1

小野凛の整った眉が、緊張でぎゅっと寄っていた。――だが、妊娠検査薬に浮かんだ“一本線”を見た瞬間、ここ数日胸の奥に溜め込んでいた不安が、霧が晴れるようにすっと消えていく。

「ドンッ!」

リビングのほうから、鈍い轟音が響いた。次の瞬間、トイレの扉が乱暴に蹴り開けられた。

凛ははっと我に返り、慌てて怯えた表情を作って入口を見た。瞳には濃い恐怖がにじむ。

入ってきた男は苛立ちを隠しもせず、怒鳴りつけた。「トイレにどんだけこもってんだよ。結果は?どう?」

凛の全身が小刻みに震える。端正な顔から血の気が引き、紙のように白くなっていた。目尻の赤い泣きぼくろさえ、今は色褪せて見えた。

目の前の男は、暴れ狂う獣みたいだった。いつ襲いかかって引き裂かれてもおかしくない――そう思わせるほどの凶暴さ。

男はずかずかと近づき、凛の細い腕を乱暴に掴み上げる。赤く充血した目で睨みつけ、喉の奥から絞り出すような声で吐き捨てた。「検査薬はどこ?見せろ」

凛は震える手で、それを差し出した。

男は一瞥すると、ふっと笑った。――けれど、その笑みは目に届かない。そこにあるのは危険な殺気だけだった。

凛は、それが男の怒りの前触れだと知っていた。

だが今回は怒鳴られなかった。代わりに、男は彼女の頬をそっと撫でる。動きはやけに優しいのに、口から落ちた言葉はあまりにも残酷だった。「大丈夫だよ、ベイビー。今日もう一度連れていってやる。今度も妊娠しなかったら――ずっとあそこに置いてやってもいいんだぜ」

凛の瞳の奥に、ほんの一瞬だけ冷たい光が走る。だがそれはすぐに消え、顔には極限まで怯えた表情だけが残った。大きな瞳には、今にも零れ落ちそうな壊れた涙の光。

男はその“無害な小動物”のような様子に満足げに笑い、彼女の手首を乱暴に掴んで別の部屋へ引きずっていった。

「バンッ!」

ドアが強く閉められる。室内にいた数人の女たちが、同時にこちらを振り向いた。どの顔にも感情はなく、ただ麻痺したような虚ろな目だけがそこにあった。

彼女たちは皆、凛と同じようにアメリカに売り飛ばされてきた女たちだった。この貸し部屋で、昼も夜もわからない生活を送りながら、島の権力者たちの慰みものにされる日を待たされている。

一か月前、凛もここへ連れて来られた。

彼女は小野家の長女。父親は母の実家の後ろ盾で事業を大きくし、順風満帆に見えていた。だが母は早くに亡くなり、しかも死後三か月も経たないうちに父は再婚した。継母はやがて娘を産んだ。凛の異母妹――小野乃愛。

最愛の娘を失った悲しみで祖父も病に倒れ、そのまま世を去った。それ以来、凛は小野家の中で――まるで最初から存在しなかったかのような、透明な人間になった。

凛は生き延びるため、ずっと身を低くしてきた。乃愛とは争わず、ただ目立たぬよう、言われるがままに耐えてきた。それでもなお、あの親子の仕打ちはあまりにも度を越していた。幼い頃からろくに食事も与えられず、着る物にも困らされた。それだけでは飽き足らず、彼らは小野家の財産すべてを奪おうとまでした。

そして何より許せないのは、二十一歳の誕生日の当日。薬を盛られ、二人が手を組んで彼女をアメリカ南東部の小さな島へ売り飛ばしたこと。

そこまで思い至り、凛の瞳はいっそう冷たく沈んでいった。

彼女がゆっくり歩み寄ると、部屋の隅にいた女が無言で場所を空ける。

本来なら、同じ境遇の者同士、身を寄せ合うべきなのだろう。けれど誰も凛に近づこうとしない。向けられる視線は、どれも怯えを含んでいた。

凛がここへ来た初日、すぐに会所へ連れて行かれたからだ。しかも“とんでもない大物”の相手をしたらしい――そんな噂まで流れている。

相手が誰なのかを知っている者はいない。だが、凛が戻ってきてからというもの、彼女は頻繁に妊娠検査に連れて行かれている。あの連中は、彼女を妊娠させて、それを利用して大金をゆすろうとしているのだろう。

相手は、相当な資産家に違いない。

短い髪の少女が、おずおずと近寄ってきた。不安を滲ませた声で囁く。「お姉さん……できてましたか?」

凛の掌が、ゆっくりと強く握り締められる。

会所へ連れて行かれたあの日。逃げ出そうとして、彼女は半ば無意識のまま薄暗い個室へ迷い込んだ。

扉を開けた瞬間、腕を掴まれ、そのままソファのそばへと乱暴に押しやられた。

凛は床に崩れるように膝をついた。次の瞬間、大きな手がいきなり顎を掴み、強引に顔を上げさせられる。視線の先にあったのは、底冷えするように暗く冷たい目だった。

本来、彼女の腕なら、あの男を殺すこともできたはずだった。

だが、喉元に突きつけられたナイフの刃が、それを許さない。勝ち目がないことを、凛は一瞬で悟る。

引き裂かれた服。身体を引き裂くような痛み。それが――彼女の初めての夜に刻まれた、唯一の記憶だった。

意識が闇に沈む直前、男の手の甲にあったヘナタトゥーが、揺れる光の中で不気味なほど妖しく浮かび上がっていた。

次に目を覚ましたとき、凛はすでにあの貸し部屋へ戻されていた。

凛は、これがまだ始まりにすぎないと知っていた。

その後も、彼女は再び外へ連れ出された。

男の後ろを黙って歩きながら、凛の頭の中では思考が高速で巡っていた。

(もう会所には行かない……絶対に)

逃げなければならない。帰って、復讐して――母の財産を取り戻すんだ!

だが男の腰には銃がある。軽率な行動は即、死に繋がる。

――賭けるしかない。

次の瞬間、凛は突然全身の力を爆発させた。男を突き飛ばし、そのまま階段へ向かって駆け出す。

男は一瞬虚を突かれ、反応が遅れた。まさか彼女にそんな力が残っているとは思っていなかったのだ。すぐに我に返り、荒々しく追いかけてくる。

「くそっ、逃げる気か! ぶっ殺してやる!」

凛はなりふり構わず、階段を駆け下りた。二階まで来ると、迷うことなく窓台によじ登った。

背後から男の手が伸びてくるのが見えた瞬間――彼女は考えるより先に、身を投げ出した。

次の瞬間、耳をつんざくようなブレーキ音が夜を切り裂く。

真正面から照りつけるヘッドライトの眩しさに、凛は思わず目を細めた。

彼女は衝撃で地面に崩れ落ち、そのまま座り込む。――コツ、コツ。硬質な革靴が石畳を踏む音が、ゆっくりと近づいてくる。やがて、その足音は彼女の目の前で止まった。

視界の端に、磨き上げられた黒い革靴が映った。そして頭上から、低く冷えきった声が降ってきた。

「――見つけた」

2

凛の瞳孔が、ぎゅっと縮んだ。

――あの男だ!

あの夜の光景が脳裏に蘇る。氷のように冷たい刃が喉元をなぞった感触。刃先は彼女の動脈にぴたりと押し当てられていた。

彼は低い声で囁いた。「俺のこと、知ってるか?」

知らないはずがない。

和国屈指の財閥・石神家の次男――石神颯介。“監獄帰りの狂人”と噂される男。

十六歳で石神家によってイギリスの海上刑務所へ送られた。そこに収容されていた囚人、いずれも極悪非道な罪を背負っている。

石神家に連れ戻された頃には、彼はすでにたった一人で刑務所の“支配者”になっていた。

手の甲に刻まれたヘナタトゥーは、孤島刑務所の所長が直々に入れたもの。それは彼の“支配者”としての証でもあった。

二十二歳で石神家を継ぐと、わずか三年で国内屈指の巨大財閥へと押し上げた。その影響力は絶大で、国家の中枢でさえ容易には逆らえないと言われている。

冷酷非情な手腕。情け容赦のないやり方。その名を聞くだけで、背筋が凍る者も少なくない。

だからあの夜、彼の下に押さえつけられていたとき、凛は声一つ上げることができなかったのだ。

そして今――その“厄神”が目の前にいる。凛の心臓が、喉元までせり上がった。

さっき彼は言った。――見つけた、と。

凛は、ただ“タイミングが良すぎる”と感じていた。あの夜、彼に抱かれてから――ちょうど一か月。

彼がここへ来た理由が、妊娠の有無を確かめるためだと考えれば辻褄が合う。

あの気まぐれで残酷な男のことだ。もし本当に妊娠していたら、自分の末路が悲惨なものになるのは間違いなかった。

凛は体を強張らせたまま、身動きひとつできない。

次の瞬間、背後から伸びた護衛の手が彼女の手首を掴み、強引に立たせた。

視界に飛び込んできたのは、鋭く整った男の顔立ち。

「……俺のこと、忘れたか?」

声にはかすかな笑みが混じっている。だがその目の奥は、凍てついた深い水底のように冷え切っていた。

その視線は、あまりにも恐ろしかった。凛の胸の奥では不安がざわめいていたが、表情には一切出さない。ただ、薄く涙の膜を張った瞳で彼を見つめ返す。

颯介の唇が、笑っているのかいないのか分からない形に歪む。

少し距離があるはずなのに、彼の全身から放たれる圧のような冷気が、肌を刺すように伝わってきた。

そのとき――階段の奥から、さっき凛を追っていた三人の男が飛び出してきた。だが玄関先にずらりと並んだ黒塗りの車列を目にした瞬間、全員が足を止める。

そして凛の隣に立つ男の顔を見た途端、何かを悟ったように顔色を変え、踵を返して建物の中へ逃げ戻ろうとした。

彼らの動きは速い。だが、颯介のボディーガードたちはそれ以上に速かった。

――パン、パン、パンッ!

乾いた銃声が、すぐ耳元で弾けるように連続して響いた。

凛は、見てしまった。逃げ遅れた三人の背中に、次々と赤い血が弾けたのを。そのうちの一人はまだ息があったらしく、ボディーガードに両腕を掴まれ、引きずられるようにして颯介の足元へ放り出される。

「石神社長!俺が悪かった!助けてくれ、もう二度としない!」

男は苦痛に顔を歪めながら、必死に手を伸ばし、颯介のズボンの裾を掴んだ。

男は喉の奥で低く笑った。そして無造作に片足を上げ、男の撃たれた箇所の上にゆっくりと乗せた。

「俺まで出し抜こうとした度胸だけは買ってやる」

そのまま、靴底でわずかに踏み込む。「そんなに金が好きなら、少し早めにあの世へ行け。香典代くらいはくれてやる」

淡々とした声とは裏腹に、足元の男は喉が裂けるような悲鳴を上げた。

黒い革靴の縁から、赤い血がじわりと滲み出し、石畳へと流れ落ちていく。

凛はぎゅっと拳を握りしめる。

――やっぱり。さっきの直感は間違っていなかった。

この男がここに現れたのは偶然なんかじゃない。

自分も、颯介も、誰かに嵌められたのだ。

だからあの夜、会所の責任者の目をかいくぐって逃げ出せた。最初からすべて仕組まれていた。連中は颯介があの晩、会所に来ることを知っていたのだ。

そのとき、男の視線がゆっくりと凛へ向けられた。その瞳の奥には、ぞっとするほど歪んだ愉悦が浮かんでいた。「次は――お前だ」

凛は静かに息を吸う。頭の中では、思考が目まぐるしく巡っていた。

颯介は明らかに、凛をこの詐欺グループの一員だと誤解している。

この状況では、すべてが強制されたかのように振る舞い、自らをその一味から切り離さなければなりません。さもなければ、彼女もまた死を免れないだろう。

瞬きひとつの間に、先ほどまで恐怖に揺れていた瞳が、すっと光を失った。焦点の合わない、虚ろな目。

颯介はじっと彼女の目を覗き込む。だがそこには怯えも、計算も見えない。ただ、鈍く濁った空虚さだけ。

二人は五分間も見つめ合った。

あの夜、彼の下にいたときの彼女も――まさにこんな、生気の抜けた顔をしていた。

(……本物の馬鹿か?)

颯介の眉がわずかに上がる。興味の色が、その目に滲んだ。大きな手が凛の頬に触れる。指先がなぞった肌は、柔らかく、きめ細かい。

凛は無表情を保ったまま、心の奥でぞわりとした悪寒に耐える。

不意に、彼は彼女の頬を軽く叩いた。その瞬間、瞳の奥に冷たい光が宿った。「お前が馬鹿でも、見逃してもらえると思うな」

凛の心臓が、鋭く跳ねた。次の瞬間、ボディーガードに両腕を掴まれ、そのまま車へ押し込まれる。

道路脇に建つ白い建物の陰から、ひとりの男がゆっくりと姿を現した。その顔には、重い緊張が刻まれていた。

男は、車が遠ざかっていく方向をじっと見送った。そして耳元のワイヤレスイヤホンに指を添え、低い声で言う。「朱雀を見つけた」

イヤホンの向こうで、女の切羽詰まった声が弾ける。「だったら早く連れ戻しなさい!」

男は眉間をきつく寄せたまま、言いにくそうに告げた。「……石神颯介に連れて行かれました」

一拍の沈黙。「どの石神颯介?」

男は黙り込む。

さらに一分ほど経って、女の声の温度がすっと落ちた。慌てた気配が消え、冷静さだけが残る。「朱雀なら大丈夫。あの子の腕なら、石神颯介の手からだって抜けられる。すぐ帰国しなさい。こっちで私が段取りを組む」

「了解しました」

3

帝都。

小野凛はぼんやりと目を覚ました。視界に入ったのは、見知らぬ天井。

起き上がろうとして――すぐに気づく。手足が縛られていた。身体はベッドの上で、大の字に拘束されたままだった。

凛が力を込めて身をよじると、手首と足首をつなぐ鉄鎖が澄んだ音を立ててぶつかり合い、その金属音だけで、胸の奥が冷え切った。

縛った相手にも、一応の情けはあるらしい。手錠の内側には綿が一周巻かれていた。

凛には、石神が自分をどこへ連れてきたのか分からなかった。

けれど――落ちた先が閻魔の手の中だということだけは、はっきり分かっていた。無事に出られるはずなどなかった。

「……起きたか」

部屋の隅から、低く、冷えた声が落ちてくる。

凛は全身がびくりとこわばり、いっそう身動きが取れなくなった。――この死神のような男を、下手に怒らせたくない。

凛はそっと首を巡らせ、声のした方を見る。

男がソファに腰を下ろしていた。半身は薄闇に溶け、指先には明滅する火――煙草の火。室内に淡い煙草の匂いがゆっくり広がっていた。

颯介が立ち上がり、静かな足取りでベッドへ近づく。彼は見下ろすように、寝かされた凛を観察した。

手のひらほどの小さな顔は血の気がなく青白い。だが、目尻にある赤い泣きぼくろだけがやけに目を引いた。わずかに吊り上がったまぶたと相まって――小狐のようだった。

彼は一言も発さず、ただ静かに凛を見つめ続けていた。

その視線は、必死にもがく獲物を見る猟師のそれ――冷たく、残酷だった。

凛はぱちりと瞬きをする。澄んだ瞳の奥には、戸惑いだけが浮かんでいる。

そのとき、秘書の渡辺晃が入ってきて、書類の束を恭しく差し出した。「石神社長、報告が出ました」

颯介の視線は、なおも凛の顔に据えられたまま。「……読め」

その一言を聞いた瞬間、凛の胸がひゅっと締まる。

報告?

何の報告?

――まさか、身体検査の結果?

試薬の検査など確実ではない。けれど、今の凛には賭ける勇気がなかった。

もし本当に妊娠していたら、颯介が“素性の知れない子ども”を残すはずがない。

石神家は桁違いの名門だ。私生児など、受け入れる余地すらない。

――時間を稼がなきゃ。

そう決めた凛は、わざと大きく身をよじって暴れ出した。手錠と鎖がぶつかり合う金属音が、広い部屋にやけに響き渡った。

颯介は眉根をきゅっと寄せ、いかにも鬱陶しそうにわずかに顔を横へ向けた。

その仕草だけで、ボディーガードは察したらしい。どうせ逃げられるはずがない――そう確信したように、男は前へ出て、凛の四肢の拘束を外しにかかった。

凛は上半身を起こした。さっき暴れたせいで、ゆったりした襟元が大きくはだけ、白い肌があらわになる。水に揺れるようにゆるく波打つ茶色の髪が小さな顔に貼りつき、大きな瞳には無垢な色が満ちていた――まるで屠られる前の子羊のように。

颯介の視線が、彼女の胸元で数秒止まる。黒い瞳が、わずかに深い色へと沈んだ。

その変化を凛は敏感に察した。怖いもの知らずを装って身を乗り出し、両腕を伸ばして彼の首に抱きつく。頬を甘えるように彼の首筋へすり寄せた。

不意を突かれた颯介は、とっさにこの女を振り払おうとした。だが彼女の体から漂うほのかな香りに、伸ばしかけた手は、なぜか軌道を変え、細い腰へと回される。

その様子を見た晃は、気まずそうに視線を伏せた。

凛はその一瞬の隙を逃さない。素早く彼の手元から報告書をひったくると、わざと上下逆さまにして眺めながら、子どものように無邪気な声を出した。「わぁ、なにこれ。おもしろーい」

だが視線だけは素早く文字列を追う。ある数値を見つけた瞬間、胸の奥に冷たい汗が流れた。

――やっぱり、身体検査の報告書だ。

幸いにも、表示は「妊娠なし」。

凛は内心ほっと息をつきながら、興味津々を装って紙をひらひら振り回す。

びりびり、と紙の擦れる音が静まり返った部屋に響いた。颯介は、そんな彼女の“狂ったふり”を、ただ無表情のまま眺めていた。

晃は推測するように言った。「石神社長。このお嬢さんはおそらく知的に問題があり、だからあの連中に会所へ売られたのでしょう」

颯介は凛の腕を強く掴み、身動きできないようにする。冷えきった視線が、彼女の顔の上をゆっくりとなぞった。

数秒後、彼は凛の小さな顎を指でつまみ、顔を近づける。声にはどこか歪んだ愉悦が滲んでいた。「……バカでも悪くない」

凛はぽかんとした表情のまま彼を見つめる。だが胸の内では激しく動揺していた。

その言葉の意味くらい分かる。――彼は、自分を手放すつもりがない。

晃の口元がぴくりと引きつる。「若様、本当にこの方に決めるのですか? お婆様を怒らせませんか」

「お婆さんは俺に早く結婚しろと言っていたはずだ。 そう伝えておけ。俺の“清白”はこのバカに奪われた。なら当然、責任は取らせる」

その言葉に、凛は心の中で叫んだ。(奪われたのはどっちよ……!)

晃はすぐに頷く。「承知しました。すぐにお伝えします」

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愛しの妻は、か弱いフリした猛獣でした

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