1

山の天気は変わりやすい。

 寝ぼけた頭で昨夜、夜更かしして読んだ本に書いて言葉がふと頭に浮かんだ。

 「特にこれからの夏場は山の天気の変動が激しいので注意してくださいね」  

大学の一限開始まで後30分。  

自宅から大学まで約1時間。  

遅刻が確定しもう吹っ切れた俺は朝食のパンを齧りながらテレビを見ていると朝の顔と呼ばれてる天気予報士のお姉さんが点と点を結ぶように言った。  

ーーーーーー

 「どうして、人は争ってしまうのでしょうね」  少女はとある世界を見ながら唐突にそんなことを言ってきた。

「そんなの俺に聞かれても」

 「同じ《《元人間》》でしょ。ちょっとは勉強してきたんじゃないんですか?」

 「それを言ったら――だって」

「わ、私はモデルやってたから仕方ないのですよ」

「はいはい。俺が考えるにその理由は数え切れない程無数に存在して星の数よりも多い気がするよ。例えば三人に林檎を1つ与えたらそれを3つにしたがる者、独占したい者、遠慮する者に別れてしまう生き物だ」

「確かに。中学の時は大体その3つに別れてたかも」  

少女は頷き肯定する。

「ただの平民が林檎で争ってるだけなら大事にはならない。が、物が変わり土地や富その権利が国に与えられ、国のトップが争いだしたらもう止められない。戦争が始まってしまう。出身地や肌の色だけでも争いを産める生物だから極自然な現象と言っても過言では無いと思うけどな」

 「ふむふむ。つまり?」

「その理由を突き止めるのは無理だ」

 「随分と釈然としない終わり方をしましたね」 「仕方ないだろ。俺は大学で文学部を先行してきたんだから知るか」

「文学部なら分かりそうなものですが……そうですよね。陰キャには無理ですよね」  

少女は仲のいい友達にする様な煽りの笑みで言った。

「陰キャは関係ないから!」

 「でも、今の姿は輝いて見えますよ」

「それはこの輪っかのお陰だろ!?」

 頭の上に浮いている輪っかを指さす。

「そうですね」  

少女はフォローする所かクスクスと笑った。

  青年は「はあ」と1つため息を付くと言った。 「けど、世界を救えるのに救わないのは違うよな」

「それもそうですね。ですが規約があるらしいので仕方が無いかもしれないですね」

  少女は自分に言い聞かせるように言った。

    ーーーーーー  

渋谷〜渋谷 「はぁッ!」  聞きなれた音声アナウンスによって意識が覚醒し、急いで席を立ち上がりホームに降りた。

  いつの間に俺は電車に乗っていたんだ?

 てかなんだったんだろ。あの夢は。

 気がついた頃には電車の車内に座っていた。  本当に天気予報士のお姉さんから今に至るまでの記憶が夢に忘れられていた。  

 当然の如く間に合わなかった一限の補習プリントを受け取りと人のほとんど居ない講義室に入りボーッとプリントと睨めっこを始めた。

 「よっ!おつかれさん」

「うわあああ!」

「うへへへ。そんなに驚いてくれるとはこっちも脅かしがいってのがあるもんだぜ」

 「もうなんだよ。お前かよ」

 「そうです!俺でした!……どうしたんユウマ?なんだか顔色死んでるけど」

  ユウマ―佐藤 優馬《《さとう ゆうま》》。

極一般的な一般人。20歳。ちょっと茶色がかった黒髪に黒目で特技なし、趣味アニメ鑑賞、平凡な見た目に特に身体的特徴も無い凡人だ。

 顔をまじまじと見るとそんなことを言死んでるのはほっておいて欲しい。

 「そうかもな。どっかの誰かさんに脅かされたせいで心臓が止まって血液が回らなくなったせいかもな」

「マ・ジ・カ!?AED取ってくるわ!」

  そう言って講義室を飛び出して行ったあのバカは更科 海斗《さらしな かいと》  19歳。

 馬鹿でノリが良く俺の数少ない友人の一人で親友。凡人の俺とは正反対で、スポーツ万能、容姿端麗のバリバリの陽キャキャラだ。

 アッシュの茶髪も似合っていてお洒落さんのイケイケ大学生だ。

  「しかし、本当に取ってくるとはお前本当に馬鹿だな」

「いや、だってお前が心臓止まったとか言うから」

「もうお前の前で冗談は言わないわ」

 「え!?それは流石につまんないわ」

 「3時間だぞ!3時間!」

「?」

「?を口に出して言うな!ぶりっ子キャラか!説教された時間だよ!この歳になってあんなに教授に怒られるとは思わなかった……」

  大学を出た頃には日は暮れスマートフォンのホーム画面には18時45分と書かれていた。

 「そう落ち込むなって。だったらお詫びにそこのファミレスでご飯食べてくか?」

「落ち込んではないが、ぼっちで食べても寂しいし、食べるか」

  そう言って、帰り道駅前のファミレスに入った。

 「そういえばさ、この前婆ちゃんから山登りの道具が届いたんだよ。頼まれてたやつって言われて」

  某有名空ラークグループのイタリアンレストランでパスタとピザをシェアして食べていると、海斗がヒョンとそんなことを言った。  

ちなみに2人ともイタリア料理が1番好きである。

 「山登りの道具?登るのか?」

 「いーや」

  海斗はだるそうに否定した。

 「ならなんで送って貰ったんだ?」

「それが覚えてないんだよ。てか頼んだ記憶すらない」

 「酔ってたとか?」

「まだピチピチの19歳だっつうの」

 「お婆ちゃんの勘違いとか」

 「それは……ある」

 「あるんかい。ならそれじゃないか?」

  思わずツッコンでしまった。

 「最近ボケてきてるのかな。結構歳いってるし」  俺は一気にアイスティーを啜った。

 「話は戻るんだけどさ、夏の山登りのシーズンが終わるまで――」

 「い、や、だ」  俺は話を割って断った。

 この後の展開は目に見えていた。

「まだ言い終わってないしお願いしますから」 「そのまま送り返せばいいじゃんかよ」

「それがさこんな手紙が一緒に入ってて」

 海斗は鞄から一通の封筒を取り出し中の手紙を開いた。  

そこには、急に山登りの道具を送ってくれなんて言うから驚いて何事かと思ったけど、何とかAmazon?を教えて貰って新品を買って送れました。  カイちゃん偶には顔見せにおいでね。  《《友達との写真》》待ってます。  とある。

 「つまり、新品で綺麗な状態だからそのまま送り返す訳にも行かないと」

「うん。それに俺の部屋って結構狭いじゃん?結構スペース取ってて、玄関に置いとくと毎回入る時に倒れてきてうざったいのよ」

 「俺の部屋もそんなに広くないだろ、だったらあのガラクタの山を捨てれば良いだろ」

  俺と海斗の家はかなり近い。

  同じ最寄り駅を利用しているが海斗は駅からの距離を取った結果、部屋が狭くよくこういったお願いをしてくる。

 「ガラクタだと……!?ゲームはパッケージとカセットがあるからこそ良いんだよ」

 「どう見てもガラクタにしか見えないけど、今はダウンロード版とかある訳だしそっちに買い替えたらどうだ?そしたら部屋も広くなるぞ」

 「凡人から見たら分からないかもしれないがどれも1級品。捨てるなんて到底出来ない」

  品行方正、容姿端麗を地で行くと言われ高校時代は風紀委員会に属し真面目振ってた男が今ではこのオタク具合だ。

 「じゃーあ、どうするんだよ」

「うーん……うーん……」  

約10秒唸って出た答えは、 「一緒に山登ってれ」  

ーーーーーー  

ファミレスを後にし信号待ちをしていると駅前の電光掲示板から流れていた音楽が止み、緊急ニュースがながれた。

 「速報です。本日の18時頃《《再び》》人が突如として消える事件が発生した模様です。

人気若手女優の霧山サイレンさんや国際映画祭の為来日していたアメリカの俳優アーロン·ビターさんも併せ合計15人目になります。

未だ犯人、原因は共に不明だとの事なので国民の皆様十分ご注意ください」

 「へー。怖いねぇ」

「人が消えるのは怖いけど俺達には関係無いだろ」

「確かにな」

 青信号になりこの話は打ち切られた。

 ーーーーー

 「折角の日曜になんで…こんな足場の悪い急斜面なんか登らなきゃ行けないんだろうな」

 「それは俺も聞きたい。けど、嘆いても足は進まない。とりあえず頂上行って写真撮るぞ」

  俺と海斗は本当に山登りに来ていた。

 レポートを写させてくれるという条件付きだ。 「おい、山だ。山が見えたぞ。ヤッホー」

  登山道で少し開放的なスペースに付くと海斗は声を上げた。

  普段なら「ここも山だろ」とツッコミを入れていたが、その圧倒的な景色を目にそんな野暮は消え、気づいたら俺も「ヤッホー」と海斗にならっていた。  

ーーーーーー

 「あの世界なにか起きてる」

  顔の見えない少女が水の畔を覗き指さし言った。

 「ふーん。……ほんとだ。アレは悪魔か?いや、人間か?どっちだ?」

 「多分、悪魔を精霊分解して身に宿したヒューマンデーモン」

 「よく分かるな」

 「あの世界は私と貴方の2人の家系が担当の世界。最低限の勉強はすべき」

 「はいはい。あの私は元モデルだから〜見たいなのはもう見れないのね。……そんな事より、アレは流石に不味くないか!?」

「ですね……相当量の魔力と精霊たちが吸い込まれていってる」

「アレは……赤子か!?それも相当な負と邪悪なオーラを放っている」

「アレを放っておいたらあの世界はどうなりますか?」

 「確実に100%断言出来る。世界―いや星そのそもそもが消えるね」

  ーーーーーー

 「はあっ、、!」

「よ、目覚めたか?」

「俺は一体どれだけ眠ったんだ?それよりここは……」  

少し身体が重いし足腰が痛い。

 「5分くらいじゃないか?疲れたから一瞬横になるって言ったらすぐ眠ってた」

「そ、そうか。ありがとう。もう行けるよ」

 またあの夢を見た。

 夢と夢が繋がった気もするしその前後の記憶がまた完全に無かった。  

なんなんだ。あの夢は。  

疑問に思ったが、これ以上待たせる訳には行かないので足を進めた。

 「そこのお二人さん!今日はもう引き返した方がいい。もうすぐここは豪雨になるぞ。生きて帰りたかったら今すぐ引き返な」  

山頂まであと少しと言った所で、上から降りて来たおじさんはこんな事を言って、返事を聞くまもなく足速に去っていった。

 「どうするよ海斗」

 「山頂まで5分あれば着くしそこで写真撮ったら帰ろうぜ」

 「そうだな」  

俺達はおじさんの注意を大して聞かずに山頂をめざした。

 「なーんだ。まだ結構人居るじゃん」

  俺たちが登っている山は人気の山で休日なのでかなりの数の人が居た。

 「ほんとだ。まあいい、とっととやること終わらせちまおうぜ」

 「そうだな。此処でいいか。ハイチーズ」

  写真の確認をし、カメラをバックパックにしまうと、先ほどまでの青空は黒みがかった雨雲に覆われていた。

 「ほんとに、これは急いだ方が良いかもな」

 「かもな。けどあの混み具合だ」

 俺が指さした方向には来た道にごった返す人の山ができていた。

 「まじかよ…おいおい、もう降ってきたぞ」

「混んでは居るがとりあえずあっちに行くぞ」 「わかっ――」  

忽然と姿を消した海斗。  

心霊現象か何かのドッキリか。

はたまた目の錯覚か。

 自分を疑い目を擦り360度回し辺りを見渡すがどこにも居ない。  

その直後、戦鎚が落ちたような地鳴りが地中から込み上げて立っていられない程に山を揺らした。  ポツポツと降っていた雨は、既に豪雨となり地鳴りが弱くなり、立ち上がると雷雨に変わった。  雷神は怒り狂ったように辺りに雷を撒き散らすように落とし、山を焼いていく。

 どう考えても異常気象だ。

 異常気象って言葉だけで片付けて良いのかすら分からない。  

まるで魔法のある世界で戦争が起きたらこうなるのだろうと思わせてしまうこの戦場とも言える場所に尻もちを付くと、不思議な感覚に襲われた。  目の前を刹那の速度で駆け抜けた光の柱は胸に直撃した。

 あまりの出来事に漠然としていると落雷の爆音が轟くと同時に身体が宙を舞った。

 意識が朦朧とする中標高約800mの山頂から山の斜面へ投げ飛ばされた。

  ーーーーーーーー

 「父上!考え直してください!俺達が今この支援をやめたらあの世界は大変な事になりますよ!」  父上と呼ばれる男は激昂した様子で青年の襟元を掴みあげていた。

「そんなこと知った事か。人類なんて争ってこそなんぼだろ」

 「ンだと?くそオヤジ!テメェそれでも本当に神様やってるのか?自覚持って生きろよ」

父上の言葉に怒った少年は尊敬心の欠片もない掃き溜めの様な言葉を使った。

 「何だと貴様!?偉大なる親に対して何たる無礼な」

「違います!」

 醜い親子喧嘩に割り込んだのは一人の少女。  少女は水の畔に手を翳しながら話した。

 「この子は私が操ってます。処罰の対象ならこの私だけが」  

割り込んだ少女の苦しい言い訳は聞き通るはずもなく耳にすら届かなかった。

 「何を言っているこの戯けが!それに目上の人と話しているというのに未だ魔法を下界に送り続けるとは……!」

 「何を言ってるんだ俺達は一緒にやってた。そうだろ?」

 「もういい……!戯言は辞めだ。

そんなにその世界が好きならとっとと言ってしまえこのウジ虫共が」

  激昂した男は少女を水の畔に投げ捨て、続けて青年も投げ入れた。

 まるでなんの感情も抱かずゴミを捨てるように投げ入れた。

「チッ…。350年程かあのウジ虫どもがあのクソみたいな世界を支援していたのは。まあ良いか。規約違反を理由に目障りな奴を消すことが出来たしな」  

 ーーーーーーーー  

長い夢を見ている気分で俺は死んだ。

2

何分いや何時間ここで眠ったのだろう。  …………っう!いってて。  

力が入らない。自分の体が重すぎて立ち上がらない。体の節々が痛すぎる。頭が割れるように痛い。目が開かない。開けようとしても目眩が酷い。  

なんだこの陽気な音楽は。 「_″_″″″_」何語で話してるんだ?てかうるさいぞ。  

大音量の音楽は寝起きには辛い。

 けどそのお陰かだんだんと意識が覚醒し目を開く。  

そこにはどー見てもドワーフとエルフらしき人がこっちを覗いていた。

「おい!大丈夫か」

 ……あれ。言葉が分かるようになってる。

 「手を貸してやるからほら立ちな」

「え、あ……ありがとうございます」

  ドワーフの大きな手を握り重い体を持ち上げてもらい久しぶりに立ち上がった。  

グラッと立ちくらみ顔に手を当てる。

 そんな俺を見てドワーフが質問をする。

「あんちゃん何やってたの喧嘩かい?」

 「いえ、そんな物騒なことは特に」

「じゃあなんで……いややっぱ聞くのはやめだ。男には言いたくないこともあるだろうし」

 屈強なドワーフとエルフのお姉さんはうんうんと頷いた。  

「……は、はぁ」

 「お兄さんこれ。少ないけど、1日くらいはご飯も宿も泊まれるから好きに使ってね」  

手に銀の硬貨が5枚ほど握らす。

 「え、いや良いですよそんなの。こんな見ず知らずの人に」

「別に大丈夫よ。困った時はお互い様。それじゃあね」  

押し切られる形で受け取るとドワーフとエルフは立ち去った。  

改めて周りを見渡すがここがどこなのか全く検討もつかない。  

情報を処理したくてもしきれねぇ。周りの視線を感じるし体が痛い。

 ……金があるならここはとりあえず宿に行くべきか。  

日本語じゃない言語の文字でホテルと書かれていた看板を置いてる店に入る。

色々調べてからホテルとかは決めたかったが今そんな余裕俺はにはない。

「すいません。1泊分お願いします」

「宿代のみ2500バイツね」

 手持ちは5枚の硬貨のみ。  

これが幾ら分の価値があるのか全く分からないのでとりあえず全部差し出してみる。

 「ほらお釣りの500バイツとこれは要らんよ」  そう言われて2枚の硬貨は返却されお釣りとして500バイツと言う硬貨を貰った。

「部屋は12番ね」

「分かりました」  

シングルベット1個に事務机と椅子のシンプルで簡素な作りの部屋。  

広げる荷物もないのでとりあえずベットに横になる。

 ポッケットに手を入れ硬貨を1枚取り出す。

 この銀貨は約1000円と考えても良さそうな気がするな。

  綺麗に掘られた柄をランタンの火に照らすとより鮮明に輝いて見えた。

  ベットから起き上がりとりあえず状況の整理だ。

 荷物は財布と着替えのジャージのみ。

  とっとと家に帰りたいがここが日本ではないのは確かだし、そもそもドワーフとエルフがいた時点で地球なのかすら怪しい。  

夢オチ……ないだろうかそれに期待したい。

 ……考えても仕方ない。

とりあえず寝るか。

  次の日  

目が覚めても現実は変わらずだった。

 頬を抓ってみるがちゃんと痛い。  

廊下の突き当たりにある共同トイレで尿を足し今日の予定をかんがえる。  

……とりあえず情報が欲しい。警察か。

それとも昨日のドワーフとエルフを探し出すか。 「きゃっ……ご、ごめんない」

「あ、いやこちらこそ」

 トイレを出て部屋に向かう途中前を見ずに考え込んでいると人にぶつかった。

 目の前に居る少女は思わず見惚れる黒目にサラサラの黒髪のボブヘアーでローブを身に纏っている。

 異世界で魔法使いと呼ばれていそうな格好のアジア系の日本人っぽい顔だ。 どこか見覚えがあり思い出せない感情がすごくもどかしい。

  そんなことを考えていると、少女は小首を傾げるとこう言った。

 「あの失礼かもですがもしかして日本人……ですか?」

 「そ、そうですがあなたも?」  

相手から聞いてくれるとは!これは絶好のチャンス。

 「すいませんが話を聞いて貰ってもいいですか!」

 「はい構いませんよ」

 「ありがとうございます!早速なんですがここってどこか分かりませんか?昨日目が覚めたらここ近くの広場で目が覚めていきなりドワーフとエルフが目の前にいるし、言語も違うのに言葉も分かる状態でして……」

 「お、落ち着いてください。語ると長くなりそうなので良かったら部屋きますか?」

 「い、いいんですか?」

「構いませんよ」  

少女は部屋に着くとベットに座り俺は事務机の椅子に座る。

「まずは初めまして。私の名前はアリスって言います。同じ日本人でこの世界に来て2年位になりますかね」

「俺の名前は加藤 佑真です。年近そうだし気軽にユウマって呼んでください。ちなみに年は今年で20になります」

 「私は今年で15になります」

 ·····思ったよりずっと若かった。

 「それでは本題です!さっき質問された答えを言うとここは異世界です。間違いなく異世界です!」  

·····まじか!本当に異世界なのか!

「そうなんですね。ちなみにどんな感じの世界観なのか分かったりしますか?」

「RPG系ってよくやられましたか?そんな感じの魔法や剣有りモンスターもいるそんな世界です」  ……剣に魔法!そんなのが沢山あって仲間と協力してモンスターを倒すそんなゲームみたいな世界なのかな

「やります!やりました!なんなら大好きでした!てことはギルドとかパーティーとか組んだりするですよね!?」

 興奮する俺に「ふふん」と自慢げに語る。

「ギルドに登録して冒険者として活躍したり、農家や貴族に雇われて専属の短期護衛をやったり。もちろんパーティーを組んでダンジョン攻略を目指す人もいます」

 「ちなみにアリスさんは何をしている方なんですか?」

「私この世界に来る時に女神様から頂いた転生特典で魔力、魔法知識、魔法センスがありこの世界でトップクラス魔法を使うことができるのです。  それなので少し離れた地域を収める領主様に最近まで務めて居ましたね。ある程度のお金も溜まったのでこうして旅をしているのです」  ··········世界トップクラスの魔法を使える魔法使い―いまなんて!?

「女神様?そんな人に俺会いませんでしたよ?」  女神なんて知らない! 興奮とテンパりで初対面にも関わらずタメ口になっていた。

「そんなはずは無いですよ。私今日までに数人の日本人と会ってきましたたがみんな女神様からチートスキル貰ってましたよ」

 …………まじかよ。 「そういえば、ここに来た時の記憶があんまり無いんですよね」

 「は、はい。気づいたらこの世界に居て……」 「それはおかしいです!女神様が言ってましたもん。この世界に行く者全てが1度この神界に来て即戦力になるよう何らかの能力をもらうって」

 「なら尚更なんでなんだ!?」

 頭を捻るが何一つ浮かんでこない。

 「悩んでいても仕方ありません。物は試しと言います。職が無いならとりあえず冒険者になってパーティーを組みましょう。そして女神様から貰った力を一緒に探してみませんか?」

 ……願ってもない提案だ!

「いいのか!俺はまだこの世界に来て間もなくてこの世界の一般教養もなければ金も無い。迷惑をかけるかもしれないが」

「構いませんよ。2人の1ヶ月分の食費は持ってますし、冒険者になってモンスター討伐やダンジョン攻略で特別報酬も貰えます。なので早速、ギルドに向かいましょう!」

  そう言ってアリスは俺の手を掴み宿を出た。

3

石造りの大型建造物で屋根にこの国の国旗らしき旗が建てられこの街の中心と言えそうな建造物。  

入り口付近には屈強な男の集団や飲んだくれが群がっておりどうにも入りづらい。

 「さっ、いきますよ」

 男たちに目もくれずにさっさと門を潜るアリス。

これはやはり慣れなのか。

 俺とアリスがやってきた建物は『ギルド』。  この街の冒険者が集う場所らしい。  

冒険者はここで仕事の依頼を探したり、受けたりすることができる。  

また横に併設されている酒場で飲み明かし足りするそうだ。  

アリスみたいに宿で暮らしている冒険者は少なく、稼いだ金はその日のうちにみんな酒に消えるので大抵の冒険者は犬小屋やなどに寝泊まりしているらしい。  

犬小屋ってのごすごい引っかかるがまあそれは本当の貧乏人だけだろう。  

と、ここまで来る途中に聞いた話だが入って見て見なきゃ分からない。

 「アリスいくぞ……あれどこだ」  

アリスの姿が横にはもうなかった。  

……もう入っているのだろうか。入口はアレだな。  仕方なく1人駆け足でで屈強な男たちの横を通り扉の前に着く。

 「これが!俺の異世界生活の始まりだ!」  

新しい世界の生活の大半を過ごすであろうギルドに期待を持ち行き良いよくドアを開ける。

 「そうだ!もっと!もっとだ!もっと強く強く叩いてくれ!」  

俺はドアをそっと閉めた。

 ……何かがおかしい。聞いてた話とだいぶ150度くらい違った気もしなくもない。  

中にいたのは若い女と男。  

女がムチを持ち男を叩き上げ男は歓喜を上げていた。

「何かの見間違えであってくれ!」

 俺はそう叫びながらドアをもう一度開く。

 「ぁあア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」 

「イヤァァ」  

中の状況は変わらない。  が、今度は叫ばれた。  ……てか誰得だよ。

普通に男女逆だろ

「ユウマ!どうしたんですか!?……何をしているのですか!遅いから見に来たら……そこはトイレですよ?」

 アリスが叫び声に駆け寄ってくる。  

……え?

「そうかそうか。ここはトイレ……だとしてもおかしいだろ!入口だと持ってここを開けたらムチで叩かれてる人がいて」

「ムチ?そんな人いるはずないじゃないですか。もし居たとしたら変態です。そしてもしそれが冒険者ならモンスターよりそいつが討伐されるべきです。が、そんな変態は居るはずないので……さっ早く謝ってギルドに入りましょ」

  何を馬鹿なことをといわんばかりに冷徹かつ正論を言ってくるアリス。

 「い、いくらなんでもそれは言い過ぎだぞ。けどまあそんな人いるはず無いもんな。本当にすいませんでした!」

 俺は鍛え抜かれた土下座を披露し足早にアリスの元に駆け寄った。

 あの涙目の男の顔は一生忘れることができないだろう。  

ハプニングこそあったものの何とかギルドに入った俺とアリスは受付カウンターに居た。

 「あのすいません。

冒険者になりたいんですけど」

 「冒険者ですね。承りました。ではまずは5000バイツ頂戴致します」

 巨乳で緑色髪をした美人な受付嬢は浮かれた俺に現実を突きつけた。

  ……所持金は2500バイツ。アリスに借りれば多分足りるだろう。

だが冒険者になる初日に女の子、しかも年下から登録料を借りるのは男としてどうだろうか。 「ユウマお金は持ってますか?持っていないなら私が払いますよ」

 俺はアリスの唇の前に人差し指を出した。

「冒険者になる勇敢な男が女の子にお金を借りる?そんな恥ずかしいことする訳ないだろ。この後冒険者になった祝杯を上げたい。酒やジュースなどを適当に見てくるんだ。こっちは登録しとくからな」

 唇に指が触れたアリスは頬を赤らめ「わ、わかりました」と言い横に併設されている飲食店に向かった。

 ……さてひとつの問題は去った。

このまま同じ作戦をこのお姉さんにも。

「お姉さん。俺は日本と言う自然豊かな島国からはるばる勇者として冒険者になるべくやってきたユウマと申します。いずれ魔王を倒し世界を危機から救う。そんな勇者候補に2500バイツ程投資してみては如何だろうか」

 お姉ちゃんは小首を傾げると。

「日本という国の名前は聞いた事ありませんね。それと駆け出し冒険者が魔王討伐とかあまり口にしない方が良いかと。最近3層目のボスがこの街の近くに潜伏してるとかで下手したら目をつけられますよ」

 「そ、そうですか。で投資の方はどうでしょうか?」

「ギルドからの貸付になりますね。1万バイツ月利5%からで貸付しておりますのでそちらをご利用ください」  

……いきなりギルドから金を借りることになってしまったがまあ仕方ない。

「それでお願いします」

 「承りました。それでは冒険者カードの発行と手数料を引いた5000バイツをお渡し致しますので少々お待ちください」  

数分後冒険者カードと5000バイツを受け取りアリスの待つ席に着いた。

 「早速冒険者カードに色々登録していきましょ」  自分の事のように興奮気味に机に前かがみになるアリス。

横に置いてある飲み物が零れるんじゃないかとヒヤッとする。

 「名前、年齢、性別……大まかなものは終わりましたね。後はここに人差し指をおいてください」  アリスの指示に従って丸い凹に人差し指を置く。  体に何かが駆け抜けて行くのを感じるとすぐに

冒険者カードに文字が書き込まれていく。

 「物理攻撃70魔法攻撃80魔法耐性150。初期スキル無し」  

……これは直感的にダメなやつだ!

 「ま、まぁレベルが上がればスキルは値を増えていくので気を落とさずに」  

必死にフォローするアリス。

 「 ちなみに平均値は?」

「100」  

……思ったよりも悪くはなかったが、アリスと比べたら天と地の差が出るのだろう。

 「魔法耐性150これは結構いいんじゃないか?」 「数値自体はすごくいいと思いますよ。しかし……その魔法を放つ敵は極わずかで倒すより保護をしなくては行けなかったりしてあんまり」

 ……訂正する。ダメダメじゃねぇか!  

深く溜息をつき。

「俺一人だったら大変だったかもしれないが、俺にはアリスが居てくれる。頼りにしてるぞアリス」

「任せてください!世界最高峰の魔法使いの力を存分に味合わせてあげましょう」

「期待してるぞ……それとこれはなんだ?」 「それと最後になんだけどこのスキルってのはなんだ?魔法使ったりパワーアップとかそんな類か?」

 「イメージ的にはそんな感じで良いかと。スキルを習得するにはモンスター討伐とレベルアップが必須条件です。高レベルになるにつれて覚えれるスキルが強くなります」

 「覚えれるスキルの数とかは決まってたりするのか?」

 「特に決まってはないです。なので覚えれるだけ覚えた方が冒険で有利に立ち回れます」

「なら沢山覚えた方が得だな」  

……ある程度今後やるべきことがわかった。

 「1つ目レベル上げ。2つ目借金の返済。

3つ目にパーティーメンバーの募集。

これを目標にやってくか」

「いい心掛けです!ところで2つ目の借金ってのは……?」

 「な、なんでもない。気にしないでくれ。日本でちょっと闇金に追われてからそれでついな」

 「闇金!?そうですか。なんでもないならもう気にしませんが」

「大丈夫だ。そうしてくれ」

  異世界転生して2日目にして俺は冒険者になった。  

剣と魔法のファンタジー世界。

  モンスターを討伐し魔王軍すらも壊滅させ世界に名を轟かせる予定だ。  

初期ステータスはあんまりだったが俺にはアリスが居てくれる。

 なんで俺みたいな新参者、しかも雑魚に世界最高峰の魔法使いが着いてくれてるのかは謎だが幸先がいい事には変わりない。

 現世だったら今日も家と大学の往復していた。が俺は昨日で卒業した。

 お母さん。お父さん。俺はこの世界で楽しくやって行くよ。

 ほぼ未練の無い現世に別れを告げ俺の異世界ライフは始まった。

 「よーし!アリス!転生記念&冒険者になった&パーティー組めたことを祝ってパーッとやるか」 「いいですね!すいませー」

 意気揚揚と店員を呼ぶ声はアナウンスによってかき消された。

 「緊急!緊急!冒険者各員は至急冒険者ギルドに集まってください!繰り返します!」

「なんだなんだ!?」  

急に慌ただしくなるギルド内。

次々に武装した冒険者が流れ込んでくる。  

先程対応してくれた緑髪の受付嬢は「こちらです」と叫びながら人を纏めている。

 「どうする?俺達も行った方がいいのかな」

「行きましょう。これはレベル上げのチャンスかもしれません」  アリスは即答した。

「だな。そうと決まればいくぞ」  

「現在魔王ダンジョン守護者と思わしきモンスターが裏門近くに出現しております。

ここは始まりの街。

王都からの凄腕冒険者の支援届くまでの時間稼ぎで構いませんのでまずは生きてください」  

受付嬢はそう言い放った。  

……モンスターそれも飛びっきり強そうな魔王ダンジョン守護者とか言うプレート付き。

「任せとけよ嬢ちゃん」

「おう。俺達にかかれば屁でもないぜ」

  武器を構え意気込む強面冒険者。  

「皆さん。それでは緊急クエスト開始です!」 「「「おおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」」」  

裏門に集まると大体200メートル程離れた所に今回の標的と思われるモンスターが居た。

 「見えているか。人間諸君」

 誰もがその絶対的な存在感に気を取られ声を出せない。

「私の名前はテレサ。魔王軍ダンジョン3階層守護者にして魔王軍調理隊調理長」

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死罪判決は嫌なので逃亡しながらダンジョン攻略します

第1話
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