Logo
白いスープと雲の街
白いスープと雲の街

白いスープと雲の街

59 エピソード
完結
夏の畑でバラバラ殺人事件を目撃した少年が、子供たちの平穏を守るため独り犯人を追うミステリー『白いスープと雲の街』。このadventure storyは、やがて街の深淵に潜む恐ろしい闇へと繋がっていく。少年を待ち受けるのは過酷な運命か、それとも真実か。ホラーやfantasyの要素が融合した、手に汗握る本格派のmystery storyを今すぐ体験。
『白いスープと雲の街』第1話

あれは小学校5年生の夏の時だった。

 暑い日差しの中。

 裏の畑で友達とできの悪いスイカたちとスイカ割りをしていた。

 海を知っている。

 でも、僕たちは行った時はなかった。

 大きな入道雲。潮の匂い。地平線まで続く大海原。想像はするけれど、ここは山に囲まれた小さい町。御三増町。

「右。左。もうちょっと左。あ、そこだ」

 目隠しをして、棒切れを持った僕は友達の篠原君の言葉を頼りに、数十歩先のスイカを見事に一振りで割った。

 スイカはパカリと割れて、中の真っ赤な実と種が辺りに散乱した。

 スイカの匂いが強くなって、同時に緑の匂いと日差しの蒸し暑さが漂った。

「篠原君はいいね。篠原君の声を聞いていると、スイカのところへ簡単に行けるよ」

 篠原君はタイガースの帽子を目深にかぶって、「当たり前だよ」と言った。

「篠原君。こっちもお願い」

 藤堂君も目隠しをして、棒切れを構え。蒸し暑いスイカの匂いで嗅覚が駄目になる場所で、右へ三回クルクルと回る。

「もっと、右」

「こっち?」

「そっちは左。その反対」

 いつもの学校帰りの遊びだったけれど、この日は空の傾く陽を気にしないほど夢中で遊んでいた。

「今度は藤堂君と篠原君の番。僕はここからスイカの場所を教えるよ」

 遠くのカラスの鳴き声を聞いたようだけど、僕は今が何時だろうとは、その日は気にもとめなかった。

 藤堂君と篠原君は畑に散乱するスイカの中央で目隠しをして、クルクルと回った。僕は友達にスイカの場所を教えようとしていた。

 いつの間にか僕の鼻は、スイカの蒸し暑い緑の匂いとは違う異様な腐った臭いを吸い込んでいた。普通なら気付かないくらいの微かな臭いだ。

 畑の奥で野菜がにょっきりと顔をだして、杉林の日蔭で暗闇が覆っているところだ。

 蒸し暑い大根の葉の匂いに混じって、血生臭い腐臭が僅かに混じっている。僕は友達を残して、散乱しているスイカを足でどかして畑の奥へと歩いて行った。臭いがしていそうな畑の土を棒切れで掘り起こしてみた。

 それは、小さい手だった。

 初めは小さい白いカカシの手だと思ったけれど、臭いがそうじゃないと言っていた。人参や茄子が植えてあるところだ。杉林に近いところには大根が顔を出していた。

 僕はしゃがんで更に土を掘り起こすと、今度は顔がでてきた。こちらを見ているようだ。あるいは空にある天国を見ているような綺麗な目をしていた。僕と同じくらいの年の男の子と女の子たちの顔だった。

続きを読む
話数を選択
CH. 1CH. 2CH. 3
CH. 4
CH. 5
CH. 6
CH. 7
全て
小说の全編を読むならこちら
moboreader
今なら無料で読める!

こちらもおすすめ

ボーさん、あなたの腕の中の女の子は大物です
ボーさん、あなたの腕の中の女の子は大物です
異国の地で絶望にいた少女は、四千億円を投じた冷酷な男、薄晏に救い出される。『ボーさん、あなたの腕の中の女の子は大物です』は、素直なドールとして囲われた彼女が、神医や暗殺者、大富豪の後継者という正体を現していく現代のromance novel。マフィアが蠢く世界で、彼女を狙う者たちを圧倒的な力でねじ伏せるbillionaire romance booksの決定版。運命を切り開く彼女の復讐と凱旋の物語、人気web novelを今すぐチェック。
モテが止まらない、狼隊長
モテが止まらない、狼隊長
北方の狼から五輪落選の補欠選手へと転生した主人公が、人離れした身体能力でラグビー界を席巻する『モテが止まらない、狼隊長』。圧倒的な速さで代表キャプテンへと上り詰め、リアリティ番組出演を機に国民的スターへと変貌を遂げます。人気女優への一途な愛を貫きながら、スポーツ界の頂点を目指す姿を描いた注目のwerewolf romance novelsです。一匹狼の魂を持つ男が現代社会で真の強さと愛を証明する、スリル溢れるadventure story。今すぐこのweb novelで、野生の直感と情熱が交錯する物語を体験してください。
獄中龍王の逆襲~最強の力を手にした俺、婚約者と黒幕に鉄槌を下す~
獄中龍王の逆襲~最強の力を手にした俺、婚約者と黒幕に鉄槌を下す~
婚約者を救うため罠に嵌り、4年間の服役を強いられた男の復讐劇を描く『獄中龍王の逆襲~最強の力を手にした俺、婚約者と黒幕に鉄槌を下す~』。獄中で極めた武術と医術を武器に、裏切った婚約者と黒幕を追い詰める。怒涛の展開が魅力のmodernなaction小説です。復讐の最中、かつて自分の娘を産んだ女社長の存在を知り、運命は加速する。手に汗握るadventure要素と複雑な人間模様が絡み合う、読み応え抜群のweb novel。最強の力を手にした主人公が下す、鉄槌の結末を見届けろ。
追放されたら、私が億万長者の万能チートだった件!
追放されたら、私が億万長者の万能チートだった件!
偽の令嬢として追放された清辞。だが、彼女の正体はハッカー界の伝説にして億万長者の万能チートだった!billionaire romance novelsの世界観を覆す圧倒的スペックで、溺愛する4人の兄と共に自分を捨てた者たちを逆転。現代を舞台にしたこのmodern novelでは、元婚約者や身勝手な家族を実力で圧倒する痛快なadventure storyが展開されます。真の才能を隠し持つ彼女が、愛と復讐の果てに掴む真実の結末とは。
死罪判決は嫌なので逃亡しながらダンジョン攻略します
死罪判決は嫌なので逃亡しながらダンジョン攻略します
落雷で異世界転移した加藤佑真を待っていたのは、冤罪による死罪判決だった。絶体絶命のギロチン台から少女アリスの手で救われた彼は、『死罪判決は嫌なので逃亡しながらダンジョン攻略します』と決意し隣国への脱出を図る。チート能力も特別なステータスもない過酷な状況下、逃亡者の刻印を背負いながら冒険者として再起を目指す物語。このfantasyの世界で、彼は敵国の追撃を振り切り真の自由を掴めるのか。スリリングな展開が魅力のadventure作品。web novelで人気のlitrpg要素も交え、生存を懸けた過酷な旅が今始まる。
神様曰く、運命なので
神様曰く、運命なので
婚約破棄と投獄の末、死を迎えたはずの悪役令嬢レイチェル。目覚めるとそこは一年前の世界だった。「この世界はゲーム」だと語るヒロイン・ステラの真意を探るため、彼女は再び過酷な運命に立ち向かう。自らの役割を書き換え、大切な存在を守り抜くための女子のバトルが今始まる。『神様曰く、運命なので』は、宿命に抗う少女たちの成長を描くファンタジー要素満載のadventure storyです。話題のweb novelで、先の読れない展開と熱いアクション、そして切ないromance fiction booksの魅力をお楽しみください。

新作ウェブ小説

MiniShortで大人気

同棲から始まる恋
同棲から始まる恋
花嫁姿で式場を飛び出したコリンは、偶然同じアパートのルームメイトとなったアンドレと出会う。反発しながらも惹かれ合う二人だが、新しい職場でアンドレが上司と判明。関係を隠し通す中、元婚約者の登場や職場トラブル、そしてアンドレへの縁談話まで次々と試練が。すれ違いを乗り越え、二人の恋は実るのか—。
退職した母の恋に忍び寄る詐欺
退職した母の恋に忍び寄る詐欺
退職後の女性が魅力的な男性に騙され、財産を狙われる。娘の鋭い勘が真実を暴き、二人で詐欺師を追い詰める!
星野は、冷えた夜に夢を見るか
星野は、冷えた夜に夢を見るか
田中星野は、愛情深い両親に大切に育てられた可愛らしい女の子でした。 しかし、妹である田中萌世が生まれた瞬間から、彼女の人生は一変します 両親の愛情はすべて妹へと注がれ、星野には向けられなくなりました。良いものは何でも妹が優先され、星野は常に後回しにされました。妹が病気になった時でさえ、病気の責任は星野に押し付けられました。 ついには、罰として冷蔵庫に閉じ込められた星野。必死の助けを求める声も、両親には届きませんでした 隣人の通報により星野は救出されますが、両親は自分たちの行為を全く悪いと思っていません。 非情な親に直面した幼い星野は、どのような「選択」をするのか? 親子の愛と教育の現実を描く物語が、今、始まります
クイーン・マザー(吹き替え)
クイーン・マザー(吹き替え)
両親の結婚記念パーティーで、成功した女性CEOのアテナは「品のない成り上がり者」だと見下され、贈ったダイヤモンドのプレゼントは偽物だと罵られ、挙句の果てには食卓から追い出されてしまう。
家のこと
家のこと
1981年、美咲と健太は電撃結婚し、それぞれの子供を連れて新しい家庭を築きました。美咲は気の強い性格で、近所から「鬼嫁」とからかわれていましたが、健太はその生活が生き生きとしていて魅力的だと感じていました。共に過ごす中で、美咲は健太の娘・爽子に温かさを与え、健太も美咲の息子の初に信頼を得ていきました。四人はお互いに支え合い、日々を共にしながら、次第に幸せな生活を築いていきました。
仮面を捨てた女
仮面を捨てた女
生まれ変わったシュセイミンは、仮面を捨て、一族の中で勢力を拡大し始める。彼女が予想もしなかったのは、見た目には不自由に見える夫ルエンシが実は彼女の秘密の守護者であることだった。二人の権力者による利害関係に基づく結婚は最初、ゲームのように始まったが、やがて偽りの愛情が真実の情熱へと変わり、心を燃やし尽くすことになる。