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塚本美優 POV:

「美優先輩, 行っちゃうんですか? 」

沙織莉の声が, エレベーターホールに響いた.

慎和が, その声に気づき, 私の方を振り向いた.

彼の顔から, 笑顔が消える.

「美優, どうしてここに? 」

彼は, 眉をひそめて私を見た.

私は, 手に持っていた辞職願を, 彼に差し出した.

「お渡しするものが, あります」

彼は, 辞職願を無言で受け取った.

その表情は, 険しい.

「これは…どういう意味だ? 」

彼の声が, 低く響く.

「そのままの意味です」

「私, 辞めます」

私の言葉に, 彼は顔色を変えた.

「何を言っているんだ? 」

「君が辞めるなんて, 冗談だろう? 」

彼は, 辞職願を乱暴にデスクに叩きつけた.

「冗談じゃありません」

「もう, 疲れました」

私は, 彼の目を真っ直ぐに見つめた.

彼の顔に, 困惑の色が浮かぶ.

「疲れた? 」

「籍を入れる日だったから, こんなことを言っているのか? 」

「少し休めば, 元に戻るだろう」

彼は, そう言って, 私の肩に手を置こうとした.

私は, その手を避けた.

「そういう問題じゃない」

「あなたが, 私を裏切ったからじゃない」

彼の顔が, 青ざめる.

「美優…」

「君は, そんなことを言う子じゃなかっただろう」

「どうしたんだ? 」

彼の言葉に, 私は怒りが込み上げてきた.

「私は, ずっと我慢してきた」

「あなたの裏切りも, 嘘も, 全て」

「でも, もう限界なの」

私の声が, 震える.

彼は, 何も言えずに, ただ私を見つめている.

その時, 麻耶が, 笑顔で慎和のオフィスから出てきた.

「社長, お疲れ様です」

麻耶は, そう言って, 慎和の腕に抱きついた.

慎和は, 咄嗟に麻耶を突き放した.

麻耶は, 驚いた顔で慎和を見上げている.

「社長…? 」

「ごめん, 麻耶」

「ちょっと, 美優と話があるんだ」

慎和は, そう言って, 麻耶をオフィスへと押し戻そうとした.

麻耶は, 慎和の腕を掴んだまま, 私の方を見た.

その目には, 挑戦的な光が宿っている.

「美優さん, ごめんなさい」

「社長, 私のこと, 奥さんって呼んでくれるんです」

彼女は, そう言って, 慎和の腕にさらに強く抱きついた.

慎和は, 顔を赤くして, 麻耶を突き放した.

「麻耶, 何を言っているんだ! 」

「美優, 違うんだ」

彼は, 私に弁解しようとする.

しかし, 私の心は, もう冷え切っていた.

私は, 左手の薬指にはめていた指輪を抜き取った.

慎和が, ハッとしたように目を見開く.

私は, その指輪を麻耶に差し出した.

「これ, あげるわ」

「あなたたちには, お似合いよ」

麻耶は, 指輪を受け取ると, 冷たい笑みを浮かべた.

「ありがとうございます, 美優さん」

「でも, 私には, もっと素敵な指輪があるんです」

彼女は, そう言って, 慎和からもらったばかりの婚約指輪を見せびらかした.

慎和は, 顔を真っ赤にして, 麻耶を叱りつけた.

「麻耶, いい加減にしろ! 」

彼は, 私の方を向くと, 必死な顔で言った.

「美優, 信じてくれ」

「これは, 偽装結婚なんだ」

「僕は, 君と結婚したいんだ」

彼の言葉が, 私の耳には届かない.

私は, 何も言わずに, 彼に背を向けて歩き出した.

「美優! 」

彼の呼び声が, 私の背中に突き刺さる.

しかし, 私は, 振り返らなかった.

エレベーターの扉が開き, 私は中に乗り込んだ.

扉が閉まる直前, 私は, 彼が, 私が差し出した指輪をゴミ箱に投げ捨てたのを見た.

そして, 麻耶が, その隣で, 満面の笑みを浮かべている.

私の心は, 砕け散った.

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99回の裏切りと私の選択

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