話 1
朝から降っていた雨は、午後の授業が終わっても止む気配はなかった。
ホームルームが終わってから、僕は、バス停を目指し、革製のカバンを傘代わりに使って、走り始めた。
何人か同じようなことをする生徒もいたが、やはり、相合傘をしているリア充共が、雨の日には湧くようだ……
爆発してしまえばいいのに……
そんな不純なことを考えている間に、裏門近くのバス停にたどり着いた。
バス停に着くと、僕よりも早く、バス停に着いている人がいた。スカートの色からして、3年生だ。
僕は、バス停の中に入り、タオルを取り出した。
『あの先輩、ビシヨビショだし、めちゃくちゃ可愛い。
シャツが透けて、目のやり場に困るな。』
と思いながら、
「あの、よかったら、タオルお貸ししますよ?」
と、尋ねた。すると、
「ありがとう、でも、あなたのものだから、あなたが使ってください。」
「もう一枚あるので、大丈夫です。」
「で、でも……」
「下着、丸見えですよ?」
「え!?そ、そういうのは、早く言ってよ〜……、じゃあ、遠慮なくかりますね。」
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
綺麗な声で、僕にお礼を言った。
僕は、バス停のベンチに座った。タオルを首にかけ、ポケットに入れていた、スマートフォンを取り出して、友達からのメールを返信していたら、
「ねぇ、君、名前なんって言うの?」
「ふぇ!?」
声の聞こえた方を見ると、彼女の顔があった。
「だから〜」
「あ、その、えっと、あ〜!!」
「ねぇ、ちゃんと聞いてるの?」
「ちょ、近くないですかああああ!!!!」
無意識的に距離をとってしまった。
「これくらい普通だよ。で、君の名前は?タオルのお礼がしたいからさ、教えてくれる?」
「は、はい。僕の名前は、冴河 裕太《さがわ ゆうた》です。でも、あなたも名乗るべきなんじゃないですか?」
「私のことは、好きなように呼んで。それでいいでしょ?」
上目遣いは、ずるい。こういう時の女子は、強いなー。
「わかりました、では、先輩と呼ぶことにします。」
「君の学年聞いてなかったね、何年生?」
「2年生です、先輩は、3年生ですよね?」
「まあ、なんでそんなことまで知ってるの?まさか、あなたストーカー?」
「ストーカーじゃないですよ。スカートの色見ればわかりますよ。」
「そうかな〜?大抵の生徒は分からないと思うけど……」
「ま、まあ、元々生徒会に所属していましたしっ、今も少し手伝いで生徒会の仕事をしていますから、そんなの当然ですよっ」
「本当かな〜?」
「嘘じゃないですよ!!別に同じ学校なんですから、スカートの色で学年が分かれているくらい常識でしょ!!」
少し焦り気味に言ってしまった。傍から見たら、俺、めちゃくちゃ怪しいな。
「ふふっ、君、とても面白いね。学校同じ人で、私に話しかける人あんまりいないから、新鮮なのかな?」
「勘弁してくださいよ……」
そこからは、ごく普通の他愛ないくだらない話をバスを待っている間、ずっとしていた。
「ところで先輩、名前、聞いていませんでしたね?」
「あ、バス来た。じゃあ、私、行くね。あと、名前は、·····雨沢 雪乃《あまさわ ゆきの》、今日は、楽しかったよ。裕太くん」
不意打ちのように、彼女は、僕の右の頬に、キスをした。
一瞬、フリーズして、手を振る先輩に、手を振り返せなかった。
「なんだったんだ、今の。」
僕は、右の頬を、触りながら、つぶやいた。
ヤバイ、頭の中が沸騰しそうなくらい熱い!!
ダメだ、思考回路が焼け切れてしまう……
「クソっ……」
俺は、雨が降っている道路に飛び出した。
「雪乃先輩っ!!あなたの事を愛します!!」
俺は、梅雨の雨の中で叫んだ。
もう、この思いは止まらない!!
私は今、うつむいている。
その理由は、あまりしゃべったことのない人に、あんなことをして、少しの羞恥心が帰ってきているからである。
「……なんで私あんなことしたんだろう。」
思い出すだけで、私は、頭の中で、何もかもが、沸騰するような感覚がした。
あぁぁぁぁぁっ‼
なんで私あんなことしてしまったんだろうっ‼
恥ずかしいっ‼
ダメダメ、私は、クールで綺麗な女性のイメージを崩さないようにしなきゃ。
「でも……」
私は指で唇に触れた。
あの感覚はまだ消えていない。
いや、この感覚は一生忘れないと思う。
「……私の、ファースト、キス」
私はボソッとつぶやいた。
熱いっ‼
空間ではなく、私の頭の中が熱いっ‼
夏が近づいてきているのに、私の頭は、夏の気温よりも熱いような気がしますっ‼
「……なんで私はこのようなことで動揺しているのでしょう。」
そう、私は人をからかうような人間であって、人に照れさせられる人間ではないのである。
「ダメだ、別のこと考えよう。」
私は、切り替えのできる女なのである。
そういえば、最初に彼に会ったのって去年だったっけ……
「うぉっ‼」
「きゃっ⁉」
去年の4月14日
あの日、私は、クラスで集めたプリントを理科準備室に運んでいた。
私は運悪く、階段から足を滑らせてしまった。
プリントもあたり一面に散らかしてしまった。
どうやら、後ろには、人がいたようで、その人にぶつかったが、倒れることはなかった。
「……大丈夫ですか?」
彼は、私の態勢を元に戻し、プリントを集め始めた。
その当時の私は、まだ眼鏡を付けていた時期で、今よりもはっきり顔を相手に見せるような人間ではなかった。
そのため、今日、彼に会った時、彼は私にあったことがあることすら知らなかった。
「はい……、大丈夫です。それより、プリントは、私が集めるので、結構ですよ……」
「いえ、俺、人を助けるのって結構好きなんです。」
この時は、まだ、一人称が『俺』だったんだよね。
「……ところで、君、名前何っていうの?」
「あ、俺は、1年の冴河裕太です。ところで、そちらは?」
「私は、2年生だよ。でも、名前は教えてあげられない。」
「俺には聞いたのにっスか……」
「それが先輩の特権ですっ‼」
「ケチだな~」
「もうっ‼そんなことより、私、早くこのプリントもって行かないとっ‼」
「この量を一人で運んでたんスね、俺も手伝います。」
「えっ、でも、これ以上迷惑かけられないよ。」
「何言ってんですか、先輩、めちゃくちゃふらついていたんですよ。だから、階段上ってるとき、倒れないか心配で、後ろつけてたんですよ。」
「……っ⁉」
私はこの時、キュンと来てしまったのである。
「す、す、す、す……」
「あの、先輩?」
「このストーカー‼」
「いや、俺ストーカーとかじゃないですよ‼確かに今のいい方的に誤解されるのは当たり前ですけど、俺は、心配で……て何笑ってるんですか‼」
「いや、冗談で言ったつもりだったんだけど、君が予想以上に、弁明するところが面白くて、ついっ‼」
「いや、「ついっ‼」じゃないですよ。聴く人が聞いたら、本当にストーカーで通報されますって。いや~、焦った~。」
「ゴメン、ゴメン。でも、思い出すだけで笑えて……」
「もういいから、行きますよ。早く持って行かなくちゃいけないんでしょ?」
「あ、そうだった。理科準備室までお願いします。」
「あいよ。先輩って面白い人っスね。クラスで人気ですか?」
「ううん、私はいつも、一人だよ。」
「……っいない」
「えっ⁉」
「先輩のクラスの人たち、もったいないっスね。」
「そうかな……」
「そうですって‼」
「いや、たぶん私から離さないだけで、みんな私に話しかけようとしてくれてるんだと思うけど私は、人と馴染めないから。」
「そんなの、関係ねぇーっスよ。」
「えっ⁉」
「先輩、何か勘違いしてるっスから、一つ、アドバイスです。」
「はい……」
「みんなと、もう少し打ち解けてみてください。きっとうまくいきますよ。」
「私そんなこと……」
「できますよ、先輩なら。だって、先輩、素敵ですもん。」
「……もうっ‼先輩はからかっちゃダメ、なんだから」
「は、はい、すみません。でも……」
「でも?」
「恥ずかしがってる先輩もめちゃくちゃ可愛いです」
「君、よくそんなことを恥ずかしげもなく言えるね」
「俺だって、表情に出ていないだけで、めちゃくちゃ恥ずかしいんですよ……」
「そ、それは、ごめん……」
「「……」」
ん〜、気まずい
「ま、まあ、人は誰しも恥ずかしい経験をすることで成長するとも言うし、いいんじゃないかな?」
「そ、そうですよね!!さすが先輩いいこと言う!!」
「で、でしょ!!じゃあ、そろそろ着いたから……」
そうこうしているうちに、私たちは、理科準備室の前に来た。
「ありがとう冴河君、手伝ってくれて。」
「いいっスよ、こんなの。困ってる人がいたら助けるのが俺のポリシーっスから。」
私は冴河君が持っていたプリントを受け取り、
「じゃあね。」
そう言って理科準備室に入った。
「遅かったね、雨沢君。」
「すみません、階段で転びそうになってしまったので。」
この人は、私のクラスの担任の野良井《やらい》先生。私の最悪の敵である。
「それは危なかったねぇ~」
「いえ、特に怪我はしていないと思うので大丈夫です。」
「いや、心配だから、先生が本当に怪我をしていないか……」
先生は椅子から立ち上がり、部屋の鍵を閉めた。
「私が調べてあげよう。」
「な、何してるんですか……」
そして、着ていたワイシャツのボタンをすべて外し、ベルトまで外していた。
「何って決まってるだろ~、検査の時間だよっ‼」
「……っ⁉」
私は、そのまま、壁に押さえつけられた。
「は、離してください‼」
「君、叫んでも無駄だって知ってるよねぇ~、この部屋、防音なんだよ。」
「嫌ぁ~」
「その表情だよっ‼私が欲しているのは、青い果実の苦しんでいる顔が見たかったんだよ‼さあ、このままお前を壊してやるよぉ‼」
「きゃっ‼」
ブレザーとワイシャツのボタンを、一気に外され、そして履いていたタイツでさえ、一気に破られてしまった。
『ダメだ、もう、私、終わるんだ……』
その時、
‶カチャッ″
部屋の鍵が開く音がした。
「お、先輩大丈夫っスか?」
「……冴河君、助け」
「なんだ君は‼私たちは今、進路相談をしてるんだ。出て行きたまえ‼」
「何言ってんスか、あんた」
「はぁ?」
「あの~、お楽しみ中悪いんスけど、野良井先生、あんた、これで積っスよ。」
「何を言っているんだ君は……」
「県警の川崎というものです。野良先生、あなたを、強制わいせつ罪の現行犯で逮捕します。一緒に来ていただきますよ。」
「バカ言うなっ、貴様ら警察が、この場にいることすらおかしい‼」
「バカはお前だ、野良井。俺がなぜ今日先輩に接触したか知らねぇだろ。」
「えっ⁉」
「川崎さん、お願いします。」
「ああ、裕太君。あなたへの被害届が14件着ていたんです。なので、ちょうど知り合いの子が入学する高校に野良井さん、あなたがいたので、協力してもらいました。」
「なん、だと。初、証拠はどこにあるんだ‼証拠を出せ‼」
「証拠ならこれだ。」
冴河君は、ポケットからスマホを取り出した。
『は、離してください』
『君、叫んでも無駄だって知ってるよねぇ~、この部屋、防音なんだよ。』
それは、さっきまでの様子の動画だった。
「そ、それの動画、どうしたんだ‼」
「撮りました」
「だからどうやって撮ったのか聞いているんだ‼」
「知らないんですか?先輩の髪にヘアピンついてるでしょ?それ、カメラですよ。」
「なん、だって……」
「あ、そうそう、これ、警察の協力ってことで、警察の備品借りてるんで、壊したりすると、公務執行妨害でさらに逮捕されますよ。」
「この、ガキが……」
「では、野良井さん……」
川崎刑事は、野良井先生に近づいていき、
「17時45分逮捕。」
「クソぉ‼」
こうして、私の処女と、ファーストキスは、一人の高校生と、刑事によって守られた。
「すみません、先輩。利用したりしてしまって。」
冴河君は、着ていたブレザーを私に渡した。
「いいよ、それよりも……」
私は眼鏡をはずし、
「助けてくれて、ありがとう。」
私のできる最高の笑顔で言った。
「さ、さっきも言ったんですけど、俺は、人助けは、好きでやってるかけですよ。」
「あ、照れてる~」
「て、照れてないっすよ。」
「ほんとかな~」
「ああ、もうっ‼先輩も、警察署、行ってくださいね。被害届と、事情聴取ですけど」
「うん、わかってるよ。」
この翌日から、私は伊達メガネをはずし、学校に登校するようになった。
「懐かしいな。なんで今更思い出してんだろう、私。」
バスに揺られながら、私はつぶやいた。
「あ、もうすぐ着く。」
私は、ボタンを押し、バス停に降り立った。
バスを降りると、雨は止んでいて、空には、虹が架かっていた。
私の心も晴れ模様、もう雨に降られたりしないんだからっ!!
話 2
僕は、家に帰って、僕は、冷えた体を温めるため、風呂に入りながら、友人に電話をかけていた。
「それは、とても難しい恋かもね。」
「どうして?何が無理なのか教えろよ。聴いてやろう、イケメンくん!」
「僕をイケメンって呼んでる時点で、おかしいんだよ。ちゃんと名前で呼んでみなよ!」
「わかったよ、氷雨!でいいのかな?」
「まあ、僕の親友が、そこまで頼って来てくれるなら、本気で答えなきゃだよね。」
こいつ本当ウゼー。
「じゃあ、どうしたらいいんだよ。俺は、今後。」
「そうだねー.......、試しに、告白?」
「バカ、それは、おかしいよ。最低でも、早いって。」
「でも、善は急げ!て言うし、行ってこれば、いいじゃん?」
「僕に同意を求めるな。あー、そろそろ上せてきた。じゃあ、またな、イケメンくん!今後ともよろしく。」
「うん。また明日。頑張れよ、主人公。あ、フラグは、間違っても、回収するなよ!」
どういう意味だよ。
そして、僕は、電話をきり、風呂を出た。
風呂を出たあと、リビングで、冷たいお茶を飲んでると、母さんが、帰ってきた。
「ただいま、裕太。」
「おかえり、母さん。今日は、早かったね。何かあったの?」
「お母さんね、再婚しようと思うの。」
「うん?」
「それで、相手さんが、今から、うちに来るって、さっき電話があったから、裕太も、適当にちゃんとした服に着替えておいて。」
ちょっと待てーーー、母さん、何も説明受けてないぜ。再婚とか!
「母さん、ちょっと、説明を求める!」
「説明も何も、言った通りの意味よ。わかったなら、早く着替えなさい。」
なるほど、そういうことか。ともかく、今は、着替えるのが先だ。ちゃんとした服なんて、あんまり、というか、持ってない。とりあえず、制服でいいか。
制服に着替えた僕は、また、リビングに向かい、スマホの通知を確認して、ゲームを始めてしまっていた。
10分くらい経って、インターフォンのチャイムがなった。
「はい、どちら様で.......。」
ドアを開けると、ヤクザかマフィアのどちらかに、入っていそうな顔つきの男性が、たっていた。
「こちらのお宅は、冴河宅でよろしかったでしょうか。」
「はい、合ってます。こんな所でもなんですし、ど、どうぞ中に入ってください。」
「では、失礼致します。」
そう言うと、玄関に入ってもらった。その時、1度あったことのある女の子が、一緒に入ってきた。
2人をリビングに案内し、お茶を出して、母さんを呼びに母さんの部屋に向かった。
「母さん、ヤクザに嫁入りするの?」
少し強めの口調で、問いかけた。
「何言ってるの、嵐さんは、ヤクザなんかじゃないわよ。」
だよな、さすがの母さんでも、ヤクザは無理か。
「ゴメン、人を見た目で判断してしまった。ところで、もう二人とも来て、リビングで、待ってもらってるから。」
「嘘、すぐ行くから、2人と何か話していて、今後のためにも。」
「なんだよ、それ。」
そう言いながら、僕は、母さんの部屋を出て、2人のいる、リビングに向かった。
「すみません、もう少ししたら来ると思います。」
「そうか、では、自己紹介をしておこう。私は、雨沢 嵐《あまさわ あらし》という者だ。そして、こちらが.......。」
「雨沢 雪乃です。初めまして。」
「は、初めまして。冴河 裕太と申します。母がお世話になっています。」
「よろしくな、裕太君。で、私の呼び方だが、無理に、お義父さんと、呼ばなくても構わない。君の父親とは、面識は、あるし、何かあったら、頼まれている。」
「こちらこそ、嵐さん。嵐さんは、お仕事は、何をやっているのでしょうか。」
「私は、刑事をやっている。雪乃は、君と同じ学校に通っているのだよ。」
「はあ。あの、うちの母と結婚なさると伺ったのですが、もう、籍とか入れられているのですか。」
「いや、まだ入れてない。だが、結婚しても、姓を変えないことにしてあるから、そこは、心配しなくてもらって結構だよ。」
心配は、そこでは、無いのだが.......。
「お父さん、私、裕太くんと、二人で話したい。」
なんですって!?
「いいんじゃないか?裕太君、少し娘と、話してはくれていだろうか。」
「わかりました。場所は.......。」
「裕太くんの、部屋でどう。ダメかな?」
上目遣いはずるい。ヤバい、惚れちゃいそう。まあ、もう、惚れてんだけど。
「わかりました。僕の部屋に行きましょうか。」
僕は、先輩を僕の部屋に案内した。
「どうぞ、どこでもいいので、座ってください。」
とベットに座りながら、僕は、言った。
「じゃ、じゃあ、失礼します。」
と言って、僕の隣、しかも、ゼロ距離の位置に先輩は、座った。
「なんで、僕の隣なんですか。」
と僕が少し恥ずかしげに聞くと、
「君が、どこでもいいから座れと言うからだろ。だから、1度座ってみたかった君の隣に座ったんだよ。ダメ、だったかな?」
上目遣いは、ズルいって。やばい、距離が近いせいか、なんかいい匂いがする。落ち着け、とりあえず、何か、話さなくちゃ。
「ねえ、部屋、結構綺麗にしてるんだね。なんか、私の中の評価がかなり上がったような気がするよ。」
「僕、あんまりもの持ってないので、ちらからないというか、なんというか。とりあえず、あんまり服とかも持ってないので、今日は、制服なんです。」
「でも、私は、君の制服姿好きだよ。なんか、見栄を張ってる感じで。」
「喧嘩売ってます?買いますよ。いくらですか?」
「売ってないよ。冗談冗談。あのさ、ちょっと真剣な話してもいいかな。」
何!?このタイミングで切り出されるの。
「真剣な話ってなんですか。」
「私、実はね.......。」
なんでそんなに、間を開けるの?
「君のことが、好きすぎて、うちの親に結婚して欲しくないの。」
「はい?」
え?今、告白された?このタイミングで?僕が?
そんなことを考えている間に、
「だからさ、私と、結婚を前提に付き合ってくれない?それとも、私のこと、嫌いなの?」
「いや、嫌いとかないんですけど.......。」
「なら、既成事実を作ってしまえば、君は、私に反抗できないよね。」
と言って、先輩は、僕を押し倒してきた。ベットで良かった。頭打つと痛いから。ってそういう事じゃないだろ。まずいよこの状況。
「大丈夫、私が、全部やるから。心配しなくていいよ。」
この人マジだ。やばい、このままじゃ.......。
『コンコンコン』
と軽快な音が、部屋に、響いた。
「先輩、とりあえず1度離れて下さい。」
「あと少だったのに。」
先輩を、勉強机の椅子に座らせて、
「どうぞ」
と返事をした。
「裕太、入るわよ。」
と言って、母さんが、入ってきた。
「あ、雪乃ちゃん。お父さんが、帰るから、読んできて、って言ったから、呼びに来たら、ふたり、もう仲良くなったのね。」
「はい、話をして、仲良くなりました。じゃあ、行きますね。またね、裕太くん。」
と言いながら、小さく手を振って、彼女は、僕の部屋から出た。
先輩が、帰ったあと、僕と母さんは、晩御飯を食べて、僕は僕は、部屋に戻った。部屋で、考え込んでいた。どうして僕を、先輩が、好きになったのか。その理由を。
その晩、夢を見た。
2年が始まった4月のことだった。その日は、ちょうど、母さんの誕生日で、何を買ってあげようか悩んでいた。春休みを利用し、バイト代を貯めたんだ。何かいいものをプレゼントしたいと思っていた。
授業が終わり、僕は、教室を出ると、バス停に向かう方ではない方に、歩いていった。そこで、うちの学校の制服(多分ひとつ上の学年)の生徒が、ガラの悪い3人組に、捕まっていた。どうしようか悩んでいた。だが、僕の体は、頭で考えていたことと逆に動いた。
「すみません、この子、僕の彼女なんで、手、出さないでください。」
僕は、彼女の手を掴んで、その場から離れた。
「チッ、彼氏持ちかよ。」「ハズレだな。」「別の子探そうや。」
そんな声が聞こえてきていた。
数十メートル行ったあたりで、彼女の手を離した。
「ありがとうございます。」
「よくあるのかい。」
「いえ、今回が初めてです。」
「じゃあ、今後は、気をつけた方がいいよ。じゃあ、僕は、これで。」
僕は、その場を離れようとした。
「待ってください。なにかお礼をしたいのですが、なんでも言ってください。」
と彼女は、言った。
「じゃあ、今から、母親へのプレゼントをかいにいくから、それに付き合ってよ。それで、チャラでいいじゃん。」
「わかりました。では、行きましょうか。あぁっ、まだ自己紹介してませんでしたね。私の名前は、.......。」
そこで、僕は、目を覚ました。どうして僕は、忘れていたのだろうか。その時買ったスマホのカバーは、いまだに、母さんは、使っている。
「なんで、そんな大切な事を、俺は忘れていたのだろう……。先輩、可愛かったなー、今も可愛いけど」
と、呟きながら、僕はまた、眠りについた。
休みだし、いいよな?
話 3
「はぁ~、昨日は緊張した。」
私は今、バスの中にいる。
なぜバスの中にいるのかと言うと、学校に向かうためである。
「昨日は私、少し大胆過ぎたかなぁ……」
はあ~‼恥ずかしい‼やっぱり今思い出すと、恥ずかしすぎて、自殺しそう……
「……でも、裕太君もまんざらではなさそうな表情だったけど……」
そう、ちゃんと至近距離じゃないと分からないけど、顔立ちは結構整ってるし、
「何より、優しい所が、いいと思う……」
わぁ~‼何言ってるんだ私‼こんなんじゃだめだね。
「よし、そろそろバス停に着くし、気合い入れておかないと‼」
私は今、この路線の人が少ないことに感謝している。まずもって私以外いないんだけどねっ‼
「よしっ‼今日も一日頑張るぞっ‼」
お~‼
「終点、百日草《ジニア》高校前」
どうやら着いたようだ。
「運転手さんっ‼」
「どうしたんだい雪乃ちゃん?」
「今日も運転、頑張ってくださいねっ‼」
「若い子にそんな事言われると、頑張るしかないねぇ~。よしっ‼今日も頑張ります‼」
「じゃあ、行ってきます。」
「いってらっしゃ~い」
私は運転手さんから見送られ、バスを降りた。
バスを降りると、そこは、昨日、私と裕太君のキスしたバス停でした。
まあ、そうですよね。
だっていつも降りる場所はそこなのですから。
どうしましょう。
「昨日の事がフラッシュバックし、ちょっとドキドキする……」
ダメ、ダメ‼そんな事でドキドキしてたらダメよ。
「私は常に裕太君の理想の先輩でいなくちゃいけないんだから。」
でも、それってちょっとキツイかも知れない……。
私は歩きだした。あまり長居すると、遅刻してしまうからである。
私は、校門の方へ歩いて行った。
「あ、ゆっきーじゃん、おはよっ‼」
「ヒャッ‼出会い頭に胸揉むのやめてって言ってるじゃん、リン‼」
「ダ~メ‼これは私の毎朝の日課で三年間続けてるのっ‼だから~、ゆっきーの胸は、私だけのもの~‼」
「ひぅっ‼」
この現在進行形で私にセクハラしているのは、山沢夏鈴《やまさわかりん》。
ちなみに、彼女は、自分ではBだと言っているが、Aカップである。
「何で今日は、何時もより強いのっ‼」
私はリンを振り払った。
「だって~、ゆっきーから、男の臭いがしたんだもんっ‼」
「はい?」
「その辺の女の子には分からないかもだけど、私にはわかるのよ。昨日、男子の部屋、しかも年下の2年生の部屋に行ったでしょう?」
「え……、行ってない‼行ったかもしれないけど、行ってないっ‼」
「今行った事の自白いただきました。」
「もうっ‼やっぱり、リンとは絶交っ‼」
「ごめん、ごめん。」
「早くしないと遅れますよ山沢さん。」
「もうすでに他人行儀⁉本当にごめんなさい‼そんなつもりなかったんだよ~、許してぇ~」
「フフッ、ごめんね、リン。ちょっと意地悪したくなってね。」
「も~っ‼」
私たちは、そのまま仲良く登校した。
「あいつが……でさ~、ねえ、ゆっきー聞いてる?」
「えっ、あ、ごめん。それで何だっけ?」
「ちょっと今日おかしいよ。何かあったの。さっきの時間もずっと心ここに有らずだったし。」
「そう、なの?」
どうやら、3時限目が終わりまで、私は、何も微動だにしてなかったらしい。
「あ、そろそろ時間だ。何か相談したくなったら、私を頼ってね。親友なんだから。」
「……うん。ありがとね、リン。」
「そんなのいいって。あ、ちゃんと授業は受けてね。評定落ち着か茂だから。」
「うん、わかったじゃあ、またあとでね。」
それからの授業もなぜか、集中することができなかった。
「ただいま~、て誰もいないんだけどね。」
私は、誰もいない廊下を抜け、リビングに向かった。
「あ、お父さん。居たなら電気くらい……」
「なあ、雪乃。今回の再婚どう思う?」
「え……」
「素直な意見でいい。お前が嫌なら……」
「嫌じゃないよ。お父さんが決めた人なんだもん。絶対いい人だよ。」
この言葉は嘘。私は、あの人の事をよく知らない。正直言うと、どうでもいい。
「そうか。なら質問を変えよう。裕太君はどう思う?」
「え……、そ、それは、どどど、どういう意味なの?」
「やっぱりそうか。お前、完璧主義者のくせに、わかりやすもんな。そこは、お前の母さんに似ているな。」
「でも、私の頑固なところは、お父さんに似たんだよ。」
「そうだな。で、どうなんだ。裕太君。」
「うん……正直言うと、彼の事で、頭の中が一杯なの。」
「そうか。なら、これは再婚してしまうしかない。」
「どうして⁉」
「まだよくわからん義息子に、俺の大事な娘はやらん。」
「なら、私が裕太君を貰ってくるっ‼」
「それもダメだ。私が許さない。」
「やっぱりお父さんは、親バカね。」
「親バカで何が悪い‼」
お父さんは、胸を張って言った。
「フフッ」
「ハハッ」
私たちはいつの間にか笑い合っていた。
やはり親子なのだと言うことを実感した。
「いいよ、再婚して。私たちは別の方法で結婚するから。」
「そうしてくれ。」
「うんっ‼」
私は決意した。
お父さん達の再婚は、最高のものにしようという事を。
翌日。その日も雨だった。傘は持ってきていたため、バス停までは、濡れることなく、たどり着いた。
「今日も、早いですね。そんなにホームルーム短いんですか。」
「いや、3年生は、意外と暇だから、早く終わるの。」
と少し微笑みながら彼女は、答えた。
「ところで、私とやる気になった?それとも結婚?いや、先に、妊娠させてくれるの?」
「あんたほんとに何言っちゃてってるんですか。やる気にはなりませんし、妊娠させる気もありません。でも、先輩が、いいなら、結婚を前提に、付き合いたいと思っています。かなり本気でです。」
「え、本当にいいの?本当に私なんかでいいの?後悔しない?まさか、私で散々遊んだあげくに捨てるとか言わないよね。そういうのも、気持ちよさ……。」
この人まさか、超ドMなんじゃないのか?俺そんな人と付き合っていいのか?
「先輩ってもしかしてMですか?」
「な、何故分かってしまったの?」
「質問を質問で返さないでください。」
「わかったわ。私は、超が付くほどドMよ。で、何故分かったの?」
「先輩の発言を聞いていたら分かりますよ。今度ドM発言したら、知りませんから。あと、この間の返事、ちゃんと言いに来ました。」
「本当に!?ちょっと待って、深呼吸させて。」
と彼女は、深く息を吸って、ゆっくりと吐き出した。
「じゃあ、言って、いいよ。」
「はい。それでは、……」
僕は、そうつぶやくと、少し頬を赤く染めている彼女の眼をまっすぐ見て、
「僕はこの世界でずっと一緒にいたいと思う人は、雨沢雪乃さん、あなただけです」
僕は、一言言った。
「そして、楽しい時は一緒に楽しみ、悲しい時はそばで支えて、泣いたり、笑ったり、時には喧嘩もするかもだけど、僕はずっと、あなたと一緒に居たいです。だから、僕と結婚を前提に付き合って貰えないでしょうか?」
「……いよ」
「えっ?」
「ずるい、そんな事言われたら、もう、断ったりできないじゃん……」
と彼女は言いながら。僕の頬に手を当ててきた。
僕は、そのまま、顔を上げた。
彼女の頬を、一筋の雫が流れ落ちた。
「返事、するね?
私も、世界で一緒にいたい人は、1人だけ、その人は、少し意地悪で、でも、とても優しい人。私はそんなあなたが、大好きです。だから、今、とても幸せです。不束者ですが、よろしくお願いします」
といった。そして僕は咄嗟に彼女を抱きしめた。
「ありがとう、ございます。先輩に気持ちが届いて、とても嬉しくて、嬉しくて、震えが止まらないです。本当に一生大事にします。こちらこそよろしくお願いします」
と、僕は、全力で抱きしめながら答えた。
「やっぱり抱きしめるのは、ズルだよ……」
「先輩の方こそ、涙は、卑怯です。」
僕らは、抱きしめあいながら、
「よろしくね、私の大好きな騎士《ナイト》さん。」
「こちらこそ。かなりMっ気の強いお姫様。」
僕らは、笑いながら、お互いに、言い合った。
「ところで、私そんなにMなのかな?」
と聞いてきた。
「相当ですよ。攻められるのが好みなんですか、先輩。やっぱり結婚やめようかな。」
「ひどい、結婚は、やめないで。攻められるのは、かなり好きかもしれないけど。あと、先輩っていうのもダメ。名字も。」
「じゃあ、何と呼べばいいんですか。」
というと、
「名前で呼んでよ、私の。」
と、さっきよりも頬を赤くして彼女は、言った。
「わかりました、雪乃。これからよろしく。」
「不束者ですが、こちらこそ、よろしくお願いします。」
僕らの物語は、やっと始まりを迎えることができた。