話 2
エララ・ヴァンス POV:
「エララ、やめなさい」
ヴァレリウス長老の声は穏やかだが、断固としていた。
渦巻く私の感情の混沌の中で、それは岩のようだった。
彼は私の腕に優しく手を置いた。
「行くな」
彼は鋭い視線で言った。
「儀式は罠だ。奴はすべて計画している」
「関係ない」
私は腕を振り払い、吐き捨てた。
怒りは私の中で野生の獣となり、外に出ようと爪を立てていた。
「彼は私に答えを負っている。彼は私と向き合うべきよ」
ヴァレリウスは深く、疲れたため息をついた。
「かつてお前の父親にも同じ助言をした。彼も聞かなかった。お前の心は勇敢だ、小さな子よ。だが怒りはお前を盲目にする。もし私が恐れるような事態になったら…もし後戻りできなくなったら…北の荒野へ行け。双子の岩のそばに隠れ家がある。そこで会おう」
北の荒野。
野生の本能に心を失った、群れを持たない狼「はぐれ者」が徘徊する、危険で未開の土地。
彼の言葉は冷たい予言だったが、私はそれを振り払った。
私は聞かなかった。
私は走った。
儀式が行われている古代の石の輪の中に飛び込んだ。
群れの全員が集まり、その顔は燃え盛る篝火に照らされていた。
そして、中央の祭壇に、ルシアンが立っていた。
彼はいつものように壮麗だった。
背が高く、力強く、その黒髪が炎の光を捉えていた。
しかし、彼は一人ではなかった。
彼の隣に立ち、その腕に所有欲たっぷりに手を置いているのは、姫川セラフィナだった。
彼女は冷たく、鋭い美しさで、血のような色の絹をまとっていた。
彼女のドレスには、壊れた王冠の上で唸る狼の紋章が描かれた、曇った銀のブローチが留められていた。
それは、没落した一族の紋章だった。
ルシアンの声が、アルファの力で増幅され、広場に響き渡った。
「我が選んだルナ、群れの未来…セラフィナを紹介する!」
「選ばれたルナ」
その言葉が私の頭の中で反響し、私を嘲笑った。
暗闇で囁かれた彼の言い訳を思い出した。
「今は私たちの絆を秘密にしておかなければならない、エララ。オメガの伴侶は弱さと見なされる可能性がある。私の権威を揺るがしかねない」
すべてが嘘だった。
彼が政略結婚を整える間、私を黙らせておくための、巧妙に作られた檻だった。
セラフィナの目が、群衆の向こうで私の目と合った。
ゆっくりと、勝利に満ちた笑みが彼女の完璧な唇に広がった。
それは純粋な悪意の笑み、勝利した捕食者の笑みだった。
私の中で何かが切れた。
生々しく、苦悶に満ちた咆哮が、私の喉から迸った。
それは私の内なる狼、私の魂そのものが、裏切りに泣き叫ぶ声だった。
群れは静まり返り、私が群衆を突き破って祭壇に向かって突き進むと、すべての視線が私に注がれた。
「彼女は誰なの?」
私はセラフィナを指さし、怒りに震える声で叫んだ。
私はルシアンを、私の心をその手に握る男を、まっすぐに見つめた。
「彼の伴侶は私よ!月の女神自身によって彼のために選ばれたのは私!」
衝撃の囁きが群れの中に波のように広がった。
これは前代未聞のことだった。
オメガが、公然と自分のアルファに異議を唱えるなど。
セラフィナはすぐにルシアンにもたれかかり、その体は繊細に震えていた。
彼女は静かにすすり泣き、不当な扱いを受けた犠牲者の姿を完璧に演じた。
「ルシアン、あなた…このヒステリックな女は誰かしら?」
ルシアンの黒い瞳に、何か――痛みか?罪悪感か?――がきらめくのを私は見たが、それはすぐに氷の仮面に覆われた。
「黙れ」
彼は唸った。
彼の声にはアルファの命令が込められていた。
その一言に込められた力は、私に叩きつけられた。
それは物理的な力、膝を折り、頭をくらませるほどの圧倒的な圧力だった。
それは、下位の狼すべてが魔法のように従わざるを得ない声だった。
彼は私を見下ろし、その顔は怒りの仮面だった。
「群れの全員の前で、私の権威に逆らうつもりか?」
セラフィナは事態を収拾しようとするかのように、一歩前に出るふりをした。
「お願い、あなた、彼女に厳しくしないで」
彼女は偽りの同情に満ちた声で甘く言った。
彼女は私に近づき、その目はきらめいていた。
通り過ぎる際、彼女の手が自分の腕に触れた。
長く鋭い爪が彼女自身の肉に食い込み、細い血の筋を引くのを私は見た。
そして、劇的な息を呑む音とともに、彼女は地面に崩れ落ちた。
「彼女が私を襲った!」
セラフィナは血を流す腕を掴み、金切り声を上げた。
「オメガがあなたの未来のルナを襲ったのよ!」
話 3
エララ・ヴァンス POV:
セラフィナは祭壇の冷たい石の上に横たわり、その息は芝居がかった、哀れなすすり泣きだった。
「大丈夫よ」
彼女は近くの長老たちに聞こえるように、大声で囁いた。
「彼女はただ…混乱しているだけ。許してあげるわ」
彼女の演技は完璧だった。
彼女は優雅さと許しの象徴、寛大な未来のルナの姿であり、一方で私は狂った、暴力的なオメガとして描かれた。
群れの囁きは私に敵対し、彼らの同情は完全に彼女へと移った。
ルシアンはセラフィナのそばに跪き、彼女の肩に置く手は優しかった。
そして彼は立ち上がり、その目は私に向けられたことのない怒りで燃え上がっていた。
「気でも狂ったのか?」
彼は、呆然とした静寂の中で響き渡る声で怒鳴った。
彼は群れに向き直り、まるで私がゴミであるかのように腕を私に向けた。
「この狼と私には何の関係もない」
彼は冷たく、絶対的な声で宣言した。
「彼女は、哀れで病的な執着心を持つ、ただの下位のオメガに過ぎない」
一つ一つの言葉が物理的な打撃となり、私の肺から息を奪った。
これが、最後の、公の屈辱だった。
彼は私と視線を合わせた。
月は今や真上にあり、その冷たい光が私たちを照らし、彼が犯そうとしている残虐行為の静かな証人となっていた。
「私、アルファ・黒木ルシアンは、お前、月野エララを、伴侶として拒絶する」
神聖な静寂の中に放たれたその言葉は、私の周りの世界を粉々に砕いた。
これまでに経験したことのない痛みが、私の魂そのものを引き裂いた。
それはきれいな切り傷ではなく、暴力的で、残忍な引き裂きだった。
まるで私の重要な一部、私を彼に、私の半身に繋いでいた部分が、胸から爪でえぐり出され、生々しく、ぽっかりと開いた傷を残していくようだった。
血の涙が私の目から流れ落ちた。
それは、私に加えられている精神的な暴力の証だった。
群れの古代の法は、返答を要求した。
私が受け入れなければ、拒絶は不完全なままとなり、私たち二人を拷問のような宙ぶらりんの状態に残すことになる。
私の声は壊れた囁きで、苦痛で締め付けられた喉から無理やり絞り出された。
「私、月野エララは、あなたの拒絶を受け入れます」
絆は断ち切られた。
世界は灰色になった。
いつも彼を定義していた、松と嵐の鮮やかな香りが、私の鼻の中で灰に変わった。
その夜遅く、彼は私の小さな山小屋にやってきた。
私は自分の体の抜け殻の中で震えながら、寝台に丸まっていた。
彼はノックをしなかった。
ドアがただ開き、彼がそこにいた。
彼は私に触れようとしたが、私は身をすくめた。
「エララ、理解してくれ」
彼は低く、切迫した声で言った。
まるでダメージコントロールをする政治家のように。
「セラフィナとの結びつきは純粋に政治的なものだ。彼女の一族は東の銀鉱山を支配している。この同盟は『黒月』の群れの未来のためなんだ」
その言葉は空虚で、意味がなかった。
「信じてくれ」
彼は懇願し、その声は共謀者のような囁きに変わった。
「一年、長くても二年待ってくれ。私の地位が固まったら、彼女を脇に追いやる。そうすれば私たちは一緒になれる。君を私の真のルナにする。隠された、私の本当の宝物として」
彼は彼女を弁護しているのではなく、自分の選択を弁護していた。
彼は自分の野心を正当化していた。
「彼女の一族は強力なんだ、エララ。辛抱強くならなければ。群れのために、これをやらなければならない」
私はその時、彼を、本当に彼を見た。
私が愛した男はもういなかった。
彼の代わりにいたのは見知らぬ男、愛ではなく野心に心を支配された政治家だった。
彼への私の愛情の最後の残り火は消え、氷のように冷たい憎しみに変わった。
拒絶の苦痛と、彼の哀れな嘘の侮辱が相まって、私の悲しみは絶対的な限界に達した。
そして、その痛みと裏切りの深淵で、私の内なる何か、古代の、眠っていた何かが、動き始めた。
私が持っているとは知らなかった力が、目覚めようとしていた。