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「席はまだ空いていますよ、桐谷さん。あなたに来ていただけたら、我々も大変嬉しい」電話の向こうのディレクターの声は温かかった。「しかし、条件はご理解いただいていますね?六ヶ月間、完全な隔離。外部との連絡は一切禁止です」

「理解しています」と私は言った。それこそが、今の私に必要なものだった。消えるための場所。

「すべて手配できます」と彼は約束した。「渡航の予定が決まり次第、お知らせください」

「ありがとうございます」私は言った。無感覚を切り裂く、希望のようなものが微かにきらめいた。「チューリッヒでお会いしましょう」

電話を切り、まっすぐ家に帰った。私たちの家に。

玄関のドアを開けると、リビングには私たちの生活の象徴が溢れていた。カウンターにはお揃いのマグカップ。暖炉の上には結婚式の日の写真立て、蓮が私をしっかりと抱きしめている。彼が私に買ってくれたカシミアのブランケットが、私たちが寄り添って映画を見たソファにかかっている。

吐き気がこみ上げてきた。

キッチンからゴミ袋を掴み、嵐のように家の中を動き回った。最初にマグカップを放り込むと、袋の底で粉々に砕けた。写真立てもそれに続き、ガラスが割れる。すべての写真をフレームから引き剥がし、細かく引き裂いて投げ込んだ。ブランケット、私のクローゼットにあった彼の服、彼の「出張」から持ち帰ったくだらない土産物。

すべてを袋に詰めた。私はそれらを歩道脇まで引きずり出した。浄化の炎のような怒りが、私を焼き尽くしていた。

それから荷造りを始めた。私の服、本、建築模型。私のものすべて。運送会社に連絡し、アトリエとして使っていた古いアパートに配送するよう手配した。

その夜、蓮は帰ってこなかった。

翌日の夕方、彼は疲れた顔をしながらも、笑顔で帰ってきた。ブリーフケースを置き、私を抱きしめた。彼の腕が、何事もなかったかのように私を包み込む。

「ああ、会いたかった」彼は私の髪に顔をうずめ、唇がこめかみに触れた。

私の体は硬直した。彼のシャツから、別の女性の甘い香水の匂いが微かにした。彼があの赤ん坊を抱き、佐藤美月にキスをする姿しか思い浮かばない。吐き気が喉元までせり上がってきた。

私は彼の腕から身を押し出した。

彼の笑顔が消え、心配そうな表情に変わった。「どうしたんだ、詩織?冷たいじゃないか」

「何でもないわ」私の声は平坦だった。

「何でもないわけないだろ」彼は眉をひそめて言った。「具合でも悪いのか?医者に行こう」

その偽善に息が詰まりそうだった。彼は別の家族と夜を過ごした後でさえ、心配する夫の役を完璧に演じることができる。

「病気じゃないわ」私は言った。「ただ疲れているだけ」

彼はそれ以上追及しなかった。代わりに、ブリーフケースからラッピングされた箱をいくつも取り出した。「お土産、買ってきたんだ。出張の」

彼は出張の証拠まで偽造していた。私が嫌いだと伝えたデザイナーのシルクスカーフ。私が絶対につけない香水のボトル。一つ一つの贈り物が、彼の欺瞞の深さを物語る、巧妙に構築された嘘だった。これらの贈り物の値段で、小さなスタートアップ企業に資金提供できるだろうが、その裏にある思いやりは無価値だった。

叫びたかった。箱を彼の顔に投げつけ、どうしてこんなことができるのかと問い詰めたかった。しかし、言葉が出てこない。かつての彼を心のどこかでまだ愛している女と、今の彼の正体という真実に溺れている女との間で、私は閉じ込められていた。

彼は私の沈黙と、目の充血に気づいた。

「どうしたんだ、詩織?話してくれ」

私は彼の目をまっすぐに見つめ、硬い声で言った。「赤ちゃんが欲しいの、蓮。今すぐに」

彼の顔色が変わった。一瞬のパニック、そしてうんざりするような忍耐の仮面。「話しただろ。タイミングが悪いんだ」

「あなたにとっては、いつだってタイミングが悪いのよ」私は言い返した。

「会社が新しいプロジェクトを立ち上げたばかりなんだ。プレッシャーがすごいんだよ」同じ言い訳。いつも同じ。

「私にはプレッシャーがないとでも思うの?」私の声は次第に大きくなった。「子供が欲しいの、蓮。あなたとの」

彼のスマホが鳴り、彼を救った。発信者番号は非表示。彼はそれを見て、真剣な表情になった。

「仕事だ」彼はすでに背を向けながら言った。「行かなければ」嘘。嘘だとわかっていた。

彼は私の額にキスをした。今では裏切りの烙印のように感じる仕草だ。「遅くなる。先に寝ててくれ」

窓から、彼が車に乗り込み、夜の闇に消えていくのを見送った。

私はソファに崩れ落ちた。闘志は消え、骨の髄まで染みるような痛みだけが残った。彼は彼女との子供は持てるのに、私とは持てない。その考えは、物理的な打撃だった。

彼の二台目のスマホ、彼が「海外とのビジネス用」だと主張していたものが、コーヒーテーブルの上に置かれているのが目に入った。急いでいたせいで忘れていったのだ。画面がメッセージで光った。

美月から:「怜央くん、また熱が出ちゃった。パパに会いたいってずっと言ってる」

彼は私が変わったことにさえ気づいていなかった。家が半分空っぽになったことにも。妻の心が壊れかけていることにも。

一筋の涙が頬を伝い、そしてもう一筋。心臓の痛みはあまりに激しく、物理的な感覚だったが、それよりも突然の、激しい腹部の痙攣に意識を奪われた。

私は前のめりになり、口を手で押さえながらトイレに駆け込み、便器に吐き出した。

体の感覚がおかしい。これはただの失恋の痛みではない。冷たく、恐ろしい考えが頭の中で形になり始めた。奇跡であり、呪いでもある可能性。

その夜、彼は帰ってこなかった。

翌朝、私は一人で病院へ向かった。

医師は超音波の画面を見ながら、目尻にしわを寄せて微笑んだ。

「おめでとうございます、桐谷さん」彼女の声は、私が感じることのできない喜びに満ちていた。「妊娠六週目ですよ」

3

私は呆然としながら診察室を出た。彼女の明るい言葉が、殺風景な廊下に響き渡る。妊娠。六週目。私はまだ平らな自分のお腹に手を当てた。一筋の涙が目尻からこぼれ落ちた。

この小さく、罪のない命。なぜ今?なぜ、この瓦礫の山の中から、この瞬間に生まれてくることを選んだの?

長い廊下の突き当たりに差し掛かった時、見慣れたシルエットに私は凍りついた。

蓮だった。彼はエレベーターの近くに立ち、胸で泣きじゃくる佐藤美月を腕に抱いていた。彼は慰めの言葉を囁き、その表情は、私が長い間向けられていなかった優しい気遣いに満ちていた。

私は大きな観葉植物の陰に隠れた。心臓が激しく鼓動する。彼らの言葉ははっきりと聞こえなかったが、彼の行動がすべてを物語っていた。

その時、美月の詰まったような囁き声が廊下に響いた。「彼女、何か疑ってると思う?」

「あいつは俺を信じきってる」蓮は答えた。彼の声は素っ気なく、見下すようだった。それは、彼が私を、私の知性を、どれほど軽んじているかをすべて明らかにする、無頓着な一言だった。

「でも、いつ私を奥さんにしてくれるの?」美月は、必死の野心をにじませた声で迫った。「いつ、私と怜央に、ふさわしい生活を与えてくれるの?」

「美月、やめろ」彼は彼女を遮った。その声には鋼のような響きがあった。「詩織は俺の妻だ。それは変わらない」

私は息を呑んだ。

「それが、俺にできる最低限のことなんだ」彼は続けた。その声は今や柔らかく、罪悪感のようなものが混じっていた。「彼女にしてしまったことへの、俺なりの償いだ」

美月は黙り込み、不承不承ながらも彼の決定を受け入れた。彼は彼女を再び抱きしめ、髪にキスをした。

「美しい息子を産んでくれた、美月」彼は感情のこもった声で言った。「君たち二人のことは、俺が必ず守る」

彼らは腕を組み、エレベーターに向かって歩いていった。ドアが閉まる直前、美月の目が私のいる方向をちらりと見た。一瞬、彼女の視線が私と交錯した。彼女の目に驚きはなく、ただ冷たく、勝ち誇ったような勝利の光が閃いただけだった。

彼女は知っていた。私がずっとそこにいたことを。

私は植物の陰から一歩踏み出した。体は震えていた。こらえていた涙が、熱く、止めどなく顔を伝って流れ落ちた。胸の痛みは物理的な重さとなって、私を押しつぶしていた。

彼は罪悪感から私と離婚したくない。しかし、もう一つの家族を諦めるつもりもない。それなら、私は何?彼の感じなくなった責任の象徴?臆病すぎて断ち切れない、ただの placeholder?

彼の約束を、誓いを思い出した。「病める時も、健やかなる時も、死が二人を分かつまで」。彼はあんなにも確信に満ちて言った。私は信じていた。

しかし、彼は私を裏切った。そしてこの愛、この毒にまみれた、壊れたものを、私は自分の人生から切り捨てなければならない。

病院を出る前に、私は受付に戻り、予約を入れた。中絶手術の。

そして、弁護士に電話した。

「離婚届を作成してください」私の声は冷たく、安定していた。「財産はすべて折半。私が受け取る権利のあるもの、すべてを」

病院の駐車場で車の中に座っていると、スマホが鳴った。蓮からだった。彼の声はかすれて、疲れていた。

「誕生日おめでとう、詩織」

すっかり忘れていた。混乱と痛みの中で、自分の誕生日が頭から抜け落ちていた。

「昨日は本当にすまなかった」彼の声には、練習された後悔の念がにじんでいた。「会社でトラブルがあって。一睡もできなかったんだ」

苦い笑いがこぼれそうになった。「そう」私は言った。その二文字が、口の中で埃のように感じられた。

彼は電話の向こうで安堵したようだった。私の質問のなさに安心したのだろう。「今夜、君のためにパーティーを開くんだ。君の誕生日と、君が設計した美術館の新館の完成を祝って。埋め合わせをさせてくれ」

「そう」私は繰り返した。声は単調だった。

一年前なら、その言葉に嬉し泣きしていただろう。今では、それは彼の巧妙な嘘の、また一つ新たな層に過ぎなかった。

もう彼の声を聞きたくなかった。私は電話を切り、ハンドルを握りしめた。

窓の外を見ても、何も見えなかった。ただ、深く、冷たい予感だけがした。彼はこれから何が起こるか、全くわかっていない。何か大切なものが指の間から滑り落ちていくような不安を感じてはいるが、それが何なのかはわからない。

それが、もう失われてしまったことにも気づかずに。

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五年、運命を狂わせた一つの嘘

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