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浅田梓紗 POV:

私は, 震える手でペンを握った.

この男に, 私の全てを奪われる.

屈辱だった.

しかし, 生きるためには, 他に選択肢はなかった.

私の目の前で, 海翔は満足そうに笑った.

「よくやった」

彼は, 私の頭を撫でた.

その偽りの優しさに, 私は吐き気がした.

私は, 床に散らばったオルゴールの破片を拾い集めた.

母が大切にしていたもの.

私にとって, かけがえのないもの.

母は, 私が生まれてすぐに難病を患った.

その病気は, 遺伝性のものだった.

私が, その病気を引き継いでしまったのだ.

父は, 母の病気に苦しんだ.

彼もまた, 母の死に打ちひしがれた.

私の病気を治すために, 彼は必死に働いた.

しかし, 過労がたたり, 父もまた, この世を去ってしまった.

父は, 私を海翔に託した.

彼は, 海翔が私を支え, 守ってくれると信じていたのだ.

「こんなガラクタ, まだ拾っているのか? 」

海翔の声が, 私の耳に届いた.

彼は, 私の手の中のオルゴールを嘲笑った.

「これには, 特別な意味があるのよ」

私は言った.

「母が, 私に遺してくれたものだから」

海翔は, 一瞬, 驚いたような顔をした.

しかし, すぐに冷笑に戻った.

「まさか, まだそんなものに執着しているのか」

彼は, 私の手からオルゴールを奪い取ろうとした.

私は, 彼の手を振り払った.

「もう触らないで」

私の声は, 冷たかった.

海翔は, 私の態度に苛立ったようだった.

彼は, 私を寝室へと引きずり込んだ.

「何をしても, 無駄だ」

彼は言った.

「君は, 僕のものだ」

私は, 彼の言葉に鳥肌が立った.

彼の触れる手が, 私を汚しているように感じた.

「やめて! 」

私は叫んだ.

しかし, 彼は私の言葉に耳を傾けなかった.

「明日, この譲渡契約書にサインしてもらう」

彼は言った.

「そうすれば, 君の病気も治してやる」

彼は, 壊されたオルゴールを修復する代わりに, 私にサインを強要した.

私は, もう抵抗する気力もなかった.

ただ, 彼の言う通りにペンを握った.

「愚かな男ね」

私は, 心の中で呟いた.

彼は, 私が既に全ての資産を海外に移管していることに気づいていない.

私がサインした譲渡契約書は, ただの紙切れに過ぎない.

彼が欲しいのは, 私の財産.

しかし, 私は, 彼に何も与えない.

彼は, 私を愛していると嘯いた.

しかし, その言葉は, 全て嘘だった.

「何を考えているんだ? 」

海翔の声が, 私の耳に届いた.

彼の目には, 欲望の色がはっきりと見て取れた.

「君は, 僕と結婚するんだ」

彼は言った.

「そうすれば, 全て解決する」

私は, 彼の言葉に吐き気がした.

「あなたが欲しいのは, 私の財産だけでしょう? 」

私は尋ねた.

海翔の顔が, 怒りで歪んだ.

「僕が君を愛しているのは, 当たり前だろう! 」

彼は叫んだ.

しかし, 彼の言葉には, 何の感情もこもっていなかった.

彼は, 私を抱きしめた.

その温もりは, 私にとって, ただの不快感でしかなかった.

「君が僕を怒らせたからだ」

彼は言った.

「君が僕の言うことを聞かないからだ」

私は, もう何も感じなかった.

彼の言葉は, 私の心を通り過ぎていった.

過去の記憶が, 私の脳裏を駆け巡った.

彼が, 私に優しく接していた頃の記憶.

あの頃の彼は, どこへ行ってしまったのだろう.

いや, 最初から, あの頃の彼など存在しなかったのだ.

彼は, 最初から, 私の財産を狙っていた.

私の病気を, 利用していたのだ.

「梓紗, 僕の言うことを聞くんだ」

海翔の声が, 私の耳に届いた.

「さもないと, どうなるか, 分かっているだろう? 」

彼の言葉は, 私を奈落の底へと突き落とした.

私は, 彼の支配から逃れる術はないのだろうか.

私は, 必死に抵抗した.

「やめて! 私を解放して! 」

私は叫んだ.

しかし, 彼の力は, 私よりも強かった.

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財産狙いの裏切り婚約者

第3話
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