話 2
有栖川莉緒 POV:
メッセージを送りながら、指が震えていた。怒りと吐き気が混ざり合ったものが、胃の中で渦巻いている。私は有栖川莉緒。カオスから美を生み出すグラフィックデザイナーであり、愛と信頼の上に人生を築いてきた妻。夫の愛人と、深夜にこんな汚らわしいメッセージのやり取りをするような女ではなかった。そんな女になるなんて、思ってもみなかった。
佳織のチャット画面の三つの点が消え、また現れる。彼女は返信を練っている。おそらく、設計図を描くのと同じ精度で、言葉を選んでいるのだろう。
やがて、メッセージが現れた。それはシンプルで、ぞっとするほど直接的だった。
`佳織:自分で見に来れば?`
続いて住所が送られてきた。都心の高級マンションだ。涼介が最近、建築雑誌で絶賛していた、超近代的なガラス張りのタワーマンションの一つだった。
心臓が肋骨を激しく打つ。これは挑戦だ。投げつけられた決闘の申し込みだ。
考える間もなく、私はよろめきながら立ち上がった。急な動きにめまいがして、ソファの背もたれを掴んで体を支えなければならなかった。痛む体の抗議を無視し、寝室に駆け込み、手近にあったジーンズとセーターを身につける。化粧なんてしなかった。鏡に映る、青白く、こけた目の女は、どうせ見知らぬ他人だったから。
夜明け前の薄闇の中、濡れた路面と滲む信号機の光をぼんやりと眺めながら、都心へと車を走らせた。頭の中は、疑問の嵐が吹き荒れていた。何を言おう?どうしよう?私の中の理性的で疲れた部分が、引き返せ、尊厳を持ってこの事態に対処しろ、涼介が帰ってきて、彼がでっち上げた哀れな言い訳を聞くまで待て、と叫んでいた。
しかし、傷ついた部分、一連の画像データで自分の人生が燃え尽きるのを見たばかりの部分は、放火犯の顔を見る必要があった。
無機質で威圧的な建物の来客用駐車場に車を停める。ロビーに向かって歩いていると、滑らかな黒塗りのハイヤーが歩道に停まった。後部座席のドアが開き、涼介が降りてきた。
彼は一人ではなかった。
続いて、若々しいエネルギーの塊のような北川佳織が現れた。彼女はスリムな体型を強調する仕立ての良いコートを着て、絹のような黒髪が歩くたびに弾んでいた。彼女は輝き、健康で、生命力に満ちていた――今の私が感じているものとは、すべてが正反対だった。
彼が何か言うと、彼女は笑った。明るく、屈託のないその声は、風に乗ってまっすぐ私の元へ届いた。涼介は微笑み返した。それは、ここしばらく私に向けられたことのない、本物の、無防備な笑顔だった。彼は手を伸ばし、彼女の顔にかかった髪を一筋払う。その指先が、ほんの一瞬、長すぎるほど彼女の肌に留まった。
その何気ない親密な仕草は、物理的な一撃のようだった。どんな写真よりも、それは雄弁に罪を物語っていた。
脳が判断を下すより先に、私の足は動き出していた。
「涼介!」
私の声はかすれ、冷たい空気の中でひび割れていた。
二人は凍りつき、声のした方へ振り返った。涼介の笑顔は消え、驚き、そして紛れもない苛立ちの仮面に変わった。佳織の表情は読み取りにくかったが、彼女の目が私を捉えた瞬間、何か勝ち誇ったような、計算された勝利の輝きがその奥に宿った。
「莉緒?なんでここにいるんだ?」涼介の声は硬く、冷たかった。彼は半歩前に出て、さりげなく私と佳織の間に身を置いた。守護者。ただ、私の、ではなかった。
「私がなんでここにいるのかって?」私は信じられないという気持ちで繰り返した。「それはこっちのセリフよ、涼介。一晩中電話してたのよ。何かあったんじゃないかって、心配で」
彼は一瞬、恥じ入るように視線をアスファルトに落とした。「スマホの充電が切れたんだ。新しいプロジェクトが決まって、チームで祝ってたんだよ。長丁場だった」
「チーム?」私は佳織に視線を投げた。彼女はまるで面白い芝居でも見る観客のように、冷めた好奇心でこの光景を眺めている。「彼女が『チーム』?」
佳織は、甘ったるい小さな笑みを浮かべた。「莉緒さん、ですよね?涼介さんからお話は伺ってます」
その声に含まれた見下すような響きは、息が詰まるほどだった。
涼介はなだめるように彼女の腕に手を置いた。「佳織、先に上に行っててくれないか」。彼は彼女を下がらせようとしていたが、それはまるで、私の厄介で不都合な感情から彼女を守り、庇っているように感じられた。
「いいえ」私の声には、切羽詰まったような荒々しさが混じっていた。「彼女もここにいて。何が起こってるのか知りたいの。今、ここで」
「莉緒、みっともない真似はよせ」彼は声を潜め、まるでパパラッチでも現れるかのように、人気のない通りをキョロキョロと見回した。彼の世間体。それがいつも最優先事項だった。
「みっともない?」私の笑い声は、もろく、乾いていた。「夫が一晩中姿をくらまして、その…愛弟子との写真を送りつけられて、みっともないのは私のほうなの?」
佳織の無垢な仮面がひび割れた。彼女は繊細で、芝居がかったため息をついた。「涼介、あなたが対処して。彼女…なんだか、普通じゃないみたい」
その言葉――普通じゃない――が、私の最後の理性を焼き尽くした。
「私の健康状態について、あなたに口出しされたくない」私は唸るように言い、一歩近づいた。
涼介は私の胸に手を当てた。優しくではなく、強く、私を押し戻すように。「もうやめろ、莉緒。ヒステリックになってる。家に帰れ。後で話す」
彼に押された力で、私はよろめいた。その不正義――かつては私の安全な港だった彼の手が、今や彼女を優先して私を突き放すために使われている――に、何かがぷつりと切れた。私は彼を押し返した。私の手のひらが、彼の硬い胸板にぶつかる。「私に触らないで!二度と!」
彼はよろめき、顔には驚きと怒りが入り混じっていた。「一体どうしたんだ?頭がおかしいぞ」
「おかしい?」私は叫んだ。その言葉が喉から引き裂かれるように飛び出した。「私を捨てて、嘘をついて、彼女と一緒にここに立っていて、おかしいのは私のほうなの?」
彼は答えなかった。ただ、冷たい拒絶の表情を浮かべて私を見つめるだけだった。彼は私に背を向け、佳織の肩に優しく手を置いた。「行こう。これは俺が何とかする」
その最後の行動、彼がこれほど決定的に彼女を選んだという事実が、私を打ちのめした。彼は一度も振り返ることなく、彼女を光り輝くロビーへと導き、私を冷たい濡れた路上に一人置き去りにした。
ガラスのドア越しに、佳織が肩越しに振り返るのが見えた。彼女はもう笑っていなかった。ただ、冷たく値踏みするような目で私を見ていた。まるで、すでに解決済みの問題を見るかのように。
建物の黒いガラスに映る自分の姿を見た。そこにいたのは幽霊だった――青白く、やつれ、狂気じみた目をして、頬には涙の跡が汚れていた。普通じゃない。もしかしたら、彼らの言う通りなのかもしれない。
家までの運転は、悲しみの霧に包まれていた。交通量も道順も覚えていない。ただ、車を停め、静まり返った私たちのアパートに入ったことだけを覚えている。
彼はまだ帰っていなかった。
鈍い痛みだった体中の痛みが、今やズキズキとした激痛に変わっていた。ソファに沈み込むと、コーヒーテーブルの上の鉢植えの蘭が目に入った。花びらは茶色くしなびれ、茎は悲しげに垂れ下がっている。水をやるのを忘れていた。二人とも。
何年も前に、涼介がこれをくれた時のことを思い出した。「莉緒みたいだ」彼はそう言って、繊細な花びらのカーブを指でなぞった。「優雅で、美しい。でも、本当に美しく咲くには、少し特別な手入れが必要なんだ」
今、それは枯れかけていた。他のすべてと同じように。
慰めを求める、絶望的で原始的な欲求が私を襲った。ママが必要だった。すべて大丈夫になると言ってほしかった。抱きしめて、ほんの一瞬でも世界が痛むのを止めてほしかった。
震える手で、母の番号をダイヤルした。
「莉緒?もしもし、どうしたの?こんなに早く」
「ママ」私は嗚咽した。その言葉はかろうじて聞き取れる程度だった。「今から…そっちに行ってもいい?少しだけ」
電話の向こうで間があった。ためらいが聞こえた。
「涼介さんのこと?」彼女の声は柔らかくなったが、そこには聞き慣れた疲労感が滲んでいた。「また喧嘩でもしたの?」
「それ以上なの、ママ。これは…」
「莉緒、よく聞いて」彼女は優しく遮った。「涼介さんはいい人よ。素晴らしい稼ぎのある人。どんな結婚にも、うまくいかない時期はあるものよ。あなたはもっと理解してあげないと。彼は仕事で大変なプレッシャーを抱えているの。わがままを言わないの。家に帰って、少し休みなさい。そうすれば朝には気分も良くなってるわ」
彼女の言葉は慰めではなかった。それは拒絶だった。彼女は私の痛みを聞いているのではなく、私の期待を管理し、娘の成功した結婚という完璧なイメージを保つために、ひび割れを繕っているだけだった。
「でも、ママ――」
「もう行かないと、あなた。お父さんと朝早くからゴルフなの。また後で話しましょう。いい子にしてなさい」
電話は切れた。私は一人だった。完全に、まったくの一人。最も私を愛してくれるはずの二人の人間に、見捨てられたのだ。
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話 3
有栖川莉緒 POV:
ブライダルブティックで、母と一緒に立っていた時のことを思い出す。ビーズ刺繍のウェディングドレスの重みが肩にのしかかっていた。「もし彼があなたを傷つけたら」母はそう言った。ベールを直しながら、その目は潤んでいた。「すぐに帰っていらっしゃい。あなたの部屋は、いつだってあなたの部屋よ」。それは空虚な約束だったと、今ならわかる。完璧な一日のための美しい感傷であり、失敗した結婚の messy な現実の中では、何の値打ちもなかった。
彼女は、壊れたバージョンの私が玄関先に現れることを望んでいなかった。彼女が望んでいたのは、成功した建築家の妻であり、彼女自身の良い選択を肯定してくれる人生を送る女だった。私の痛みは不都合であり、家族の肖像画についたシミだった。
許し。理解。母の言葉が頭の中で響く。どうすればこれを許せるというのだろう?これは、うまくいかない時期というより、私たちの人生の真ん中に巨大な裂け目が開き、涼介は私がその中に落ちていくのをただ見ていただけのように感じられた。
疲労が、ついに私を闇に引きずり込んだ。ジーンズを履いたまま、ソファで眠りに落ちた。冷たい革の感触は、温かいベッドの代わりにはならなかった。
暗闇の中で、見当識を失って目を覚ました。アパートはまだ静かで、空っぽだった。スマホの画面が部屋を照らし、その光が私の頭をズキズキと痛ませた。親友の詩織からだった。
「莉緒?こんな遅くにごめん」彼女の声は、早口でエネルギッシュだった。「あのクソ亭主、帰ってる?」
「ううん、詩織。帰ってない」私の声は、眠気とこらえきれない涙でかすれていた。
「当たり前よね。だって今、目の前にいるんだから」
血の気が引いた。「どういうこと?」
「私、今、新宿の新しいルーフトップバー『セレステ』にいるの。パートナーのレセプションでね。で、角のテーブルで、まるで王様みたいにアメックスのブラックカードをひけらかしてるのが誰だと思う?桐谷涼介よ。しかも、一人じゃない」
私は目を固く閉じた。知りたくない。でも、知らなければならなかった。
「若い女の子と一緒よ、莉緒。デザイナーズブランドで着飾ってる。さっき、ロビーのブティックでダイヤモンドのテニスブレスレットを買ってあげてた。紙袋を見たわ。彼女の手を光にかざして、うっとり眺めてた。彼は…夢中って感じだった」
苦く、空虚な笑いが口から漏れた。テニスブレスレット。涼介はもう一年以上、私にまともなプレゼントなんて買ってくれていなかった。去年の私の誕生日には、クレジットカードを渡して「何か好きなものでも買いなよ」と言っただけ。その仕草は、寛大さというより、取引のように感じられた。気遣うという努力を、アウトソーシングしただけ。
「私、あそこに行ってくる」詩織の声は低く、危険な響きを帯びていた。弁護士である彼女は、職業柄、対決することを厭わず、そして私を猛烈に守ってくれる。「この一杯1,200円もする水っぽいシャルドネを、あの完璧に仕立てられた頭にぶっかけてやる」
「やめて」私は素早く言った。彼女の忠誠心に、胸の奥に温かいものが広がった。一晩中、初めて完全に孤独ではないと感じた。「やめて。その価値もない」
「価値がないわけないでしょ!彼はあなたを侮辱してるのよ!」
「わかってる」私は囁いた。「詩織…私、彼と離婚すると思う」
その言葉は宙に浮き、私の舌の上で異質で恐ろしい味をさせた。
詩織は一瞬、黙り込んだ。再び口を開いた時、彼女の声は柔らかかった。「大丈夫?そっちに行こうか?今すぐ出られるけど」
彼女が仕事のイベントを抜け出し、後始末に追われる姿を想像した。すべて私のために。そんな重荷にはなれない。「ううん、大丈夫。あなたはあなたの用事があるでしょ。私はただ…考えなきゃいけないことがあるの」
「わかった」彼女はそう言ったが、その声にはためらいが聞こえた。「でも、何かあったら電話して。何でもいいから。それと、莉緒?」
「うん?」
「彼が一緒にいる女の子…北川佳織よ。彼の新しい弟子」
その名前は、すでに知っていたにもかかわらず、腹を殴られたような衝撃だった。それが確認され、これが単なる気まぐれな浮気ではなく、彼が仕事で尊敬する相手との、計算された不倫だと知ったことで、ナイフはさらに深くねじ込まれた。涼介は常に、職業倫理を非常に重んじる男だった。彼は社内政治や不適切な関係を軽蔑していた。彼がこの一線を越えるということは…それは、私たちの結婚の誓いを破っただけでなく、彼自身の信条をも破ったということだ。彼は、まったくの別人になってしまった。
「もう聞きたくない」私は震える声で素早く言った。
「わかった。朝になったらまた電話する」
電話を切った後、スマホに通知が光った。銀行からのアラートだった。
`共同名義の普通預金口座より、エクラ銀座にて2,500,000円のお引き落としがありました。`
二百五十万円。ブレスレットのために。彼女のために。私が家で、病気で心配している間に、彼は私のフリーランス収入の半年分に相当する額を、別の女に使っていた。
その不正義はあまりにも深く、あまりにも衝撃的で、私を行動に駆り立てた。私は彼の番号をダイヤルした。私の手はもはや震えておらず、冷たく硬い怒りで安定していた。
彼は二コール目で出た。
「莉緒、もう遅いぞ」彼の声は平坦で、苛立っていた。背景には、微かにピアノの音楽と柔らかな笑い声が聞こえる。
「彼女の誕生日なの?」私は、危険なほど穏やかな声で尋ねた。
「何の話だ?」
「あなたがたった今、北川佳織に買った二百五十万円のブレスレットのことよ。何か特別な日?それとも、あなたはインターン全員に、私たちの共同資金で宝石を買ってあげるの?」
間があった。「それは俺の金だ、莉緒。俺が稼いだんだ」
「私たちの、お金よ」私はガラスのように鋭い言葉で訂正した。「私たちが結婚した日に、それは『私たちのお金』になったの。私が自分のキャリアを保留にして、あなたのキャリアを支えることに同意した日に。あの時の会話、覚えてる?」
彼がうんざりして目を丸めているのが目に浮かぶようだった。「ああ、またその話か」
「ええ、またその話よ」私は言い返した。「私は一流のデザイン事務所のシニアデザイナーだったのよ、涼介。私には私自身の未来があった。でも、あなたは私にフリーランスになるように頼んだ。その方が柔軟に動けるし、あなたは二人分以上稼いでいるから、私の仕事は家を守り、あなたのキャリアを支えてトップに立てるようにすることだって。あなたは私を面倒見ると約束した」
私は彼を信じていた。暗黙のうちに。私は自分の野心を諦め、私たちの家を管理し、彼の我慢ならないクライアントたちをもてなし、彼が風邪をひいたり仕事で危機に陥ったりするたびに看病した。私は彼の人生を楽に、スムーズにした。彼が「私たちの未来を築く」ことに集中できるように。
そして今、彼はその犠牲そのものを、私に対する武器として使っていた。彼は私を、もう給料を払いたくない従業員のように扱っていた。
「気が変わった」彼の声は、氷のように冷たくなった。「もううまくいかない。離婚したい」
スマホが私の手から滑り落ち、ラグの上に柔らかく、鈍い音を立てて落ちた。
離婚。
彼が言った。私の、まだ形になっていない、必死の思いを、彼は冷たく硬い現実に変えた。私は彼から離れることを考えていたが、彼が私から離れていくとは、一瞬たりとも信じていなかった。
電話の向こうの沈黙が続く。そこには、彼の新しい人生の、遠い音だけが満ちていた。私がもはやその一部ではない人生。バーのピアノの音楽が、まるで私を嘲笑うかのように、私の結婚の葬式で陽気な曲を奏でていた。
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