2

私が言い終わるか終わらないかのうちに、義姉が不満の声を張り上げた。

「この家に嫁いで間もないっていうのに、義妹に新婚旅行の手配を頼んだらこれ?どの口が言うのよ」

兄の王長宇も、ここぞとばかりに一家の主然とした態度で威張り散らす。

「王夏夏、お前がそれでも俺の妹だと言うなら、今回の新婚旅行の費用は全額お前が持て。さもないと、この家から追い出すからな」

言い終わると、兄は義姉と示し合わせたように、私を意のままにできるとでも言いたげな目つきで睨みつけた。

その時、私は思い出した。今住んでいるこの部屋は、すでに兄のものだったのだと。

もともと、この家は私のものだった。しかし、兄が結婚を間近に控えても新居を購入できずにいたのだ。

結婚式を滞りなく進めるため、母は涙ながらに、まずはこの家の名義を兄に移してほしいと私に懇願した。

義姉が家の権利書を確認したら、すぐに返してもらうという約束で。

私は気乗りしなかったが、母の涙と「家族だから」という言葉の圧力に抗えず、最後には同意してしまった。

しかし、その後私が家の話を切り出すと、二人は口を揃えてこう言った。「家族じゃないか。家の一つや二つ、そんなに大事なことかい?」

「こんなこと、お義姉さんに知られたらどうするつもりだ? お前はそんなに俺を困らせたいのか?」

「本当に俺の可愛い妹だよ。面白いじゃないか、家族の絆がたかが家一軒に負けるなんてな」

彼らが振りかざす「家族の情」という名の足枷にはめられ、私は二度と家のことを口にできなくなった。

彼らが与える愛は、私を温めるどころか、断ち切ることもできない呪縛のようだった。

それはまるで、他に選択肢がないからと袖を通す、雨の日のじっとりと湿ったシャツのようだった。身にまとえば不快で、肌にまとわりついてくる。

死んで初めて知ったのだ。母が時折見せる優しさは、ただ私を「家族の情」で縛りつけ、血の繋がりを言い訳に兄を助けさせるための罠だったのだと。

そこまで考え至り、ふと決意が固まった。なぜ私が逃げなければならない?この人生では、彼らが破滅していく様を、この目で見届けてやろう。

現実に意識を引き戻すと、私はすっと態度を軟化させた。「わかったわ。三亜への避暑旅行、私が手配する。お兄ちゃんたちの新婚旅行のお祝いだと思って」

それを聞くや否や、義姉はぱっと顔を輝かせ、意気揚々と部屋へ避暑の準備に戻っていった。

兄は何かを思い出したように、またあの偽りの笑みを浮かべて私の肩を叩いた。

「お前も一緒に行こう。こんなに暑いんだ、一人で家にいて熱中症にでもなったらどうする。俺も母さんも心配なんだよ。家族みんなで、揃って避暑に行かなくちゃな」

ふっ、またその見え透いた気遣いか。

その日の夜、私は三亜で民宿を経営している友人に連絡を入れた。

彼女には、ごく普通のファミリールームを一部屋おさえてもらい、その上でネットに表示される宿泊料金を倍にするよう頼んでおいた。

翌朝早く、一行は物々しい様子で空港へ向かった。三亜に降り立った途端、焼けつくような熱波が真正面から吹き付け、頬がひりひりと痛んだ。

この人生の暑さは、前の時よりも異常だった。それでも私は、一言も口を開かなかった。

対照的に、母が真っ先に口を開いた。「なんだか、こっちの方が家より暑くないかい。数日いたら帰ることにしましょうよ」

その言葉に、義姉は前の人生と寸分違わぬ言葉で反論した。

「数日で帰るですって?三亜はずっと昔から避暑地なのよ。知らないなら、でたらめを言わないでちょうだい。一ヶ月は滞在しないと、私は絶対に帰らないから」

母が年長者であることに配慮したのか、義姉の言葉遣いは幾分か和らいでいたが、その声色には隠しきれない軽蔑と焦りが滲んでいた。

ここは公共の場だ。周りには様々な旅行客がその言葉を聞いている。母は隣で黙りこくってしまった。

視界の端で、母の目に涙が浮かんでいるのが見えた。

もちろん、兄に助けを求めることなどできるはずもなく、その視線は私に向けられた。

だが、残念。もう私が矢面に立つことはない。聞こえないふりをした。

やがてタクシーで民宿に着くと、義姉は部屋を一目見るなり、チェックアウトすると大声で騒ぎ始めた。

3

昨夜のうちに、友人の許歓に頼んで、手頃な価格帯のスイートルームを用意させておいた。

部屋自体は決して悪くない。だが、彼らが夢見ていたであろう豪華なプレジデンシャルスイートとは天と地ほどの差があった。

前の人生では、許歓は私の顔を立てて最高級のスイートを半額で提供してくれた。

それでも義姉は満足せず、不満をまくし立てたものだ。

「一生に一度のハネムーンなのに、あなたの妹ときたらなんてケチなのかしら!自分の義姉にこんな安部屋をあてがうなんて、どういう神経してるの?」

「こんなに安い部屋がいいわけないじゃない。あの子、お金を使いたくないだけでしょ」

いくら説明しても無駄だった。私が意地悪で安い部屋を選んだと、義姉は決めつけて譲らなかった。

結局、母に泣きつかれ、私はさらに数ヶ月分の給料をつぎ込んで部屋をアップグレードする羽目になった。

だが、今回は違う。友人と示し合わせて、交換できる部屋などないことになっている。それどころか、料金も大幅に吊り上げておいた。

どうせもうすぐ死ぬのだ。立派な部屋など必要ない。腐りかけの肉塊など、どこに転がしておいても同じことだ。

案の定、義姉が理不尽な要求を突きつけてきたが、許歓は動じることなく冷静に対応した。

「あいにく、現在は満室でして。これも夏夏のお顔を立てて、なんとかご用意した部屋なんです。料金も二割引きにさせていただいております」

兄は納得いかない顔でスマートフォンを取り出し、ネットで料金を検索する。すると、表示された一泊十六万円という数字に、みるみる顔色を失っていった。

兄の月給は、わずか十万円なのだ。

これより安い民宿となると、十数キロも離れたA市まで行かなければならない。

アップグレードしようにも空き部屋はなく、彼らは歯を食いしばってその部屋に泊まるしかなかった。

荷物を置いて間もなく、義姉が食事に行こうと騒ぎ出した。

「三亜に来たからには、海鮮を食べなきゃ。獲れたてが一番よ」

その言葉に、兄は舌なめずりをし、目を貪欲に光らせた。

「悪いけど、私はやめておくわ。海鮮アレルギーだから。二人で行ってきて」

私がそう言うと、義姉は侮蔑の視線を向けてきた。「海鮮も食べられないなんて、やっぱり貧乏性なのね。じゃあ、来なくて結構よ」

私は心の中で冷笑した。食べる時はさぞ楽しいだろうが、会計の時に地獄を見るがいい。

三亜の海鮮市場は、悪質な店が紛れ込んでいることで有名だ。「自分の車で行ったはずが、ぼったくられてタクシーで帰る羽目になる」とまで言われている。

前の人生で、彼らはただ「食事に行く」としか言わなかった。

店に着いて、私は唖然とした。兄と義姉が、テーブルに乗り切らないほどの海鮮料理を注文していたのだ。アレルギー持ちの私が頼んだのは、店主に無理を言って作ってもらったチャーハン一杯だけだったというのに。

そして、その店は悪質なぼったくり店だった。会計は、合計で十八万円にも上った。

店側と一触即発の雰囲気になり、入り口ではナイフを手にしたチンピラが見張っている。

身の危険を感じた私は、仕方なくその代金を支払った。

だが今回は、私という金づるはいない。あのチンピラが振りかざす刃が、果たして兄の腹を貫くのかどうか。じっくり見物させてもらうとしよう。

二人が出かけるのを見届けると、私はすぐに友人の元へ向かった。

許歓は学生時代からの親友だ。高校から大学まで、同じクラスで寮の部屋も一緒だった。長年、私たちは深い友情で結ばれている。

私は彼女にすべてを打ち明けた。

前の人生で起きたこと、自分がどんなふうに殺されたのか。そ

して、この三亜の気温が、やがて摂氏七十度という異常な領域に達することも。

許歓は、異常気象の話に衝撃を受けるだろうと私は思っていた。

しかし彼女は、ただ私を強く抱きしめて泣き、母と兄を獣のように罵った。

「クソッ……あいつら、二人とも人でなしよ!」

「死ぬ時、すごく……苦しかったでしょう?」

その言葉に、堪えていたものが堰を切ったように溢れ出した。生まれ変わって以来、

私の心は鉄壁になったはずだった。だが、こうして優しさに触れると、いとも簡単に武装が解かれてしまう。

血縁は、情の証にはならない。共に過ごした時間と、寄り添う心こそが、本当の絆を育むのだ。

私たちは部屋で今後のことを語り合い、迫り来る熱波への対策を練った。

すべてを決め終えた、ちょうどその時だった。私のスマートフォンが鳴った。母からの着信だ。

「佳佳、早く来てちょうだい! あなたのお兄さんが、刃物で斬られたの……!」

「わかった。すぐ行く」

今すぐ全編を読む
作者の『Moboreader』を応援して、素晴らしい物語の続きを楽しみましょう!
全話ロック解除

この夏、私は家族の命綱にはならない

第2話
エピソード
カスタマイズ
次の章