話 1
chord name ZERO
この世界で平等なモノなんて無い。 人ですら平等ではないのだから…。
「コード:ゼロ聞こえるか?」
無線からボクの呼ぶ声がする。
ボクの名前はコード:ゼロ。
名前が無い為そう呼ばれて居る。
身寄りも無く名前すらも無い。
せめてもの救いはこの見た目だけだ。
シルバーアッシュの髪はパーマが当てられ腰までの長さで色白な肌に青い瞳。
この容姿のせいで酷い目に遭った事は無かった。 「聞こえている。」
「間も無く着陸する。戦闘準備を。」
「了解。」
ブツッ! 無線が切れ、ヘリのドアが開いた。
暴風がボクを包んだ。
「間も無く上陸致します!!!5、4、3、2…。」 ボクは銃を取り体に巻き付いた銃弾を確認し、飛び降りる準備をした。
「1、GO!!」 掛け声と共にボクはヘリから飛び降りた。
数はザッと80人…か? まぁ、どうでも良いけど。 ボクは着陸準備をしながら周囲を確認し着地をした。
「ゼロ。ターゲットはこのビルの中に居る。周囲のSPに軍隊を含めおよそ150人。
我々も突入するが、半分程数を減らして欲しい。」 「了解。終わり次第連絡を入れる。」
「了解。」 ジジッ。
半分って…、普通の人間だったら無理ですよ隊長。 「さっさと終わらせるか。」
カチャッ。
ショットガンに弾をセットしてボクはビル内に入った。
足音を立てずいかに気配を消せるかが鍵だ。
探索をしていると早速敵隊の人がチラホラと現れた。 「
TARGET。」 ボクはそう呟いてショットガンを構え1番後ろを歩いて居た男にヘッドショットをした。
防弾仕様の為、銃弾を放っても音は出ない。
ヘッドショットした男が倒れる前に2人にもヘッドショットをした。
カチャッカチャッ。
弾を補充し再び周りを歩く。
ボクは産まれた時から1人だった。
赤ん坊の時に教会に捨てられお金の無い子供は食べる事さえ許されなかった。
少しでもお腹を満たしたくて盗みをした。
そしたらギャングの仲間に誘われてボクは教会を出た。
人を殺す事に何も感じなかった。
好き、嫌い、怖い、とかそう言う事を思った事がなかった。
感情がなんなのか分からなかった。
淡々と人を殺して居たら今の隊長にスカウトされ軍隊に入った。
ボクは人よりも優れて居た為あらゆる戦場に連れて行かれた。
そこでは生と死の世界で互いの命を掛けて戦って居て恐怖に満ちた表情や殺意に満ちた表情があった。
そんな表情を見ても何も感じなかった。
だから平気で殺せた。
今思えば人に興味がなかったんだろう。
だって今もこうして1人で戦場に立って居るんだから。
血生臭い空間にいつもボクだけが居た。
「ギャアアアアア!」
「このガキ!!」
銃弾はボクに当たる事はなくナイフで男の首を切った。
溢れ出す血を見ても何と思わない。
死体を見ても同じ事。
半分以上は減らせたか?
ボクは無線を耳に当て報告をした。
隊長の声と共に自分達の部隊が突入し無事にターゲットを捕獲出来た。
「ご苦労であった。今日はもう下がっていい。」 「失礼します。」
隊長の部屋を出ると同じギャング出身のヤオが立って居た。
短髪の黒髪で体中には古傷があった。
ボクと同じ18歳だ。
「お疲れー。コレ行かね?」
そう言ってヤオは煙草を吸うジェスチャーをして来た。
「良いよ。それで待ってたのか。」
「そう言う訳じゃねぇけど、ゼロ今日は大活躍だったみてぇだし?」
「あぁ。いつもの事だろ?」
そんな話をしながらボク達は外に向かって居た。 「いつもの事って…お前はもっと自分自身を大事にしろよ?一応女なんだから。」
カチッ。
そう言って煙草に火を付けた。
「まぁ…一応な。女って自覚を最近してなかったよ。」
ポケットから煙草を取り出し口に咥えた。
「隊長もゼロに殆どの任務任せてるからな。次の任務もかなりデカイだろ?」
「あぁ。屋敷の潜入捜査のヤツか。ヤオを駆り出されたんだろ?」
「まぁな。俺達も出されるって事はかなり危ないヤツだろうよ。」
ヤオはボクの事を高く買って居るがヤオだってかなりの実力を持って居る。
「ヤオだって隊長に実力を認められてるだろ?あまりボクの事を買い被るな。」
そう言って地面に煙草を押し付けた。
「チームに居た時だってお前の右腕だったろ?近くで見てたんだ。ゼロは強いよ、この辺の奴等だったら絶対勝てない。」
「へぇ…。ヤオがそんな事思ってたなんて知らなかったな、意外。」
「意外って何だよ!俺だって色々考えるわ!」
ヤオがボクを叩こうとして来た。
スッと軽く交わしヤオの頭を叩いた。
「痛!!」
「それじゃあ、ボクは部屋に戻るから。お疲れ。」
そう言ってボクはその場を後にし自分の部屋に戻った。
部屋に戻りベットに倒れ込んだ。
ヤオの言葉を聞いても何も感じなかった。
ボクは変なんだと思う事はある。
だけど、それすらも考えないようにしてた。
「眠い。」
ボクはそのまま眠りに付いた。
「アリス待っててね。絶対見つけて見せるから。」
ぴょんぴょんっとウサ耳が揺れる。
沢山の時計の上を飛んで駆け回る。
キラリと輝く1つの時計の針がー。
カチッ。
動き出した。
話 2
潜入捜査当日ー
ボクとヤオは同じヘリで屋敷に向かって居た。 「ヘマすんなよゼロ。」
ニヤニヤと笑いながらボクに話し掛けて来た。 「それボクに言ってんの?」
「俺の目の前にお前しか居ないだろ。」
「ふーん。寝言は寝て言うんだぞヤオ。」
「寝てないわ!」
ボクに話し掛けて来るのはヤオぐらいだ。
周りに居る連中がヤオを引いた目で見ている。 ヘリの中に居るのはザッと数えて20人。
後から応援が来る予定だ。
隊長の人選で20人と厳選された。
今回の任務は屋敷内の調査。
屋敷の地下に兵器が眠っているらしくその調査だそうだ。
「後30秒で上陸する。各自戦闘準備。」
無線から指示が届いた。
ボク達はすぐに戦闘準備を行った。
銃弾にショットガンにアサルトライフルを肩に掛け、太ももに巻かれた袋にナイフを入れた。
目の前に居るヤオに視線を向けた。
さっきまでのヤオとは違った。
顔付きが変わって居た。
ヤオもこの部隊でかなりの戦力になっている。 「間もなく目的地に着陸する。各自着陸準備を。」 ボク達は着陸準備を完了させ、ヘリのドアを開いた。
「着陸地には到着!!5.4.3.2.1...。GO!!」 バッ!!!
ボク達はヘリから降りパラシュート開き地面に着陸した。
屋敷から約300mの距離だった。
ダダダダッ!!
ボク達は屋敷に向かって走った。
屋敷に着くとセキュリティーは頑丈で門には敵の軍隊が居た。
ヤオが指示を受け、門にいた軍人をナイフで首元を切り裂いた。
幸い門には2人にしか居らず敵の軍隊にバレずに屋敷内に入れた。
屋敷に入ると各自1人行動をし、屋敷内を探索し始めていた。
ボクも銃を構え部屋を探索して居た。
ここも特に無し…か。
外装からしてかなりの金持ちが所有しているようだ。
部屋の中の家具とかもかなり高級品だ。
これぞ優雅な暮らしと言うヤツだ。
家具に埃が溜まっていないし生活している跡がある。 誰か居るのは間違いないだろう。
ふと、赤い扉が目に入った。
なんでここだけ赤いんだ?
ボクは恐る恐るドアノブに手を伸ばし扉を開けた。 キィィィ…。
さっきまで見て来た部屋とは違った。
ファンシーな家具達に天井からウサギや星などがぶら下がっていた。
そして1番目立っているのが大きな鏡だ。
何故か分からないけど鏡に呼ばれて居る気がした。
ボクは鏡に近付いた。
ピタッ…。
そっと鏡に触れてみた。
至って普通の鏡だった。
だけど、どうしてこんなに気になるんだろう。 ジッと鏡を見ていると鏡に写っているボクの口が開いた。
「ボクを殺したのは誰?」
「え?」
ボクを殺した?
鏡の向こうのボクがどんどん血で赤く染まって行く。
何がどうなってる?
鏡に映ったボクが喋った? 有り得ない。
鏡の向こうのボクが喋る事なんてない。
すると、鏡の中が歪み白い手が伸びて来て来た。 「!?」
ボクは素早く下がり銃を構えた。
「よいっしょ…。やっと繋がった!!」
出て来たのはうさ耳の男だった。
ツンツンとした白い髪に沢山のピアスが付いたうさ耳、真っ赤な瞳にパンクファッションを身に纏い大きな時計を首から下げて居た。
な、なにコイツ…? 男がこちらを振り返り近付いて来た。
「見つけた。アリスの代わり!!」
カチャッ。
銃を突き付けてるのになんで普通に喋ってるの? それにアリスの代わりって…。
「あ、銃を突き付けるのやめてよね。ボクは君にお願いがあって来たんだ。」
「お願い?」
カチャッ!!
扉が開き現れたのは敵の軍人達だった。
「侵入者だ!排除する!!」
そう言って銃を構えた。
まずい、撃たれる?!
ボクは慌てて銃を向けようとした。
ブジャァァァァ!!
軍人達の首から血が噴き出した。
「ボクが話してる時に邪魔しないでよね。」
うさ耳の男の方を見ると手にはトランプカードが握られて居た。
よく見るとカードにはベットリと血が付いていた。 まさか、コイツがこのカードで殺したの?
パラパラッと手慣れたようにカードをシャッフルしていた。
「今のアンタがやったの?」
「ん?あー、そうだよ♪コレでボクの話を聞いてくれる?」
下手に動かない方が良さそうだな。
「あぁ、分かった。話を聞くよ。」
「良かったぁ!!ボクはキミにアリスを殺した奴を殺して欲しいんだ。」
「アリス?アリスって童話かなんかに出て来るアリスの事か?」
「まぁ簡単に言うとそうだね。ボクは鏡の向こうの世界の住人なんだ。アリスが何者かに殺された。それは壊れた人形のようにバラバラにされてた。」 なんとも信じられない話だ。
ボクはポケットから煙草を取り出し口に咥え火を付けた。
「それでボクとなんの関係があるの。アリスとボクは関係無い筈だが…。」
「アリスとキミは深い繋がりがある。だからこの世界に繋がったんだ。」
「繋がり?ボクとアリスが?」
「ボクはアリスの殺した奴を殺したい。だれがボクのアリスを殺したのか知りたい。その為にはアリスが死んで無かった事にする必要がある。」
「必要?」
「犯人を動揺させる事が目的。そこから犯人を炙り出し殺す。」
成る程…。
大体の話が分かった。
まとめるとこうだ。
アリスは何者かに殺されバラバラにされた。
その犯人を探す為にアリスは死んでなかったと思わせ、ボロを出した犯人を殺すって事か。
「お願い!キミの力が必要なんだ!」
そう言ってうさ耳男が頭を下げた。
この世界に未練なんてないし、悲しむ人間なんて居ないだろう。
コイツの話に乗ってどうなったとしてもボクはどうでも良いと思うだろうな。
アリスを殺した犯人を殺せば終わりな話。
こっちの世界に戻れない訳じゃないし。
「まぁ、別に良いよ。」
「本当!?」
「あぁ。殺したらこっちの世界に返してくれんだろ?」
「それは勿論!キミの望むようにするよ!」
「なら良い。」
ボクは煙草を携帯灰皿に押し付けた。
「さぁ行こう!!」
そう言ってうさ耳男はボクの手を掴み鏡に入った。 カチャッ。
「おーいゼロ。どこに居るん…え?」
探索中のヤオは赤い扉を開け部屋の状態に驚いた。 敵の軍人達の死体が転がって居た事に。
そして大きな鏡が歪んでいた事にも。
ヤオは大きな鏡に近付いた。
「どこに行ったんだよゼロ…。」
そしてゼロは朝になっても現れなかった。
話 3
鏡の向こう側は真っ暗だった。
そして今ー。
「落下してるんだけど!?」
ヒュュュュウ!!
暗くて周り見えないし、どうなってんの!?
「アハハー!!死なないから大丈夫だよー!!」 「何でアンタはそんな余裕なの!?」
「アンタじゃないよ?ボクの名前はエースだよ。ACEって書いてエース。キミの名前は?」
落下しながら流暢(りゅうちょう)に自己紹介をして居る。
すると真っ暗だった空間にオレンジ色の光が現れた。
周りに色んな形の時計が現れた。
ボクは1つの時計の上に着地した。
改めて周りを見渡した。
時計や数々の扉が浮いて居た。
「ねぇったら!!名前教えてよ!!」
目の前にエースと名乗る男が時計を飛び越えながら大声で叫んだ。
「うるさいな。ボクに名前はないよ。」
「名前がない?どうして?」
「身寄りのない子供は名前がないんだよ。皆んなボクの事はゼロって呼んでたけど。」
「そうなんだぁ。じゃあゼロって呼ぶね!!」 「分かったよ。」
「おいエース。」
男の声が空間中に響いた。
「何してんだ。アリスの代わりを見つけたんだろ?さっさと来ないと扉が閉まるぞ。」
扉?
「あ!!そうだった!!ゼロ早く行こ!!」
そう言ってボクの手を取り乗っていた時計から降りた。
ヒュュュュウ!!
再びボク達は落下した。
「さっきの声の奴は誰だよエース!!」
「ボク達の協力者だよ!つまり仲間だよ。」
「つまり信頼出来るって事か?」
「そう言う事!」
落ちて居ると1つと開いている扉があった。
「あの扉の中に入るよ!!ボク達の世界の入り口だから!!」
吸い込まれるようにボク達は扉の中に入った。
パタンッ!!
ボク達が入ると勢い良く扉が閉まった。
ガチャーンッ!!
「ぐへっ!!」
「うわっ!!」
痛った…。
凄い勢いで床にぶつかったな…。
体が痛い…。
ん? 誰だこの足?
男の足が見えた。
「お前がアリスの代わりか?」
上から声がしたので見上げて見た。
金髪ベースの黒メッシュの長い髪はポニーテールにしてあって編み込みも入っている。
金と黒のオッドアイ、キラキラ輝く沢山のピアスに、両手首には鎖のタトゥーが入っていた。
エースと同じパンクファッションが良く似合って居た。
「ロイド!!乱暴に引き寄せなくても良いじゃん!!体痛いよー。」
「お前がのんびりしてたからだろ。扉が閉まったらこの世界に来れなかっただろうが。」
「ゼロの事を丁重に扱えって事!!怪我してない?」
「う、うん…。大丈夫だ。」
部屋を見渡すとたくさんの時計が壁にぶら下がっていて少し埃臭かった。
「ここは何処なんだ?」
「俺の店だ。まぁここは物置部屋だが。」
「時計屋なのか?」
「あぁ。」
通りで時計屋が沢山あるわけだ。
「コイツはロイド。ボク達の協力者さ。それでこの子はゼロって名前だよ。」
エースがロイドにボクの事を紹介した。
「宜しく。」
「こちらこそ。」
差し出された手を握った。
「ロイド以外にも2人、協力者が居るからまた紹介するね。」
「2人も居るのか?」
「あぁ。アイツ等はあまり自由に動けない立場なんでな。」
「訳ありって事か。」
「話が早くて助かる。」
ロイドは思った以上に話が進んだので驚いた様子だった。
「ゼロにはまず、この世界の事を知ってもらわないといけないんだ。協力者以外の人達に悟られないようにね。」
エースとロイドがこの世界の事を説明してくれた。
今ボクの居る世界はハートの国と呼ばれて居て、ハートの女王と呼ばれる女が国を占めて居る事。 アリスを殺した容疑者が何名か居る事。
ざっくりとした説明だが大体分かった。
「その容疑者達は何人ぐらい絞れてるの?」
「7人だ。」
「7人か…。多いんだな。」
「ロイドの調査した結果だから確実だよ。ロイドの裏の仕事は情報屋だから。」
へぇ…以外。
チリリリッ!!!
エースが持って居る時計が鳴った。
「はぁぁー。女王のお呼び出した。ボクは行くよ。ロイド、ゼロの事宜しくね。また明日来るから!!」
そう言ってエースは窓を開けて出て行った。
「女王の呼び出し?」
「この国の女王は我が儘でな。呼びたい時に呼ぶんだ。」
「あー、面倒臭い奴ね。」
「フッ。ゼロは口が悪いのか?」
笑いながらボクに尋ねて来た。
「産まれが悪いからな。」
「そうか。」
「それで?ボクは何処で生活すれば良いの?」 「ここで生活してくれて構わない。アリスが使って居た部屋を使ってもらうが構わないか?」
「別に良いよ。」
そう言うとロイドはアリスの使って居た部屋に案内した。
「この部屋だ。」
ゆっくりと薄い水色の扉を開けた。
部屋の中はお姫様みたいにレースやフリルがあしらわれぬいぐるみが沢山置かれた部屋だった。 「すっごい趣味だな…。」
「アリスは可愛い物が好きだったからな。」 ロイドは悲しい顔をして話した。
「明日詳しい話をするから今日は休んでくれ。」 「分かった。」
「おやすみ。」
「おやすみ。」
そう言ってロイドは部屋を出て行った。
ボクはベットに腰掛けた。
「大切にされてたんだなアリスは。」
机の上に置かれた写真盾を取った。
写って居たのはボクと同じ顔をした女の子が花畑を走って居る所だった。
「本当に似てるなボクに。」
笑った事のないボクは笑えるのだろうか…。
写真盾を持ったままベットに横になった。
「これからどうなるんだろ…。」
瞼が重たくなりボクはいつの間にか眠りに落ちて居た。
これから起こる物語がボク自身を変える事になるとは思いもしなかった。
。