?)では絶対王政の可能性もある。
「いえっ! とんでもありません! 出過ぎた真似をして申し訳ございません!」
うん、その可能性が高いな。
「うむ、分かればよい。兵士たちよ、この者も仮にも勇者の力を持つ危険な者だ! 牢の最下層へとぶち込め!」
勇者の力……それはいわゆるチート能力というやつなのだろうか?
「「「「「はっ!」」」」」
5人程の兵士と呼ばれた者たちが本物の剣らしき鋭い武器を持って啓成先生を囲い、どこかへ……恐らく牢屋へと連れて行かれてしまったのだった。