話 1
優しく体を包み込む気持ちの良い風。さわやかなほどに透き通っている川の色。上を見上げれば涼しそうに空を飛ぶ鳥たち。 そんな中で春の桜とともに新しい生活が幕を開けようとしていた。
「おはよー、久しぶり!」
僕の周りから清々しいほどの新しい声が聞こえてくる。そんな朝だった。
そう。今日から学校生活が始まるのだ。
真面目にお勉強をして部活して沢山の青春をみんながおくる場。
つまり陽キャラだけの世界。
学校では何のとりえもなく、ただ授業をうけ部活をしないで帰る影の人々には入るスペースのない場所。楽しくなんてない人生の通過点でしかない場所だ。
とは言ったものの......
陽キャラでも学校早く終わってほしいと思っている人がほとんどだろう。
そりゃ勉強している暇があったら遊びたいって思うだろう。それは誰にだって言えることだ。
だがしかし!!学校での過ごし方が陰キャラとは大違いなのだ。
つまらないの質が違う。
陽キャラはいつもクラスで騒ぎ立ててる.....
い、いや楽しそうに話しているし、女子とも話している。そしてみんなで昼ご飯を食べて放課後は遊びに行く。
その片隅に陰キャラは一人でご飯を食べ、虚しく本を読み、陽キャラのパシリを食らうのだ。
学校生活の差が開きすぎているのだ。
これがつまらないの質の差
故に青春の差だ。
僕から言えば、楽しく話している時間があるだけで幸せだと思うべきと思うのだ。
一回で良いからこちら側の生活をしてほしいくらいだ。
陽キャラには想像絶するくらいのつまらない生活を日々送り続けている。
しかし、中には友達なんて必要ないとか思っている人も少なからずいるだろう。
けどそれはほんの一部に過ぎない。
確かにいらないよ。僕も特別仲間が欲しいわけじゃない。一人なら一人で良いという思考をもっている。
しかし問題が生じてしまう。
本が静かに読むことができないのだ。
陽キャラの楽しい楽しい声が限界を超えて面白い場面や感動する場面を帳消しされてしまい、なんとなく本を読んだorまあまあ面白かった本、みたいな感じで終わってしまうのだ。
つまりは感情が入りずらくなってしまうということ。それは陰キャラにとって命とりみたいなものなのだ。
よ~く考えてみてほしい。
陽キャラだって有名なアニメくらいなら見ている人は多いだろう。
その作品を見ている最中にわ~わ~騒ぎ立てられるのはいらだってくるだろうし、ましてや、いいシーンの時に邪魔されたらひとたまりもないだろう。
それを僕たちは毎日のように受けている。
いやそんなの知るかよ!!って思うやつがほとんどなのはわかっているけど!!
けどうるさいのは誰だってあんまりいい気分ではないだろう、何もしていなくてもうるさいのは嫌なはずなんだ。
んんん???
なにを馬鹿みたいに語っているんだ僕は??
ま、まぁとにもかくにも学校は最悪なのだ。
行きたくないのだ。
僕はその声を遮断するようにため息をつき歩行速度をあげた。しかしそんな僕を現実に引っ張り上げるようにして声をかけてきた奴がいた。
「よう!雷斗!朝からこの世の終わりみてーな顔してんな!」
このやけにニヤニヤしながら話しかけてきた男は僕の自称友達の久遠 颯
中学校の時から付きまとってくる厄介な奴(この説明だといきなり奴の印象が悪くなりそうだから一応友達ということにしておこう)だ。
「朝からテンションが高すぎるんだよ...」
久遠とは中学の時からの付き合いだ。奴は僕とは真逆で友達の幅も広く、コミュニケーション能力の高い、うるさい、つまりは陽キャというわけだ。なぜこんな奴が僕にまとわりついてくるのかはわからない。(僕は君と住んでる世界が違うのに)
「お前がテンション低すぎるだけなんだよ!このヘタレが」
「これが普通だろ、だいたいそんなテンションでいたら一日持たないでしょ、あとヘタレ発言 全世界のヘタレに謝れ」
僕こと 一ノ瀬雷斗は世界を代表するHP節ヤカーである。休みの日は基本 外には出ない。春休みだって2回しか外出していない。そのうちの1回は久遠にムリヤリ遊びに連れていかされて外に出たし、実質自分の意志で外出したのは1回しかない。だいたいは家でゲームしてるか本を読んでいる。
「まぁ雷斗は節ヤカーだもんなー」
「よくわかっているじゃないか」
そんなくだらない話をしていると周りでざわつき始めた。
それは学園一有名で一目置かれている美少女が現れたためだった。
「きたぞー学園の美少女、やっぱりかわいいな~~」
「そうだなー」
「ってなんだよその棒読みは、少しはかわいいと思わないわけ?」
かわいいといわれるとかわいいのかもしれない。しかし、今までアニメや本でしか真面目に女性というものを見てきていなかったため、どのくらいの程度でかわいいに分類するのかが分からなかった。中学時代も現在進行形でも女性とは話していないし顔もまともに合わせたことのない相手からでも良い印象は持たれていなかったから異性の人と話す機会がなかった。そもそも男でも話しかけてくれる人なんて久遠くらいしかいなかった。
「僕らには高嶺の花だよ」
僕は吐き捨てるようにしていった。
「お!また同じクラスだな!俺がいなかったらボッチ確定してたんじゃないか?」
クラスが表記されている貼り紙を見て僕の自称友達が煽りながら言ってきた。
二年生になってこの騒がしい奴と離れられると思ったのも束の間、僕はため息を大きく吐き捨てた。
「まとわりついてくんなよ、僕のボッチ&陰キャライフがどんどん浸食されていくだろ」
「ひでぇなおい!しかもなんでボッチ陰キャを誇りに思ってんだよ!」
久遠がそんなツッコミを入れているとまたもやざわつき聞こえ始めた。
「美少女もD組!?」「おいおいマジかよ!?」「俺ら運いいな!付き合いて~」
そんな男子たちの雄叫びがそこにはあった。
「まさか同じクラスになるとはな~」
久遠が少し驚いた表情で僕に語り掛けてきた。
「いたところで僕らに何か起きるのか?金が降ってくるでもあるまい、高嶺の花には変わりないだろ」
「そんな現実味のないこと言うなよ、ああいう美人さんは見ているだけで癒されるんだよ!わかるか?」
それはわからなくもない。僕にだって癒される推しのキャラクターだっているし、それは現実か二次元かが違うだけであって意味合い的には同じだろう。
「はいはい、わかった、わかった」
思っていたことは口には出さずに素っ気ない言葉を返した。
「なんだよその適当な返しは~」
久遠は僕の言葉に不服そうな顔をしていた。
「ってそんなことしてたらご本人登場したぞ」
彼女がきた瞬間、男子は当然のこと、女子までもが時間が止まったかのようにピタリと止まり一つの方向に目が自然と向いていた。
「こんな近くで見たことなかったから流石に見入っちまったなー」
美しかった。
普段、アニメや本でしか思ったことのないことが自然と頭の中に行き渡った。
他の人にはない何かを持っているような気がした。
綺麗な長い金髪で光に光ったつやつやの肌、それに見合った完璧なスタイル
誰もが羨んで目標にしていてももなんの違和感のないくらいの抜群な人だった。
この一時だけ本当にこの人は僕らと同じ3次元の人なのかと思ってしまった。
3次元なんかに2次元に匹敵する人なんていやしないと思っていたのに、今までずっと思ってきていたのにそれをまんまと一瞬で吹き飛ばされた。
普段はそんなこと思ったりはしないのに...
3次元の異性には耐性が付いていたはずなのにその壁をいとも簡単に壊してしまった。
僕は気づいた。これが学園一の美少女なのだと。
「っておい、いつまで見とれてんだよ」
僕は不意に飛んできた久遠の言葉に自分が彼女に気を取られていたことに気が付いた。
「み、見惚れてねーよ!!ただ、みんなの視線とか気になんないのかなって思っただけだ!!!」
僕は慌てて拾い集めるようにして言葉を並べた。
「これから面白くなりそうだ」
少し笑みを浮かべながら久遠がそんな言葉を発した。
面白いことなんて何も起きやしない。
この後の展開を知りもしない僕は堂々とフラグを回収した。
新しいクラスになって早速、自己紹介と席替えをすることになった。自己紹介では見事に皆から変な目で見られた。
おいおい、なんだこの皆からくる寒い視線は!!僕は言われた通りに自己紹介しただけだろう!!なのになぜこんな冷めた目で見られないといけないんだ!!
偏見だぞ!!!!!「アニメとゲームが好きです。幼馴染系やハーレム系が大好きです」って言っただけじゃねーか!!!...許されないぞ...偏見は嫌いだ!
といった気持ちを抱きながら無事に友達作りに失敗した悲しい奴のお話はそっと胸にしまっておいて......
重要なのは席替えだ。
それがまさかのまさかで美少女と隣の席になってしまった。
「一ノ瀬くん?だよね!よろしくね!」
普段ほとんど異性と話さない(というか避けられている)から話しかけられたことに素直に驚いてしまった。それにさっきの自己紹介で完全にやらかしたのになんの抵抗もなく話しかけてきたっていうこともある。
学園の美少女っていうのは大体偉そうな態度取って気取ってるやつを想像する。
漫画とかラノベとかそういったキャラが比較的多い
現実世界ではないのかと思われるかもしれないがよく考えても見てほしい
学年からチヤホヤされて鼻が伸びないやつがどこにいるだろうか?
そんなのは多分いないと思う。
だがしかし!!!
今その幻想を壊した人はいる!!!
この人もしやいい人なのでは!?これが美少女たる姿なのか!?まるで恋愛小説に出てきそうなヒロインだな
「よ、よろしくおねぎゃいします...」
緊張しすぎて噛んだーーーー!!はいお疲れさまでした!!陰キャの固有スキルがここでまた発揮されてしまった...長年陰キャの弊害が凄いわ...ああああああああ~~~...もういいです。返ってくる言葉予想できました...
出たこの展開。
ライトノベルの作品なら次の言葉はこうだ!!!
「敬語使わなくていいのに~因みに私の名前わかる~?」
おいおい!なんだと!?予想が外れた!?ありえない!
たいていの女子ならば結構な音量で「なぁにこいつキモいんですけどぉ」とかなんとかいうはずだ。それに対し美少女ときたら!!こんなこんなヘタレ陰キャにちゃんとした対応をしている!!これは革命だ!なんていい人なんだ!!こんな素晴らしい美少女がいるなんて!!流石は学園一の美少女!言葉の通りだ!
って感心しすぎた、名前?そんな学園一の美少女の名前を知らないわけないじゃないか!!!
「え、えっとー、お名前伺っても宜しいでしょうか?」
はい、すいません調子に乗りました。すいませんでした。美少女で認識していたため名前とか知りませんでした・・・
貴方のような方の名前を知りもしないなんて...ほんっとうに!!すいませんでした!!!!
「ずっと眠そうな顔してたしね(笑)私の名前は 朝宮咲奈、趣味は本を読んだり~あとはファッション!かな!」
微笑しながら楽しそうに話している彼女が僕には輝いて見えた。彼女がこんなに人気者なのはただ美少女なだけではなく、誰とでも楽しく話せて誰にでも平等に接しているところなのだろうと思った。
「そうなんだ.....ぼ、僕も本...好きです...」
「そうなんだ!!どんな本が好きなの?」
「ライトノベルっていうオタクが買う小説です......」
こんなこと言いたくない~~~~~!!!
僕は陰キャのオタクですって公開処刑してるようなもんだ!!!
誰がこんな恥ずかしいことをいうか.....!!
あぁ......とことん引かれそうだな...
「ライトノベル私も少しだけど持ってるよ!!私はミステリー小説が好きなんだ~~!一ノ瀬くんは?」
「え!あ、あぁ~...僕はラブコメが好きです.....」
ライトノベルっていう言葉も知らなさそうなくらいの陽キャなのに...!
このお方はなんて幅が広いのだろう!!
素直に驚いてしまったじゃないか!
「ラブコメが好きなんだ~~、今度おすすめ教えてね!!これを機にラブコメも好きになるかもしれないし!!」
「あ、うん...また今度......」
学園の美少女という言葉にふさわしいくらいの人だ...!!!
素晴らしいよ!
まさにライトノベルのヒロインだ!!!
「それでね......その~、一ノ瀬くん......やっぱり何でもない!忘れて!」
突然、彼女が顔を少し赤くして僕に何か言いかけた。何を言おうとしてたのかは全く分からなかったが彼女が言いかけて止めたことを聞き返すのも違う気がしたので少し気にはなったが胸に留めた。
その直後に放課後のチャイムが鳴った。
「一ノ瀬くんまた明日ねっ!」
僕に挨拶してから少し慌てた様子でクラスから出て行ってしまった。
「随分と早く帰ってったな、俺たちも帰るか」
久遠の言葉に頷いて返事を返した。
「随分と美少女さんと仲良く話してたじゃないか」
「僕からは話しかけてない、彼女から話しかけてきたんだ。それに何か言いたげだったし」
「何か言いたげだった?お前まさか朝宮さんと知り合いだったのか?」
「そんなのないよ、話したのなんて今日が初めてだ。ただ何かを言いかけて止めたってだけだ」
「ほぅ、それは気になるな~、ガキの頃会ったことあるとか?親同士が仲が良いとかないのか?」
「ガキの頃か~覚えてないな、それに親同士の関係とかよくわからない」
「そっかー、お前に一目惚れしたとか(笑)」
「そんな現実味のないこと起こるわけないだろ」
(一目惚れ?そんなのあるはずがない。美少女に限ってこんなヘタレ陰キャを選ぶわけがない、この理論はまずないな、、、、
けど、仮に昔の頃に会っていたら?親同士が仲良かったら?
もしそれが本当だったとしても、それが言いかけて止めたことと関係あるのか?昔に会っていたから?親同士が仲良かったから?この過程から何か言いたいことがあるのか?現実的に考えても「私のこと覚えてない?」とか「私たちの親同士が仲がいいの知ってた?」とか、こんな感じだろう。少なくとも僕が考えることはこんなものだ。
しかし、 重大発表します!! みたいな勢いで小恥ずかしそうに言うことなのか? 僕は彼女の気持ちや考えていることなんてわからないし、僕に対して何が言いたかったかなんて可能性のありそうなことでしか考えることができない。異性の思っていることなんてわからないし、何で怒って何で泣いてどんなことで喜ぶのかなんて人それぞれだ。
そう。結局人の気持ちなんてものは、自分自身でしかわからないのだ。簡単に人の気持ちが理解できていたら世の中は平和の塊だ。けどそうじゃない。人の気持ちは簡単には理解できないし、できてはいけないと僕は思う。だからみんな考えて、足掻いて、喧嘩しては仲直りする。きっとそれを乗り越えた人たちが友達、心友となるのだろう。)
「まぁ、本当に言いたいことならまた機会が来ると思うぜ、深く考えてもモヤモヤするだけだしな」
僕がすっかり黙り込んでしまい、考えていると察したのだろう。久遠がそんなことを口にした。
「その通りだ」
僕は素直にそう返した。確かにずっと考えていたところで答えが出てくるわけでもないし、考えたらその分だけ頭の中がモヤモヤする。そして結局わからないまま終わるっていう最悪のパターンがある。
今回のことは忘れよう。
僕は自分の胸に言い聞かせた。
「じゃあ、また明日な!」
かけてきたセリフに手をあげて返し久遠と別れた。
「ただいまー って え????」
思わず声が出てしまった。「あ!雷斗おかえり~」
久しぶりに帰ってきた母にも少しびっくりしたが、それを帳消しにするほどの衝撃とともに鳥肌が僕の体を覆ってきた。
母の隣に学園一の美少女 朝宮咲奈が立っていたのだから。
「雷斗には言い忘れてたんだけど~咲奈ちゃんの両親も忙しくて家に帰れないのよ~やっぱり女の子一人で生活するのも親としては心配でしょ~?だから~家で引き受けることになりました~!」
僕は頭が真っ白になった。
「え?E?e? ちょっと待ってくれよ!?急にそんなこと言われても!?」
「まぁまぁ慣れればどうってことないわよ~」
「どうってことあるでしょ!?そもそも朝宮さんはOKしたの?男と一つ屋根の下で一緒に暮らすことになるんだよ!?」
「一ノ瀬くんはそんなことしないって思ったから...」
「何を根拠にいってるんだー!!!!!!!」
朝宮さん...どうしちゃったの???僕の知ってる朝宮さんじゃないですよ?ほんとにどうなってんのこの状況???どうか正気に戻ってください!!!
「じゃ!そゆことで~仲良くしてね~、母さん仕事に戻らないといけないから~またね~」
などとふざけたことを言い、ソソクサと家を出て行った。
「一ノ瀬くんごめんね...驚かしちゃって...これからよろしくお願いします。」
「よろしく...お願い...します」
僕は脳死で言葉を並べた。
こうして雷斗と学園一の美少女 朝宮咲奈との同居生活がスタートした。
話 2
悲劇が起こったあの日...何もかもが真っ白になった
あまりにも衝撃的なことだったため、ディフォルトでついていた耐性も限界を超えて破られてしまった。まさかこんなことになるなんて考えてもいなかったのだから。
(ちょっと待ってくれ!何が起こっているんだ??これは夢なのか???...いや違う...どうなってるんだ俺の人生!!!!!親同士の仲がいいとか昔に会ったことあるとかそんな次元の話じゃなかった!!同居?いやむりむりむりむり!!相手はあの学園一の美少女だぞ!?そんなの心臓持たないだろ!!ただでさえ女性となんかまともに話したことなんてないんだぞ!?そんな状態でさらに学園一の美少女と命名されている人と屋根の下で暮らすとかシャレになんないだろーーーー!!!!!!!それに学校の人達にバレたら何されるかわからない!!!だいたいなんで朝宮さんも承諾しているんだ...男と二人で暮らすんだよ!?し・か・もついさっき学校で初めて話したばっかの人だよ...???少しは女の子として警戒したほうがいいと思うんだけど...)
「はぁ......これからどうすればいいんだ......」
僕はこれでもかといわんばかりのため息を吐いた。
「これからのことは二人で話し合って決めていけばいいよ!もう夕方だし夕ご飯作らないとっ!一ノ瀬くんは何か食べたいものとかある?」
華のある爽やかな口調で聞いてきたんので驚いた。
この人はポジティブ思考100%なのか?なんでこんなに元気でいられるんだ... まぁ元気ならそれでいいんだけどさ。
「何でもいいよ」
「あ~~!何でもいいは一番困る返答なんだよ~~~!!」
僕の返した言葉に彼女は少し頬を膨らませて言ってきた。
「ごめん、じゃ、じゃあカレーはどう?すぐできるしこれからのことは早く決めといたほうがいいし!」
「それもそうだね!じゃあ今日はカレーにしよっか!」
こんな会話をしたとき本当に同居生活が始まるんだなと改めて実感した。
今日の夕ご飯が決まり、早速取り掛かろうとしたらカレールーがないということに気づき僕たちは近くのスーパーに行く羽目になった。
「カレーに決まったのはいいけど肝心のカレールーがなかったとはね~(笑)」
「ま、まぁスーパー近いしすぐ買って帰ろう」
「そうだね!」
いつもは一人で行っているスーパーに美少女と一緒に行くということが凄く新鮮だ。誰かと行くと少し新しく感じる気がしてくる。
「あった!これを買ってと。あと何か買いたいものとかある?」
「果物とか買ってく?」
「果物!!買う~~~~!!」
急に子供のように嬉しそうに目を輝かせた。きっと果物が好きなのだろう
僕たちは果物を買うことにした。
「何にする~?たくさんあるよ~~!」
「朝宮さんの好きなものでいいよ、僕はなんでもいいから」
「いいの!!じゃあイチゴ!!イチゴ食べたい!!」
「ならイチゴも買って帰ろうか」
「うん!」
満面な笑みを浮かべる彼女に少しドキッとしてしまった。
100%僕に対して打ち解けていることはないだろうが、そう思えるほど彼女は僕に歩み寄ってきてくれていると思った。緊張しているのがばれているのかと疑うくらいに。
僕たちは会計を終えスーパーからでようとした。 しかし、またスーパーに入った。
「ヤバいヤバいヤバいヤバい!!!なんで久遠がここにいるんだよ!?こんなとこ見られたらなんて冷やかされるか...」
「何を冷やかされるの?何か理由でもあるの??」
「大ありだよ!!二人きりのとこなんか見られたら同居もバレるかもしれないんだよ!?僕と久遠は一応友達の設定だし、家が近いから周りに住んでる人ぐらいわかってる。だから嘘ついたところで確実にバレる!!」
「同居がバレちゃうのはマズそうだね...けど友達なら言いふらすことはないんじゃないかな?」
「かといってバラすのもリスクあるよ!ちゃんとした友達じゃないし!!友達っていう設定だからさっ!」
「そんなひどいこと言っちゃだめだよ、久遠くん泣いちゃうよ?」
「あんな奴は勝手に泣いててくれ!!」
「雷斗君、俺悲しいよ~泣」
男の声がした。聞き覚えのある声。嫌な予感がした。
「は?はああああああああああああああ!!!」
しまった!!!話しているのに精一杯で奴を見ていなかった!!なんてことをしてしまったんだ...一番バレてはいけないやつに一番最初にバレるなんて...
しかも朝宮さん僕の気を引いてたし...この人達は心が通じ合ってるのか?
陽の固有スキルなのかこれは...なんて人たちだ...
「雷斗さては知り合いということを隠していたな?どうも初めまして雷斗の友人で同じクラスの久遠 颯です。よろしく!」
「久遠くんよろしくね~!」
挨拶しただけで仲がよさそうに見えるのは気のせいだろうか。これもまた陽キャラの固有スキルなのだろうか。本当に陽の人達はすごいなと思う。僕には到底不可能だ。
「二人はどうしてここに?」
「た、たまたま会って少し話をしていたんだ...」
「たまたま会って話す?そんなことお前がするわけないだろ」
「ひでーなおい!そういう時だってあるんだよ!」
「言い訳はよしてくれよ...見苦しいぞ」
「言ってくれるじゃねーか!!!」
「ふふっ(笑)」
僕らがくだらない言い争いをしていると不意に彼女が微笑した
「仲がいいんだね!!お二人は」
「なんでこの光景みてそんなことが言えるんだ...」
「だろ?俺たちは永遠の心友だからな!!(笑)」
「なんで友達から心友に代わってんだよ!!!」
くだらないことをまたしている僕らに彼女もまたクスッと笑っていた。
「じゃあ俺行くわ!また明日学校でな!」
「じゃあな」「また明日!」
そんなこんなでようやくスーパーから出たのだった。
夕ご飯とお風呂を済ませ僕は自分の部屋に戻った。
「あーーーーーーー落ち着くなー自分の部屋は、今日はいろいろありすぎて疲れたなー、久遠にもとりあえずは同居してることはバレてないしよかった。あとはこれからどうするかだなー、結局今後のこと話せなかったし、まぁ急ぐものでもないからいいけど...早く決めといたほうがいいに越したことはないけどな~」
今までは親が仕事で忙しく一人でほとんど生活してきた。だから自分のやりたいようにやっていたけど今後は家庭内のルールとかも決めないといけなくなるだろう。その他もろもろ決めるとしても少しでも早く決めておいたほうがいい。
僕は彼女のもとへ向かうことにした。
「朝宮さんちょっといいかな?...返事がない」
僕はゆっくりとドアを開けた。
「寝ている、疲れているのは僕だけじゃないからな。朝宮さんも生活が急に変わって、使わなくていい体力を使うことになったんだ。疲れないはずがないか...また明日決めればいいしね、おやすみ」
僕は言葉を付け加えてドアをそっと閉じ、自分も眠りについた。
翌日の朝 僕はいつも通りの時間に起きた。リビングに行くとそこには見慣れない姿があった。
「おはよう~もう少しでご飯できるから座ってて~」
「おはよう、そんな朝早くに起きてわざわざ作らなくていいのに、大変だよ」
「朝ごはんは大事だよ!おなかが空いたら勉強内容も頭に入らないよ~?あと大変じゃないよ、お母さんが家に来れないときとか自分で作ってたから!一ノ瀬くんは気にせず食べてください!」
そんなことを言いながら僕にできた朝食をもってきてくれた。
「まぁ朝宮さんがいいならいいけど...いただきます...うん、おいしいよ」
「ほんと!?初めて作ったから不安だったけどよかったー!...うん!おいし~」
朝ごはんを誰かと食べるのは新鮮だ。しかもまさか朝宮さんと食べているなんてもっと新鮮だ。なんかすごいな、本当に人生何が起こるかわからない。それをいま常に感じている。 それに朝宮さんだと普通に会話ができている。これに関してはよくわからないけど何か安心するところがある。とりあえずはうまくやっていけそうな気がする。
「ごちそうさまでした。」
「ごちそうさまでした。」
いつもとは違う新鮮な朝ごはんは二人の言葉で幕を閉じた。
登校する時間になった。
「朝宮さんがでてから少したったらでるよ」
「わかった。じゃあお先に~」
時間差で登校することになった。学校の人達にこんなことがバレたら大変なことになる。それをさけるための対策というわけだ。久遠や朝宮さんの友達にもバレるのは避けたい。
これからはただ適当に学校生活を送ることは難しくなるだろう。頭の隅には今ある現状をしまっておかなくちゃいけない。ぼろが出てしまったら朝宮さんに迷惑がかかってしまう。そんなことは絶対に避けないといけないことだ。
僕は気持ちを引き締めて家を後にした。
朝宮咲奈
思いもしない出来事だった。
お母さんに雷斗くんと一緒に住むことになったといわれたときにびっくりしてしまった。けど不思議といやな気持ちにはならなかった。だって雷斗くんだもん...!
雷斗くんとは幼い頃、一緒に遊んでいたことがある。彼はきっと覚えていないとおもう。だから話しているときは名前ではなく名字で話している。ほんとは名前で呼びたい。けどなかなか勇気が出せない。昔みたいに楽しく話したり遊びたい。雷斗くんは昔と違って静かで不愛想になっていたことに少し驚いてしまったけどきっと距離を縮めることができたらまたあの頃のように...
あの時の約束を...!!
頑張る...!!
学校も終わってみんなが下校し始めた。
「ねぇ咲奈~今日隣の一ノ瀬くんだっけ?とたくさん話してたけど知り合いなの??」
「まぁそんなとこかな~」
「なにそれ~そんな曖昧な関係なの?」
「昔、一緒に遊んでたことがあるんだ~、けど一ノ瀬くんのほうは覚えていないみたいだけど」
「そういうことか~」
「また仲良くなって付き合いたいと?青春してるね~!!」
「なんでそうなるのっっ!!」
「慌て過ぎだってー(笑)冗談だよ」
「もぉからかわないでよ~~!!」
からかうことが好きな私の友達 雪野 紅葉は中学校からの付き合い。たくさんからかってくるけど私が悩んでいるときや落ち込んでいるときは真剣に向き合ってくれる優しい人だ。
「からかいたくなっちゃうんだもーん!それに引っかかる咲奈がいけないっ」
「うぅ...」
「頑張ってね!ぐいぐい行くんだよ!!私こっちだからまた明日ね!!」
彼女の元気さにはいつも驚く。どんなことでも明るくみんなに接している。逆に元気じゃないときは見たことがない。そんな彼女の元気さに何回か救われた時がある。それが彼女 紅葉の良いところなのだ。
「う、うん!また明日」
紅葉の笑顔を前に私も笑って返した。
一ノ瀬雷斗
とりあえず何事もなく学校を終えることができた。朝宮さんがやけにたくさんしゃべりかけてきて周りの男子たちからの視線に威圧を感じたが何とかなった。これが毎日続くとなると身が持たない気がするが仕方がない。こんな陰キャと学園の美少女が話しているのだから。
「ばれないようにしないとな~」
くどいようだが頭から離れない。ぼろが出たらほんとにおわりだ。僕の高校生活終わりとおもっていいくらいだ。
ピンポーン
家のインターホンが鳴った。
僕は階段をおり玄関に向かった。ドアを開けると久遠が立っていた。
「お前か、何か用か?」
「わりー、お前今日の課題やったか?やってねーならコピーしてくれないか?学校に忘れてきちまってよー」
「わかった。玄関で待っていてくれ」
「サンキュー!」
「ほれ。借りな」
「わかってるよ...ところでこの靴なんだ?車ないし親ではないだろ?高校生っぽいかわいい靴だしな 誰か来てんのか?」
しまった!!!!!!!!!
最大のやらかしを今ここでしでかしてしまった!!!家に上がらせるのはまずいと思って玄関にいてもらったが靴まで配慮していなかった!
バレないようにとか数分前まで考えていたんのに余裕でやらかしちゃってるんですけど!?!? 何とか言わないと!!
「えっと......俺の靴?」
「なわけねーだろ!!!こんな女もんの靴履いてたら俺がとっくに捨ててるわ!もう白状しとけ?なんも言わねーからよ」
息を呑んだ
ごめん!!朝宮さん!あとから怒られよう...
「どうしたの?一ノ瀬くん?って久遠くん!?」
「あ」「あ」
同時にこの一文字の言葉が口に出た。
「えええええええええええ!!!!......どうなってんの...?なんで朝宮さんが雷斗の家に?」
「えーっと......私たち最近同居することになったの」
久遠が唖然としている。
それは無理もない。関わることのないであろう真逆の二人が同居しているのだから。
「親同士が家に帰ってこれないからこうなりました......頼む!!誰にも言わないでくれ!こんなのが学校で広まったら取り返しのつかないことになる!コピーした借りはこれでチャラでいい!!ほんとに頼む!!」
「状況は分かった。だがコピーの借りだけでは釣り合わないだろ?だから今週の土日泊まりに来るわ!君らに拒否権はないだろ?」
「......わかった。」
「よし!決まりだな!ってことでまた明日な~」
陽気な声を出して笑って帰っていった。
「ごめん朝宮さん!!僕の意識の甘さでこんなことになってしまった!!」
「仕方がないよ!久遠くんもあの感じじゃ言わないと思うし!知られたのが友達でよかったって考えたほうがいいよ!ほかの人にバレるよりかは全然いいよ!」
なんて優しい人なんだろう。もうこの人は怒ったこと一回もないんじゃないか?僕らにとっては一番やってはいけないことだったのに。それを怒りもせずにポジティブに返してきてくれた。
「そうだね。ありがとう、もっと気を付けるよ」
「お泊りか~、久しぶりだな~~、あ!久遠くんが止まりに来る日どっか遊びに行こうよ!」
「いいけど、朝宮さん女子一人だけどいいの?僕のせいでバレてしまったんだ。朝宮さんの友達一人にこのことを言って一緒に泊まるっていうのもいいよ。女の子一人ってのはいろいろ気まずいところあるだろうし」
「そうだね~じゃあ私も一人誘ってみるね!」
「了解」
「さあごはんにしよっか!」
こうして早くも同居がバレてしまった。そんな思いがけない悲劇がおきても僕らは切り抜けないといけない。そんなことを胸に抱き夕飯の支度にとりかかったのだった。
つづく
話 3
いやつに一番最初にバレてしまった。久遠 颯という男だ。
誰にも言わないことを約束して、それの等価交換が家に泊まるということだ。その日はどこか遊びに行くことになった。いろいろ話すこともあるだろうというわけでレインのグループを作ることになった。
久遠「どこに行く?というか朝宮さんの誘ったひとは来れるって?」
咲奈「まだ返信きてないんだ~、OK来たらこのグループに入れとくね!」
雷斗「了解」
友達とお泊りをするというのは初めてのことなのでどんなものなのか少し気になる。学校の行事で行った自然教室や修学旅行とはまた違う感じだろう。しかも男女で泊まるとなると変な感じだ。
案外嫌ではない、知ってる人といるだけで楽しさが違うだろう、修学旅行とかなんか人数合わせでグループ入らされてたから正直全く楽しくなかった。それに比べたら10倍は楽しめそうな気がする。
そして同じ家に住んでいる人とこうして携帯で話すのはとても変な感じがする。
「一ノ瀬くーん、私が誘った友達来れるって!」
「お、よかった」
来れないって言われたらどうしようって思ったが来れるならよかった。
グループに早速入れて今後のことについて話し合うことになった。
「げ...お前が来るとはな...」
「あんたこそなんでここにいるの...!ほんっと最悪!」
「俺が主催者だぞ?いて当然だろ、というか感謝しろよ」
「あっそ...」
グループが一分もしないうちに修羅場と化していた。
この人たち知り合いだったの?それにすっごい仲悪いんですけど...
これは大丈夫なんですかね...今もの凄く話しずらいんですけど...
なにこのスマホ越しで感じられで来る威圧は......
「...」
久遠「悪い、取り乱した。とりあえずどこ行こうか?」
えええ!!!なんも差しさわりもなく普通に話しかけて来てる!こいつ相当メンタル強いな!まぁいいや...変な空気になるよりは(僕からしたらもうなってるけど)
紅葉「雷斗くんよろしくね~!」
いやこの人も何もなかったかのようにふるまってるんですけど!?!?
久遠のやつといいメンタルが強いな...強いというより気にしてないなこれ...
雷斗「紅葉さんよろしく」
「行くところは任せる、俺には楽しい場所とか行ったことほとんどないから分からない」
咲奈「一緒にお買い物とかどう??服とかいろいろ!!」
紅葉「それいいね!お揃いにしよ!」
久遠「案外楽しいかもな、決まりだな!そうだ、俺は”雷斗”オシャレ計画”を実行しよう!なんか楽しそうだしな」
雷斗「おい、それはいつも着てる服がダサいといってるように聞こえるんだが...それに楽しむって...」
久遠「まぁそうだな、ダセェな、まぁ俺がオシャレしてやるから!」
こいつ...ふざけてるな、別に服なんか着れているだけでいいんだ。
まずオシャレってなんだ??何を着たらオシャレなのかが分からん。それに正論をかますと外に出ない。そんな奴がオシャレしたところでねぇ......くそが!!
久遠「外に出るように1セットくらいは持っといたほうがいい、そんなダサい服で歩いてたらモテねーぞ」
雷斗「別にモテなくていいんだが...けどまぁ1セットくらいは買ってもいいか」
咲奈「じゃあ!土曜日ね!」
皆楽しみにしているのならよかった。僕もなんだかんだで少し楽しみにしている。久しぶりに楽しいイベントがあるな。しかも外出する。楽しみなんてのはゲームのイベントでしか味わったことがなかったからなんか変な感じがする。僕には外で何かをするというのは向いていないが、たまにはいいじゃないか、陽キャの楽しみ方というのを実感しようじゃないか。
僕は明日に向けての支度を始めた。
つづく